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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.490

戦争の裏側を暴き出した衝撃ドキュメンタリー!! マニュアルどおりの地獄絵図『沖縄スパイ戦史』

沖縄戦のさなかに米軍が入手した日本陸軍側の機密書類。日本では正式な記録が残っていない少年ゲリラ兵の実態が明かされる。

 前作『標的の島』から、わずか1年で本作を完成させた三上監督。テレビ局時代から沖縄の村々を地道に取材して回ってきたことで、今回のようなシビアな題材を映画化することができた。

三上監督「誰も傷つけたくないなら、ドキュメンタリーはやらないほうがいいと思います。秘密はすべてあの世へ持っていこうと考えている人でも、生涯に一度だけ口を開こうとする瞬間があると、よく記者仲間の間では言われているんです。そういうタイミングのときに出会え、しかもその重みに耐えうる聞き手になれるかどうか。でも、話した後で後悔される方も少なくありません。証言してくださった方々に、映画が公開された後に負荷が掛かるかもしれない。『なんで、あのことを話したんだ』と同じ村の人から責められることにもなりかねません。ドキュメンタリーをつくっていると、取材している相手も自分も傷つけることになる。そのことにはいつも悩み続けています」

 それでも伝えなくてはならないものがある。大矢監督が中心となった中盤の八重山パートでは、戦争マラリアの実態を掘り下げていく。日本最南端の小さな島・波照間島は実弾が飛び交う戦場にはなっていないものの、島民は日本軍によって西表島に強制移住させられ、島民の99%がマラリアに罹り、島の人口の三分の一に及ぶ約500人が亡くなっている。この事件に関与していたのが、やはり陸軍中野学校出身者だった。偽名を使って学校教員として波照間島に赴任し、島民の信頼を得た上で、マラリアを恐れて地元の人たちは誰も近づかない西表島のジャングルへの移住を強行した。波照間島に残された島民たちの家畜はすべて屠殺され、食肉として日本軍が無断で回収していった。食料も薬もない西表島のジャングルで、島民たちは次々と倒れていった。戦力となる男性以外の住民を「始末のつく状態にする」こと。これも日本軍のマニュアルどおりだった。

 三上監督と大矢監督は、最後の最後に最凶カードを切ってくる。日本国の安全を守るために設立された自衛隊にとっての最高規範である「野外令」や「自衛隊法」を読み解いていく。「野外令」の遊撃戦(ゲリラ戦)の項目では、【情報の入手、企画・行動の秘匿などのため、住民の協力を確保することが重要である】と記されている。「自衛隊法 第103条」には、自衛隊は病院や民間の家屋や物資を優先的に使用することができるとある。また、自衛隊の「情報保全隊」が住民の言動に普段から目を光らせていることも本作は伝える。再び戦争が起きれば、沖縄で起きた“裏の戦争”が繰り返され、それは日本全域に及ぶであろうことは容易に想像できる。沖縄の悲劇は73年前に起きた過去の不幸な出来事ではなく、現在も自衛隊の南西諸島への配備増強によって進行していることになる。

三上監督「沖縄戦では、明らかにスパイでない住民がスパイとして何百人も虐殺されています。戦争マラリアは軍の情報を死守する作戦が招いた緩やかな集団自決だったと、今の私には言えます。沖縄戦の悲劇から学び、二度と同じ過ちが起きないようにすることが、沖縄戦で亡くなった方たちに対する最大の供養だと思うんです。でも、沖縄戦のことをちゃんと伝えることができずに同じ過ちを繰り返すならば、それは理不尽な死を余儀なくされた人々を二度殺すことになってしまうんです」

 激戦を生き抜いた元少年兵たちは、本編の中でたびたび「護郷隊の歌」を口ずさむ。おじいとなった彼らにとってはつらすぎる記憶だが、それが彼らにとっての青春だった。亡き戦友たちを想っておじいたちが歌う「護郷隊の歌」は、実は陸軍中野学校の歌が原曲であることを三上監督は教えてくれた。中野学校で卒業生たちを送り出すときの「三々壮途の歌」の歌詞を替えたものを、少年兵たちは「護郷隊」の隊長から教わっていたのだ。知れば知るほど、苦しくなる。この映画は覚悟して観たほうがいい。
(文=長野辰次)

『沖縄スパイ戦史』
監督/三上智恵、大矢英代 プロデューサー/橋本佳子、木下繁貴
撮影/平田守 編集/鈴木啓太 監督補/比嘉真人 音楽/勝井祐二 
製作/DOCUMENTARY JAPAN、東風、三上智恵、大矢英代
配給/東風 7月21日より沖縄・桜坂劇場、28日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
(c)2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会
http://www.spy-senshi.com

 

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最終更新:2018/07/27 19:24
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