羽海野チカの人気コミックの実写化! 神木隆之介主演『3月のライオン』に隠された“危ういテーマ”とは?
後編のキーパーソンとなるのが、川本3姉妹の実の父親である川本誠二郎(伊勢谷友介)。この誠二郎はあかりたちの母親を棄てて、愛人と共に家を出ていった超無責任男。駆け落ち先でも再びトラブルを起こしたらしく、猫なで声で川本3姉妹に擦り寄り、あかりたちに都合よくたかろうとしている。反省顔で近寄ってきては、疑うことを知らない善良な人間の生き血をチューチュー吸う恐ろしい寄生人間だ。ルールの決まった将棋の世界では腕の立つ零だが、血の繋がりを楯に3姉妹にまとわりつく誠二郎には大苦戦するはめに。二枚目エリート役を演じることの多い伊勢谷友介のサイコーのクズ人間ぶりは、後編の大きな見どころと言って過言ではない。
肉親と幼い頃に死別している零にとって、血縁を口実に川本家に寄生しようとする誠二郎は到底許すことができない。クズ人間・誠二郎を容赦なく口撃する零だが、実は将棋がこの世界になければ零をはじめとする棋士たちも、みんな似たり寄ったりの存在である。プロ棋士になれたから良かったものの、そうでなければ生活能力はまるでない。原作とは異なり、映画版の零は通学先の高校では担任教師・林田(高橋一生)以外とは誰とも交流できずにいる。自分自身がダメ人間と紙一重であるがゆえに、余計に零は誠二郎を厳しく責め立てる。ひとつの芸事を極めて生きていくことの喜び、そして危うさの両面が『3月のライオン』には隠されている。
(文=長野辰次)
『3月のライオン』
原作/羽海野チカ 脚本/岩下悠子、渡部亮平、大友啓史 監督/大友啓史
出演/神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶、佐々木蔵之介、加瀬亮、前田吟、高橋一生、岩松了、斉木しげる、中村倫也、尾上寛之、奥野瑛太、甲本雅裕、新津ちせ、板谷由夏、伊藤英明、豊川悦司
配給/東宝、アスミック・エース 前編3月18日(土)より、後編4月22日(土)より全国ロードショー
(c)2017映画「3月のライオン」製作委員会
http://www.3lion-movie.com
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