【劇場アニメレビュー】TVアニメを凌駕する迫力アクション、艦娘たちも可愛い! 若干の喰い足りなさが惜しい『艦これ』
そう、本作は角川映画40周年記念アニメーション映画なのだが、それこそ76年の角川映画第1作『犬神家の一族』からリアルタイムで角川台風の直撃を喰らい続け、また『幻魔大戦』(83)や『少年ケニヤ』(84)『カムイの剣』(85)『時空の旅人』(86)など、とてつもないまさかまさかの企画を見事に具現化し続けてきた角川アニメの猛威を肌で知る身としては、やはりどこか寂しい。
それは深夜アニメの劇場版だからとか、美少女アニメだからといった、とかくアニメを見下したがるマスコミのお偉方の目線ではなく、いや、むしろゲーム原作の美少女萌え深夜アニメの劇場版を堂々と『君の名は。』や『聲の形』『この世界の片隅に』などにぶつけて勝利してやる! といった気概があってこその角川映画であり、本作もそういった心意気によって幾重にも風格を備えた大作たり得ることも可能だったと思うに、やはりどこか悔しいのだ。
(これが往年の角川春樹体制だったら、「もはやゲームでもテレビでも映画でもない!」とか「今、世界の運命は美しき艦娘たちに委ねられた!」といった、ハッタリをかましたキャッチコピーでガンガン攻めの宣伝展開していたことだろう。それが今の時代に効果的かどうかはさておいて)
実際、11月26~27日の国内映画ランキング(全国週末興行成績・興行通信社提供)によると、本作は第5位。全国60スクリーンで、初日から2日間で動員7万人、興収1億人強。最終的に興収5億円以上が見込めそうとのことだが、都内の映画館にて公開2日目の夜の回に入ると、場内は30人前後といったところで、どこか寂寥としており(たまたま、その映画館の入りが少なかっただけなのですかね?
ただ、この春のリメイク版『セーラー服と機関銃』も初日に見に行ったら、お客は私を含めて5人だったので、それに比べたらかなり良いほうか?)、もちろん客層はほとんど男。予想通りとはいえ、やはりせっかくの40周年、「女も萌えます美少女艦娘!」くらいの勢いもあっていい(って、これはちと恥ずいな?)。
などなどと嫌みばかり書いているようだが、せっかく『劇場版艦これ』がそれなりに気持ちの良いプログラムピクチュアの佳作に仕上がっているのに、何だかもったいない気がしてならないし、もしも作る側や売る側が「アニメ映画なんて、マニアだけ見てくれれば、そこそこ稼げて良いんじゃね?」とでもいった考えをいつまでも持ち続けているのだとしたら、それこそ時代からずれていると言ってもいいだろう。
それは今年のアニメ映画群の大躍進を見ても明らかなのである。角川映画は、角川アニメは、いったいいつトレードマークの“火の鳥”のように甦るのか?
(文・増當竜也)
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