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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.486

人間は何かに依存せずには生きていけないのか? ウディ・アレンの不倫ドラマ『女と男の観覧車』

ウディ・アレンにとって、監督49作目となる『女と男の観覧車』。キャロライナ役のジュノー・テンプルは映画監督ジュリアン・テンプルの娘。

 コメディ映画の巨匠ウディ・アレンが窮地に立たされている。ハリウッドで広まった“#MeToo”運動によって、ウディ・アレンは25年前に裁判沙汰になった性的虐待疑惑が蒸し返され、新作のキャスティングができない状況に陥っている。2017年に撮影した『A Rainy Day in New York』はすでに完成しているものの、こちらもお蔵入りする可能性が報じられている。作家の人格と作品は別物であるという考え方は、現代の米国社会では許されなくなってしまった。半世紀に及んだ巨匠のキャリアに終止符が打たれることになるのか。そんな中、米国では17年に封切られた、ケイト・ウィンスレット主演作『女と男の観覧者』(原題『Wonder Wheel』)が現在日本で公開中となっている。

 酸いも甘みも噛み分けたウディ・アレンが熟練の演出を見せる本作。舞台となるのは1950年代のNYのコニーアイランド。ニューヨーカーたちにとって、いちばん身近な避暑地であり、少年期のウディ・アレンにとっても思い出深い遊び場だった。行楽客で賑わうコニーアイランドにある遊園地は、ショウビジネス界の縮図だろう。時代の流れから取り残されたレトロムード漂う遊園地で、男女をめぐる悲喜劇がぐるぐると回り始める。

“ワンダー・ホイール”と名付けられた大観覧車がシンボルタワーとなっている遊園地に、ひとりのワケあり美女キャロライナ(ジュノー・テンプル)が現われる。キャロライナは20歳のときにイタリア系ギャングと駆け落ちしたものの、その後離婚。FBIから証言を強要され、ギャング一味から命を狙われている。行き場のないキャロライナは、遊園地で働く父親ハンプティ(ジム・ベルーシ)に助けを求めにきたのだ。回転木馬の操縦技師を勤めるハンプティは、勘当した娘キャロライナが5年ぶりに戻ってきたことに戸惑うが、見捨てることもできない。再婚相手のジニー(ケイト・ウィンスレット)、ジニーの連れ子であるリッチー(ジャック・ゴア)と3人で暮らす遊園地内の見世物小屋を改修した自宅に、しばらくかくまうことになる。

 

遊園地で働くジニー(ケイト・ウィンスレット)は、小説家志望のミッキー(ジャスティン・テンバーレイク)との火遊びに夢中になる。

 アトラクションの騒音が絶え間なく聞こえてくる元見世物小屋での、変則的な一家の生活がこうして始まった。園内のカフェでウェイトレスとして働くジニーは、キャロライナが同居することが面白くない。キャロライナはろくに家事もできず、エンゲル係数が上がるだけ。それでなくてもジニーは、前夫との間に生まれたリッチーのことで頭が痛い。リッチーは学校をサボって、映画館に入り浸ってばかり。しかも火遊びの常習犯で、精神科に通院させる治療代がバカにならない。それなのにハンプティは、血の繋がったキャロライナばかり可愛いがっている。

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