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嵐やミスチルが賛同する“公式サービス”は機能せず…チケット転売市場はいまどうなっているのか?

 コンサートや舞台などのチケット転売の温床となっていたチケット売買仲介サイト「チケットキャンプ」が2017年12月にサービス停止となってから半年以上。チケットの“転売市場”はいま、変わりつつある。

「チケットキャンプ」は、いわばチケットを売りたい人と買いたい人とをマッチングするサービス。チケットを売りたい人は、任意の価格をつけてチケットキャンプに出品。サイトを見たユーザーが購入し、チケットの受け取りが済めば、取引成立となるというシステムを取っていた。

 取引成立時には、手数料として取引額の8.64%(8000円以下の場合は一律690円)が発生する仕組み(定価以下チケットの場合は手数料なし)だったが、チケットキャンプを運営するミクシィ傘下のフンザが、一部の転売業者に対し手数料を優遇していたことが発覚。2018年1月にはフンザ元社長と転売業者が、転売目的であることを隠してチケットを入手した詐欺の疑いで京都府警に書類送検されている。つまりチケットキャンプは、転売業者とグルになっていたことが発覚し、閉鎖することとなったのだ。

 チケットキャンプのほかにも、「チケット流通センター」や「チケットストリート」といった、同様のチケット売買仲介サービスはいまだ存在している。チケットキャンプの閉鎖以降、これらのサービスを利用するようになったというユーザーは増えているが、CMを打つなどして知名度が高かったチケットキャンプに比べると、これらのサービスにおける出品数は少ない。チケット売買事情に詳しいIT関連会社スタッフはこう話す。

「チケットキャンプでは、明らかに転売業者としか思えないような出品者が多く見られましたが、チケット流通センターやチケットストリートでは、転売業者ではない一般ユーザーが出品しているケースのほうが多いようです。チケットを確保するために複数のファンクラブ枠で応募して当選したものの、余らせてしまったというタイプのユーザーですね。あるいは、転売業者というほど大きな規模ではなく、最初からプレミア価格で転売する目的で購入したチケットを出品しているといったような、個人レベルの転売は見受けられます。

 全体的な出品数もチケットキャンプに比べると少なめで、定価よりも高い価格をつけた出品が多い印象です。チケットキャンプの転売業者は、あまり人気がなく在庫がダブついているチケットについては、定価の半額くらいでどんどん出品していたケースもあったのですが、これら2サービスではそういった出品は少ないようですね」

 チケット売買仲介サービスは、あくまでも「自分が行けなくなったチケットを買ってくれる人を探す場」であって、「そもそも転売目的で購入したチケットを取引する場ではない」という前提がある。しかし実際には、多かれ少なかれ転売目的のチケットが出品されているというのが現状だ。

機能していない“公式サービス”「チケトレ」

 その一方で、完全に転売目的でないチケットのみを扱う仲介サービスもある。それがチケットリセールサービス「チケトレ」だ。

 2016年8月、一般社団法人日本音楽制作者連盟、一般社団法人日本音楽事業者協会、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会、コンピュータ・チケッティング協議会の音楽関連4団体は、嵐、B’z、Mr.Childrenなど100組以上のアーティスト賛同を得て、チケットの高額転売に反対する声明を特設サイトに発表した。そのうえで、4団体は高額転売という形ではなく、ユーザー同士がチケットのやり取りをするための公式チケットリセールサービス「チケトレ」を、2017年6月に正式オープンしたのだ。

 このチケトレでの取り引きはすべて定価で行われるため、営利目的の転売というものはあり得ない。何かの都合で余ってしまったチケットを、そのコンサートに行きたい人に譲るためにのみ使用されるサービスなのだ。

 しかしながら、チケット定価の10%(定価が3999円以下の場合は一律400円)の出品手数料と購入手数料のほか、決済システム手数料(定価の3%)、送金システム手数料(380円)、送料(510円)といったさまざまな手数料がかかるため、定価取引とはいえ、実際にはチケットを取引するために余計なお金を支払わなければならない。

 さらにチケトレでは国内で公演されるすべてのチケットを出品できるわけでなく、チケトレ事務局が登録した公演のみ出品が可能となっている。一応出品登録の依頼を出すことはできるが、どんなチケットでも気軽に出品できる状態ではないというのが実情。結果的に、利用するためのハードルがきわめて高い状態となっており、チケトレの利用者数は伸び悩んでいる。

「もしもチケットが欲しい公演があっても、多くの公演はチケトレには登録されておらず、チケットは手に入らないことのほうが多い。もはやチケット取引の場としては機能していると言い難いのが現状です。また出品者の側にとっても、手数料の分が損になってしまうというのは大きなデメリット。せめて手数料分くらいは価格に上乗せしたいということで、営利目的の転売ではなかったとしても、結局は値段を自分で設定できるチケット流通センターやチケットストリートを利用する人が多いのです」(前出・IT関連会社スタッフ)

