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民事訴訟の「デジタル化」で何が起こる? 仮想通貨“流出騒動”の二の舞になる可能性は……

※イメージ画像(「Thinkstock」より)

 いま民事裁判のデジタル化が進められている。政府は裁判上で必要な訴状や準備書面など書類での手続きを電子化する方針を固め、2020年の導入を目指し、「書面で準備しなければならない」という原則が明記される現在の民事訴訟法を改正する方向だ。裁判所の専用サイトに訴状や準備書面をデータ提出することができれば、手間やそれにかかる費用などが省かれ利便性が上がるため、今後は有識者会議を重ねるという。

 その一方で懸念もある。仮想通貨でも起こったセキュリティ問題だ。ある行政書士は「勝敗で何億円ものお金が動く企業裁判もあって、そこで勝つためにハッキングなど不正アクセスによる情報戦争が起こってもおかしくはない」と話す。

「データ提出が前提なら、裁判所のセキュリティは万全でも、全国の各弁護士事務所も同様の体制を整える必要がありますが、それは難しいでしょう。もし戦略として隠し持っているデータ資料を相手から盗み出されて勝敗がひっくり返ったら最悪の事態です」(同)

 ハッカーなどによるコンピュータを狙ったサイバー攻撃は長年、それを守るセキュリティ側とのいたちごっこが続いている。すべてのモノがネットにつながるIoT(INTERNET OF THINGS)の社会でも、これはライフラインすら脅かしかねない怖さもはらみつつあり、少し前に話題になった、英国人ハッカーが米国防総省から極秘情報を盗み出した事件など、ひとつ間違えば国家の安全すら脅かされる例も既にある。

 訴訟手続きのネット化は法曹界からも要望が聞こえていた話ではあるが、すでに一部の弁護士事務所では、企業の取引に関する契約書をデータ化させて利便性を上げている。そのため、遅かれ早かれIT化は避けられないところだったが、ハッキングへの危機感はないのか。都内の有力法律事務所に務める弁護士に聞いてみた。

「大手事務所だと裁判所から近い場所にオフィスを構えているので、紙でも労力はそれほどかからないんですが、大きな案件だとキャリーケース3個分とかの大量の書類を裁判期日に持っていかなければならないので、データで済めば確かに便利ですし、もともと訴訟記録をデータ化している事務所では処理能力も上がります。訴訟記録というのは基本、閲覧可能なのでハッキングや誤送信などがあっても実害が少ないでしょう。ただ、閲覧制限がかかった記録や、非公開のものになるとハッキングによる被害は考えられますが……」

 話を聞く限り、懸念よりも利便性への期待の方が大きそうだが、ただし、裁判所ではなく弁護士事務所へのハッキングにおいては別の見方をする。

「たとえばクライアントから提出してもらった企業の財務状況、ノウハウ、部外秘の情報戦略などが漏れたら大変です。特許侵害訴訟や同業者同士の争いなど、企業のノウハウが訴訟で主張されるときにそろえる資料などが外部へ漏洩するとなればダメージが大きいです」(同)

 そうなった場合の責任の所在は一概に弁護士事務所にあると認定できるかは微妙だ。というのも、この弁護士は現在、仮想通貨ハッキング被害を多数扱っており、そこでは被害の救済が難しい側面も出てきているからだ。

「よくあるのは、仮想通貨が何千万円分も消失したというものですが、それだけだと本当にハッキングによる被害なのか、身近な人物による盗難か、一見して見分けがつかないこともあります。被害は刑事・民事の両面で手続きができますが、刑事だと正直、告訴受理までこぎつけるのは多くない印象です。民事だと盗んだ送金先の“ウォレット”がわかったとしても、その利用者が誰かまでは突き止めるのが難しかったり、取引所が利用規約上、ハッキングに対して免責としていることもあり、どこまで取引所に過失を求められるかは不透明なんです」(同)

 訴訟関係のハッキング被害も、これと似た問題が起こる可能性があるのか。法改正においては、そのあたりの対策にこそ、万全を期してもらいたいところだ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

最終更新:2018/03/17 16:00
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