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視聴率アップのTBS『A LIFE~愛しき人~』 この“キムタクのためのご都合主義”は許されるか

 自分の手術に自信を持っている井川は、その痛みを「心因性」と判断。過剰なほどの外科的な検査を受けさせ、異常がないことを確認した上で、森本を「クレーマー」「モンスターペイシェント」と結論付けました。

 しばらく病院に顔を出さなくなった森本に対し、井川も医局のみんなも「終わったこと」としていましたが、ある日、森本が自殺未遂を起こして担ぎ込まれてきました。幸い、命には別状がないものの、ともに和菓子屋を営む森本の息子は怒り心頭。壇上記念病院を訴えると息巻きます。

 これに対し、副院長・壮大は「1億円の見舞金」をドーン! 医療ミスを認めずに森本一家を丸め込むことに成功しました。

 これにて、一件落着……とはいきません。

 この結論に納得いかないのが、沖田です。寿司職人を父に持つ沖田は、右手が使えなくなった森本の気持ちが痛いほどわかります。

 そして沖田は、森本の右手の痛みが心因性などではなく、井川のミスであることを突き止めます。「クレーマーを相手にするのか」と食い下がる井川に「医師失格」の烙印を突きつけ、いざ手術へ。天才なので、治してしまうのでした。

 まあ、沖田を立たせるための、「いかにも」なご都合主義です。実際、心因性でそういう痛みが出ることだってあるだろうし、一定の検査で見つからなかった痛みの原因を「探し出せなかった方が悪い」とするのは、超天才じゃない(主人公じゃない)医師たちにとっては酷な話です。

 じゃあ、そのご都合主義がよくないのかというと、そうでもないんですよね。そこに説得力があれば、ぜんぜんいいと思う。で、今回の井川のミスの原因は森本に先天的な奇形があって血管のつながり方が普通じゃなかったことで、その奇形は幼少時じゃないと症状が出ないものだったんだそうです。

 つまり、井川がこれを見落としてミスを犯しても「仕方がない」ものであり、これを見落としても、なお井川が“若手のエース”たる力量を持っていることが、しっかりと語られている。そして、こうした沖田の振る舞いを見た井川に、「すいませんでした!」と謝らせたうえで「でも俺、沖田先生を超えて見せますから」と言わせている。

 現状、ドラマでいうところの4番手、5番手あたりに位置する井川にも「成長の余地」が振られているあたり、今後の展開にも期待が持てるところなんですよね。

 というのも、「深冬の脳腫瘍」とは別にもうひとつ、ドラマの下敷きになっていきそうなのが、「院長派 vs 副院長派」の権力争いなんです。外科部長・羽村(及川光博)は、井川の医療ミスをマスコミにリークし、副院長と一緒になって院長を引責辞任させようとたくらんでいました。その羽村は第1話で井川に「沖田のような外科医になるな、潰れるから」と助言していたりもします。

 今後、沖田が「理想の医療」を旗印に、ビジネスライクな副院長派を駆逐していくことになれば、その協力者となるのは井川に他ならない。

 キムタク演じる沖田は設定的に、もう悟りきっちゃってるというか、考えることもやることも「目の前の人を治す」ということからブレようがないので(ブレたらおもしろいけど、無理でしょう)、井川たち脇役がどんなふうに変化していくかでドラマが転がっていくことになるのでしょう。「システムと理想」とか「金儲けと人の命」とか、確かに既視感のある構図ではありますが、松ケン/井川の意識の変化と、竹内結子/深冬の体調の変化が、いい具合にドラマを引っ張っていけそうな雰囲気です。要するに、3話以降も面白そうってことです。はい。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

最終更新:2017/03/23 16:20
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