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他局『ロンバケ』の財産を食い潰す、テレビ朝日『BG』の“臆面のなさ”がスゴすぎる!

テレビ朝日系『BG~身辺警護人~』番組サイトより

 木村拓哉主演の『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)も、佳境の第7話。視聴率は15.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、過去最高を記録しました。ここまで毎回、うだるような酷評を書き連ねてきたわけですが、第3話以降、数字は完全に右肩上がり。なので、何か魅力があるのでしょう。考えてみます。

(前回までのレビューはこちらから)

 

■物語を楽しむだけがドラマじゃない

 

 前回、「キムタクにすら見せ場がなかった」と書きましたが、今回を見て、その意図がわかりました。前回の見せ場は、ラストのキムタクと山口智子の再会だったのです。主人公である島崎章という人物の人生とはまったく関係なく、それを演じるキムタクが、かつて共演した山口智子と再会するシーンを見せる、というところに重点が置かれていたわけです。

 フジテレビの月9で『ロングバケーション』が放送されていたのは1996年。もう22年も前になりますが、主題歌の「LA・LA・LA LOVE SONG」も、隅田川にかかる新大橋のほとりにあったアンティーク風のマンションも、スーパーボールを窓から落としてポヨ~ンというシーンも、もちろん瀬名と南のことも、よく覚えています。鮮烈なイメージを持ったドラマだったし、キムタクも山口智子も輝いてた。

 結局のところ、ストーリーはあんまり覚えてなくて、記憶に残っているのはプロットに関係のないシーン単体やロケーションだったり、キャラクターの口調だったりするわけで、それはそのまま役者さんの財産でもあります。

 その財産を、丸のまんま、なんの加工もなく食い潰しにきたのが、今回の『BG』でした。

 キムタクが銃口を向けられたまま、山口智子と痴話ゲンカを繰り広げるシーンがあります。もはや物語的にはなんの意味も持たない数分間でしたが、『ロンバケ』の空気感だけがビンビンに伝わってくる。そこには、島崎章と元嫁・仁美はいません。22年後の瀬名と南がいるのです。テレ朝なのに、数分間だけフジテレビなのです。

 そうした臆面のなさは、ドラマとしての無策、創作に携わる者としての無恥を天下に晒す行為であるとともに、『BG』が徹底的に視聴者目線で作られているという証左でもあります。いわゆる“キムタクドラマ”を見ているファンに対して、見たいものを見せる。面白い筋立てやキャラクターの整合性を横に置いてまで、それを見せる。それが『BG』のやり方だし、実際、このシーンは懐かしかったし、楽しかったんです。

 もうひとつ、臆面がないなぁ(視聴者目線だなぁ)と感じたシークエンスがあります。元嫁からの警護依頼に対して「やりにくい」と言って同僚に仕事を振ったキムタクに、斎藤工が説教をする場面です。

 斎藤が唐突に「女は守らなきゃいけない」「女を守るのが男」と、これまた脈絡のないセリフを吐きます。これも、自衛隊上がりのクールなボディガード・高梨雅也という人物が言ったとするなら不自然でしかありませんが、今をときめく稀代のセクシー俳優・斎藤工が言ったなら意味があるんです。「言われたい!」「守られたい!」という女性ファンのリアクションを織り込んで作られているわけです。

 ドラマという媒体でありながら、役の人物ではなく演じる俳優に寄せて脚本を作っている。こんなのは劇作家にとって自殺行為だと思うんですが、逆にいえば命がけで数字を獲りにきているともいえるわけで、もう感心するしかありません。

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