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「桃太郎殺す!」鬼が仲間を集め、桃太郎退治に!? めくるめく“くだらない古書の世界”へようこそ『怪書探訪』

 村田沙耶香の『コンビニ人間』(文藝春秋)が、芥川賞を受賞した今年。お笑い芸人の又吉直樹が同じく芥川賞作家になったことを契機に、作家が文化人枠としてテレビ出演するようになり、なにかと話題の絶えない文芸界。誰もが知っている名著をはじめ、今日も数々の作品が読まれているが、その一方で作家たちの偏屈な情熱と異常な探究心から生まれた、“怪書”なるものが存在する。

 本書『怪書探訪』(東洋経済新報社)は、古書の魅力に取り憑かれた“愛と情熱の人”を自称する古書山たかしが、ありとあらゆる“怪書”を紹介する東洋経済オンラインでの連載コラム「稀珍快著探訪」をまとめた一冊だ。

 そんな古書山が「まさに奇書中の奇書」と鼻息を荒くして語る一冊がある。昭和30年代に活躍したSF作家・栗田信の著作『醗酵人間』がそれだ。

 気になる内容は、主人公の九里魔五郎という男がアルコールをひとなめすると体が何倍にも膨れ上がり、ものすごいパワーを得るという「ある秘術」を駆使して、「こけつかきつきつ」と雄叫びをあげながら、父の復讐を果たすというもの。もともと別々の雑誌に連作として掲載されていたものを、設定の整合性やつながりを無視したまま書籍化したため、説得力はどこかへと消え去り、混沌とした世界観に仕上がっている。が、それがかえって強烈なインパクトとなり、マニアの間で神格化されているというのだ。

 “ゲテモノ本”という実に誇らしい異名をとる同作品は、オリジナルが出回ることは滅多になく、ネット上では40万円以上で取引されるというシロモノ。落札を逃した古書山の情熱は、依然として冷めない。それなら『俺だけ醗酵人間』を作ってしまおうということで、図書館から借りてきた同作品を、コピー専門店で1枚1枚丁寧にカラーコピー印刷。さらに、製本の方法を調べあげ3週間かけて『俺だけ醗酵人間』を完成させたと語っている。古書マニアの情熱たるや、見上げたものである。

 明治時代の文豪・尾崎紅葉が発表した『鬼桃太郎』。この作品は、桃太郎が鬼を退治したあとの鬼ヶ島から物語が始まる。桃太郎一行によって、同族を虐殺された親分・大鬼は、復讐を果たすために志願者を募集。しかし、桃太郎の残虐さ(?)から誰も声をあげない(鬼なのに!)。そこへ、どんぶらこどんぶらこと大きな苦桃が流れてきて……というもの。

 苦桃からは、桃太郎を倒すべく、鬼の苦桃太郎が誕生。桃太郎の猿、キジ、犬の従者にならい苦桃太郎には毒龍、大ヒヒ、牛サイズの狼が付き従う。桃太郎が振る舞っていたきびだんごが、こちらでは人間のしゃれこうべとなる。


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