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2017年および18年上半期の日本映画シーンを検証!

日本映画界から実写ヒット作が消えてしまった!? 『シン・ゴジラ』以降の主流なき邦画界を考える

2017年の実写邦画No.1ヒット作『銀魂』。第1作に続いて小栗旬、菅田将暉、橋本環奈らが続投する『銀魂2』の公開が8月17日(金)に控えている

 興収83億円を記録した『シン・ゴジラ』(16)を最後に、日本の実写映画から50億円を超えるメガヒット作が生まれていない。『シン・ゴジラ』や250億円の興収を上げた劇場アニメ『君の名は。』(16)が牽引する形で、2016年の日本映画界は今世紀最大となる2,355億円の興収を記録。続く17年もディズニー映画『美女と野獣』など洋画の大ヒットに恵まれ、前年に次ぐ2,285億円という高い数字を残した。アイドル俳優たちをキャスティングした学園青春もの、いわゆるキラキラ映画は費用対効果のよさから次々と製作されているが、以前は20億円が業界でのヒットの目安だったのが10億円にハードルが下がるなど、ヒットの規模は小さくなりつつある。また、東日本大震災直後の社会状況を反映させた『シン・ゴジラ』『君の名は。』のように、世代を越えた話題を集めるには至っていない。全体の興収結果を見る限りでは好調さをキープしているように見える映画界だが、本当にそうだろうか。2018年上半期も終わろうとしているが、今の邦画シーンはどういう状況なのか、映画ビジネスに詳しい映画ジャーナリストの大高宏雄氏に聞いてみた。

大高「2018年に入り、特に邦画実写作品が低迷しています。1月から5月、20億円を超えた作品が1本もありませんでした。“邦画の大ヒット作がないのでは?“という問いに答えるのなら、大ヒット作は生まれています。東宝が3月に公開した『ドラえもん のび太の宝島』は53億円、4月に公開した『名探偵コナン ゼロの執行人』は80億円に迫り、どちらもシリーズ歴代No.1の大ヒットになっています。特に入場者への特典を付けることもない『名探偵コナン』の6年連続での記録更新は目を見張るものがあります。第1作『──時計仕掛けの摩天楼』(97)は興収11億円ですから、すごい伸び率です。今や国民的アニメの位置を盤石なものにしていると言えるでしょう。アニメに偏り始めましたが、日本映画界にはヒット作は生まれています。以前とはヒットの構造が変わったということなんです」

 劇場版『名探偵コナン』は、原作コミック&TVアニメの知名度に加え、ハリウッド映画ばりの大掛かりなアクションシーンやサスペンス要素がふんだんに盛り込まれ、幅広い層を取り込んだGWに欠かせない定番シリーズとなっている。『ドラえもん のび太の宝島』は東宝のヒットメーカー・川村元気プロデューサーが脚本を担当している。人気アニメシリーズがマンネリ化に陥らない工夫をしている一方、実写映画に元気がないのが気になるところだ。大高氏は『シン・ゴジラ』以降、日本の実写映画が活性化できずにいる原因のひとつとして、17年に公開された『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(東宝、ワーナー共同配給)、『無限の住人』『鋼の錬金術師』(ワーナー配給)の不振を挙げている。3作品とも知名度の高い人気コミックを原作にした話題性抜群のアクション大作だったが、『鋼の錬金術師』は興収10億円、『無限の住人』『ジョジョの奇妙な冒険』は10億円に届いていない。3作品とも配給側が狙ったような興収結果を残すことはできなかった。

大高「日本ならではのエンタメ大作になるのではと、この3本には期待していたんです。人気コミックをベースにして、どんな新しい世界を見せてくれるんだろうと、公開が始まるまでワクワクでした。個人的には、『無限の住人』は三池崇史監督らしさが出ていて面白かったと思います。ただ、一般的にはどうだったでしょうか。この3本が興行的に失敗した原因は、いろいろ考えられます。キャスティングの問題、深みのない世界観……。でも、興行的に成功しなかった作品のことは、誰も分析しようとはしません。今や、まるで最初から存在しなかった作品のようになっていないか。次から次に新作が登場してくるので、当たらなかった作品のことを配給側も批評する側もかまっている余裕がありません。しかしですよ、ハリウッドがマーベルコミックをアメコミ映画として実写化して成果を上げているように、これらの作品もうまくやっていれば“ジャパコミ映画”として、日本映画に新しい路線を切り開くことができたんじゃないかと思うんです。そこを綿密に分析する必要があるのではないか。人気コミックを巧みに実写コメディ化した福田雄一監督の『銀魂』(ワーナー配給)は興収39億円を記録し、17年の実写邦画No.1ヒット作になっています。この成功は大きなヒントです。映画界の企画の貧困さは以前から言われていることで、そのことを今さら指摘してもどうにもなりません。求められるのは具体性です。人気テレビドラマの劇場版は、1980~90年代にドン底状態にあった日本映画界を活性化させる役割を果たしましたが、それに代わる新しいエンタメ大作にどう取り組んでいくかが課題ではないでしょうか」

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