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小説化記念インタビュー

舞台『りさ子のガチ恋▽俳優沼』脚本&演出家・松澤くれは氏が明かす、制作のウラ側――「元モー娘。新垣里沙は、バケモノのような女優」<前編>

■「告知したときが一番、叩かれた」

 

――「ガチ恋」というタイトルにかなり衝撃を受けました。作品を上演するにあたって、さまざまな意見があったかと思いますが、いかがでしたか?

松澤 業界の反応は、「そういうのやったらダメだよ」「何やってんの!?」と(苦笑)。「やっていいことと、悪いことがあるよ」といった目では見られましたね。最初に告知したときが一番、叩かれました。

 公演日程と劇場程度の内容だったんですけど、やはりタイトルのインパクトが強かったようで、「直ちにやめてください」「オタクを茶化すな」と、Twitter のDMで脅迫されたこともありました(苦笑)。僕は、基本、シリアスな作風が多いんですが、それを知らない方々は、コメディー作品だと思ったようで、実際に作品を見てもらうまでは分かってもらえないだろうなと覚悟はしていました。もちろん、「すごく面白い題材」って言ってくださる方もいらっしゃいましたが、告知の段階では、結構ネガティブな意見の方が多かったですね。

――でも、いざ公演が始まると、ネット上で評判がどんどん感想を拡散されて、連日たくさんの方々が当日券を求めて劇場に列を作ったとか。

松澤 そうなんですよ。毎ステージたくさんの方に並んでいただいて、チケットの当選倍率は20倍超えだったと聞きました。皆さんの口コミのおかげでもありますね。それぞれ受け取り方は違うと思いますし、面白いと思う人もいれば、面白くないと思う人がいる中で、見た人には僕がやりたいことは伝わったのかなって。そう思うことができたのは救いでした。

――公演中には、ファンの方が松澤さんに贈ったスタンド花が、誰かの手によって壊されてしまうという悲しい事件もありましたよね。

松澤 あの件は、本当にショックで……。これは自分の中できちんと消化しないといけないなと思いブログを書いたら、たくさんの反響をいただきました。でも、「自分で壊して話題性を狙ったんでしょ?」なんて言われてしまって。ただ、僕のことを元々ネガティヴに捉えている人は、当然そうなるよなと。そう思った時に、言葉を尽くせば伝わるっていうのは、欺瞞だなって思ったんです。こっちが心を尽くして話した言葉でも、どう受け取るかは相手の自由ですから。

 そういう意味では、精神的なダメージは結構大きかったんですが、そこから色々考えることもできましたし、現場はすごく楽しかったです。役者さんとみんなで和気あいあいとしていました。

■「現実」と「リアリティ」はイコールではない

 

――今作で、松澤さんが一番こだわった部分は何ですか?

松澤 「語彙」です。俳優の言葉づかいと、ファンの方たちの言葉づかいを意識しました。Twitterにおける「本アカ」と「愚痴アカ」の語彙の使い分けには特に気をつけましたね。小説版では、舞台とは違った小説ならではのある“仕掛け”があるので、読んでくださった方は、皆さん驚かれるかと思います!

――「松澤さん、よく見ていらっしゃるな~」と、投稿内容の一つひとつにリアリティを感じました(笑)。

松澤 でも、あまり具体的な出来事などは追わないようにしたんです。とはいえ、勝手に入ってくる情報もあるので、自分からは調べずに、なるべく情報を入れすぎないようにしましたね。よくある“匂わせツイートをしてカノバレ”騒動も作中に出てきますが、完全に妄想なので、もし現実にああいうことが起きていても、偶然被っているだけなんです。

――りさ子のオタク友達には遠征組の子がいたり、原作厨がいたり、「こういう服装の人、劇場でよく見るな」というファッションだったりと、登場人物のキャラクター設定にも“あるある”要素が詰め込まれているなと感じました。

松澤 具体的なモデルはいません。でも、僕自身オタクなので、ジャンルは違えどもある程度の知識はありますし、衣装のブランドとか、細部までこだわってしまうことはよくあります(笑)。「分かる~!」って共感していただくだけでも、楽しんでいただけるかなって。

 俳優達の楽屋でのやりとりは、今回出演していない知り合いの俳優に、雑談の中で色々聞いたりもしましたが、例えば「プレゼントは何を貰ったらうれしい?」など、細かいことは聞きませんでしたね。「スタバカード、ありがとうございます!」みたいなツイートとか、よく見るなぁ、よく貰っている=みんな嬉しいのかな? とかいろいろ考えてたときに、そういう俳優がいても不思議じゃないなと。ただ、現実にいるかどうかは分からない。

「現実」と「リアリティ」は決して同じものではないし、“特定の誰か”を明確にせず、余白を残したほうが面白いと思うんです。

――確かに、どこまでが実像でどこからが虚像なんだろうって考えるのが楽しかったです! 例えば、公演を見たファンが「あそこがよかった!」って盛り上がっていても、実際、俳優たちの手ごたえとしては、「微妙だったな」って温度差があったり……(笑)。

松澤 正直、それはありますね(笑)。毎回必ずベストを目指しますが、人間なので、むしろ変わらないことはできませんし、試行錯誤を積み重ねた結果、微妙な出来になってしまったり、うまくいかずに「悔しいな」って思っていた時に、お客様から、「今日が一番よかった」って言われることはもちろんあるし、その逆もあり得るので(笑)。

――そう考えると、ファンって、俳優たちのことを分かっているようで分かっていないんですよね(笑)。

松澤 そうなんですよね(笑)。“知りたい”と思う一方、“でも他人のことは、その本人にしか分からない”っていうのが、この作品の根幹にあります。

――松澤さんは、「俳優」と「ファン」は、どういう関係性だと思われますか?

松澤 まさに、そこは、小説を読んでいただきたいです! ラストの翔太の言葉を、僕の考えとして受け取ってもらえたらうれしいですね。

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