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貯金ゼロ目前、食費は1日100円……苦境極まった片渕須直監督『この世界の片隅に』は、どう完成したか

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■先行上映や試写会の評判は「称賛しかない」

──取材前にTwitterで『この世界の片隅に』を検索してみました。すでに先行上映や試写会で鑑賞した人の声をみると、ほぼ称賛のコメントしかありません。批判がひとつもないのは、逆に恐ろしいのではありませんか?

片渕 わかんないんですよね。批判よりは称賛というのが、存在してはいつつも、それが大勢を占めているのかが気になるところです。称賛と批判があるのではなくて、称賛と無関心がある。無関心のほうが怖いです。無関心ほど、始末に負えない批判はないと思っている。自分には関係ない映画だよといわれてしまう。それは、今でもTwitterで見ますね。「戦争中の映画なんでしょ」という風に思われてしまっていることも否めません。

──かなり冷静に見ていらっしゃいますね。

片渕 ええ、最近でいうと『この世界の片隅に』に言及されている方は、のんちゃんのファンが多いなと思っています。のんちゃんファンの中には『マイマイ新子と千年の魔法』にまで遡って見てくれる方まで出現しています。のんちゃんを使って監督してくれている人は、どんな作品をつくっているのかと気になって『マイマイ新子と千年の魔法』を観て、こんなのがあったのかと、初めて知る。そして「世界が広がった」といった感想を寄せてくださる。

大事なのは、そういうことなんだと思っています。何かの関連ができて、自分に関わりがあるものなのだなと思った瞬間から、いろんなものが拓ける……。「自分に関わりがない」という意識を覆すのは、一番難しいハードルではないでしょうか。

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■当初の資金は「持ち出し」で、貯金額が4万5,000円に

──2010年から完成まで約6年。その間には、この企画は頓挫するのではないかと思うときもあったのではないですか?

片渕 ぶっちゃけいうと、当初の資金は自分の持ち出し……企画が成立するまでの立て替えですね。でも、限界があるわけですよ。貯金をゼロにするわけにはいかない。何しろ、子どもの学費もありましたし。

このあたりが限度かなと思ったのは、12年の4月頃。この頃には「限界かな、これ以上収入にならないと大変だ」と思っていました。でも、同時に「なんか上手くいきそう」という動きもちらつき始めていました。だから「むしろ、ここまでやったのを投げ捨てないほうがいいんじゃないかな」と考えて続けることにしたんです。

──具体的に、上手くいく保証は、まだなかったのではありませんか?

片渕 それは丸山さんが、いろんなところでプロデューサーとして仕掛けているわけですよ。そのときに話を聞いて下さっていた人たちは、みんな製作委員会に入っていただいています。

それまで何が上手くいかなかったというと、この映画がきちんと誰かのところまで届くものなのか、きちんと示せなかったからことです。その決め手となったのがクラウドファンディングだったというわけです。

──そこまで貯金を持ち出していると、家族の説得も大変だったのではありませんか?

片渕 いや、うちの奥さんも監督補だから。ただ最後は、貯金が4万5,000円になりました。そうなったところで「さすがに……」と丸山さんが少しお金を準備してくれました。あと、子どもの学費の支払いなど、節目ごとに少しずつ出してもらっていました。

最終的に企画が成立するまでの立て替えだと考えてはいましたけれど、貯金の残高が4万5,000円になると、さすがにおののきますね。貯金がその額になったころから、家族で1日、1食100円にしましょうということになりました。一人ではなく一家4人で100円です。100円でもいけるんですよ。

そうした生活をしていて「ああ、今やっているのが、すずさんだな」と思っていました。大根を食べたら、大根の皮は干して……とかやっていましたから。雑草を抜いてくるまではやりませんでしたけど。家族で「なんとかなるもんだね」と話をしていました。

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