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新幹線殺傷事件「発達障害と犯罪」は、本当に無関係なのか――賛否を呼んだドキュメンタリー番組が書籍化

発達障害と少年犯罪』(新潮社)

 6月9日、東海道新幹線の車内で刃物を持った男が乗客3人を殺傷した事件は、社会に大きな衝撃を与えた。この事件を報道するにあたって、ニュース番組『Mr.サンデー』(フジテレビ系)では、小島一朗容疑者が「発達障害」であったことを強調。毎日新聞デジタル版では、記事のタイトルに「容疑者自閉症?」と記載し、翌日、不適切な記載として謝罪をした。

 近年、重大犯罪と発達障害とを関連付けようとする動きは少なくない。もちろん、犯罪はさまざまな要因が複合的に重なったことによって引き起こされるものであり、「発達障害=犯罪」という短絡的な見方はただの偏見にすぎないことは言うまでもない。一般の人が犯罪を犯す割合が約0.2%である一方、発達障害を含む精神障害者が犯罪を犯す割合は約0.1%しかない。

 だが、発達障害と犯罪とは「まったく」関係がないのだろうか――? ジャーナリストの田淵俊彦氏による著書『発達障害と少年犯罪』(新潮新書)は、タブーとされる発達障害と少年犯罪との相関について迫った著作だ。

 2014年12月に起こった「名古屋大学女子学生殺人事件」の犯人は、精神鑑定の結果「自閉症スペクトラム障害(ASD)の可能性がある」と診断され、同年7月に起こった佐世保女子高生殺害事件でも、裁判長が「(被告に)ASDが見られる」と、事件の要因のひとつとして発達障害の存在に言及している。

  ASDとは、自閉症やアスペルガー症候群などが統合されてできた診断名。コミュニケーションに困難を来し、限定された行動や興味を示し、反復行動などを起こす。原因は特定されていないが、何らかの生まれつきの脳機能障害であると考えられており、しつけや愛情不足といった親の育て方が直接の原因ではないとわかっている。

 本書を執筆するきっかけとなった、田淵氏がディレクターを務めるドキュメンタリー番組『障害プラスα~自閉症スペクトラムと少年事件の間に~』(日本テレビ系)は、ASDを持つ当事者や親族からの賛同を得た一方で、「差別が助長される」「無神経な番組」「殺意さえ覚える」などと、多くの非難を浴びた。もちろん、「発達障害がそのまま少年犯罪に結びつくわけではない」と強調するように、田淵氏もまた発達障害=犯罪と短絡的に考えているわけではない。しかし、彼は発達障害と犯罪とが「結びつく可能性があるとしたら、なんなのか」と、そのタブーにあえて向き合おうとしている。

 本書の核となっているのは、日本における発達障害研究の第一人者である精神科医の杉山登志郎氏による、以下のような言葉だ。

「発達の障害とか凸凹だけでは、触法とか問題行動になることは非常に少ないです。そこに『プラスαの要因』がないといかんのですね」

 いったい、どういうことなのか?

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