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オワリカラ・タカハシヒョウリの「サイケデリックな偏愛文化探訪記!」

「ポケモンカード」とシゲルくんの話

 初めて買ったケースから出たキラカードは「ミュウツー」だ! 最強のポケモンとして、子どもたちのスーパーヒーローというか、畏敬の念を集める魔王的存在になっていたミュウツーだ。

 手が震えた。

 実はこのミュウツー、いわゆる「最強のポケモン」なのに、カードゲームでは何が起きたんだ? っていうくらいクソ弱い。しかし、初めて手にした僕はそんなことを知る由もなく、「最強ポケモン」のカードを引いた自分に運命的な何かを感じて悦に浸っていたのだった。

 家に帰り、嫌がる兄をつかまえ、父をつかまえ、カードを半分ずつに分けて(本当はこんな遊び方はない)無理やりゲームの相手をさせた。

 やっぱりイメージ通り、ポケモンカードゲームは超楽しい!

 意気揚々と登校した翌日、タカハシ少年を新たな衝撃が襲った。

「誰もやってねえ……」

 そうなのだ。ポケモンカードを心待ちにして、町中探し回っているようなヤツは自分以外に誰もいなかったのだ。

 やばい、このままだと家族内だけでプレイする「お正月の花札」みたいな、ものすごく小規模のゲームになってしまう。そんなのは、僕のイメージしたワールドワイド(学校内)なポケモンカードゲームじゃない!

 そこで僕は、ポケモンカード啓蒙活動を開始した。
 
「ポケモンカード知ってる?」「こんなに面白いよ」「まずはスターターを1つ買うだけ」と、押し売りかネズミ講ばりの詐欺師口調でポケモンカードを啓蒙して回った。

 すると、そこで1人のクラスメイトが、ポケモンカードに興味を持ってくれた。彼(仮にシゲル君としよう)とは、もともとはそこまで親しくなかったが、彼がポケモンカードを買って2人で対戦や交換をしてハマり込んでいくうちに、どんどん親しくなった。

 ポケモンカードも少しずつはやりだし、どんどん売り上げを伸ばして、品薄になるほどの人気を集めた。

 ポケモンカードゲームが最初はそんなにはやっていなかった証しに、初代のカード(右下にレアリティマークがない)は意外に数が少なく、今ではプレミア価格がついていたりする。その後もカードは第2弾、第3弾と発売され、全151種類がカードとして出そろい、ポケモンのゲームやアニメと一緒に、日本中で大ブームを巻き起こしていた。

 人気を呼んだのは、社会現象になるほどの本家ポケモンやアニメの影響もあると思うが、何よりも丁寧にこだわって作られたカードゲームが、戦略に富んだ真に「面白いカードゲーム」だと、少しずつ子どもたちに理解されていったからだろう。

 その頃には、僕とシゲル君の2人は対戦を重ねすぎてかなり強くなっていたので、後から参入してくる友人たちとはちょっと次元が違うバトルを繰り広げていた。少年漫画的にいうなら、まさに「友」と書いてライバルだ。

 毎日、放課後は友人たちとカードで対戦する毎日で、新シリーズが出ては買い、親にねだってイベントに出かけ、あっという間に1年近くが過ぎた。

 そして97年冬、第4弾が発売された頃だったと思う。僕は相変わらず、ポケモンカードに夢中だったが、ある時からシゲル君とあまり遊ばなくなった。別にケンカしたとかいうわけではなかったのだが、なんだかシゲル君の付き合いが悪くなったようだった。シゲルくんは人が変わって社交性を失ったように見えて、僕は子ども心に、何か腑に落ちないものを感じていた。対戦する機会も激減した。

 ライバルを失ったこともあってか、僕自身も少しずつポケモンカードの熱が別のところに移っていって、次第にポケモンカードを追いかけなくなっていった。

 ポケモンカードに夢中になったのは、ちょうど1年間くらいだっただろうか? 

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