「遠方席なら“半値買い”で武道館」もいまでは困難に

 音楽業界が高額転売に反対する動きを見せる中で2017年11月にはヤフオク!(以下、ヤフオク)が、「転売する目的で入手した」と判断されたチケットの出品を禁止するルールを追加した。つまり、チケット取引で最大規模を誇るヤフオクでもやはり、転売業者締め出しの動きが始まっているのだ。音楽ライターは語る。

「新ルールが追加されたあとでも、ヤフオクにはチケットの出品はあります。しかし、明らかな転売業者は少なくなり、チケットの出品数はかなり減っています。特に、定価割れしたチケットの出品が減っている印象です。

 アーティストにもよりますが、転売業者締め出し前のヤフオクであれば、たとえば定価8000円くらいの日本武道館クラスのコンサートのアリーナ席なら2万~3万円くらいで出品されていて、ステージから遠い2階後方スタンド席なら3000~4000円くらいということが多かった。だから、たとえば、“入るだけなら定価の半額”というチケットの買い方ができたわけです。

 しかし最近のヤフオクでは、定価割れのチケットの出品は激減。良席だと3万~5万円くらいまで跳ね上がることも多く、“入るだけで2万円”といった状況も珍しくないですね」

 さらに、“リアル市場”ではこんな動きも。チケットキャンプの閉鎖やヤフオクのルール改正に先駆ける形で、2017年9月、東京原宿竹下通りにあった老舗チケットショップ「娯楽道チケット館」が閉店しているのだ。

「娯楽道は、ジャニーズやハロー!プロジェクトのチケットを多く扱っていたチケットショップです。ヤフオクやチケットキャンプに比べると多少値段は高いものの、現物をその場で入手できる手軽さとネットで在庫を確認できる便利さとで、一部のファンからは支持されていました。また、公演当日までチケットが販売されているため、駆け込みで購入し、そのままコンサートに行くというファンも多かったですね」(前出・音楽ライター)

 娯楽道と同様にリアル店舗型のチケットショップとしては、都内に5店舗を構える「ヨコハマチケットサービス」が現在も営業している。こちらもネットで在庫を確認できるが、かつての娯楽道に比べると、チケットの在庫は少なめだという。

「娯楽道はアイドルのコンサートチケットに特化していましたが、ヨコハマチケットはアイドル以外のチケットも扱っていることもあり、娯楽道の利用者がそのままヨコハマチケットに流れるという構図にはなっていないようですね」(前出・音楽ライター)

SNSで活況を呈す転売市場

 さて、こうしてチケット転売の場がどんどん少なくなっていくなか、昔ながらのダフ屋はどうなっているのだろうか。

「かつてはコンサート会場の周辺に『チケットあるよ~』などとつぶやくダフ屋がウロウロしていましたが、警察による取り締まりが強化されたこともあり、現在ではあまり見かけなくなりましたね。しかし、日本武道館のような大きな会場では今でもたまにダフ屋が出ていますよ。ちなみに、ダフ屋が出るのは入場時の本人認証がない公演で、さらにチケットが余っている公演。転売業者がさばききれなかったチケットを会場近くで売っているというパターンが多いです。価格は多少交渉の余地もあるのですが、たとえばダフ屋が“定価だよ”と言っていれば、定価プラス1000円くらいを要求されることも多い。開演後になるとかなり安くなることもありますが」(前出・音楽ライター)

 また、転売サービスではなく、個人間でのやり取りが増えていると感じる者も少なくないだろう。30代のアイドルファンはこう話す。

「SNS上で、『チケット譲ります』『チケット探しています』とつぶやく人は確実に増えている印象ですね。以前なら余ったチケットをヤフオクやチケットキャンプで売って小遣い稼ぎをしていたような人も、転売の違法性を認識するようになったのかもしれません。私の周りでは、Twitterのフォロワー同士でチケットをやり取りするケースが多いように思います」

 まったく知らない相手とSNSを介してチケットのやり取りをすることには抵抗があっても、フォロワーであればむしろ安心、ということなのかもしれない。

 こうして見てみると、チケットキャンプの閉鎖とヤフオクのルール改正、そして音楽業界による転売反対の啓蒙活動の効果もあり、市場に出回る転売目的のチケットは減少傾向にあるようだ。出回るチケットが少ないため、ファンクラブやプレイガイドでの“チケット争奪戦”に敗れてしまったファンが、あとからお金を積んでチケットを入手するということが、以前に比べ難しくなっている。その結果、「定価より安くチケットが売られているから、“クソ席”でもいいから試しにこのアーティストのライブに行ってみよう」といった“お試しライブ観戦”が容易ではなくなり、どんな遠方席でも、プレイガイドで公演の何カ月も前にチケットを確保しておかなければならないという、ある意味“正しい”状況が訪れているのである。

 そもそもそれが当たり前だといえばその通りなのだが、転売業者を当てにしていたファンが多かったのもまた事実。徐々にとはいえ転売業者の締め出しには成功しているとはいえ、営利目的の転売を本当に撲滅するには、音楽ファンに対するさらなる意識改革も必要だといえそうだ。

(文/青野ヒロミ)

最終更新:2018/06/29 07:15
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