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「す、すげえ ごはん7杯目だっ!」料理マンガの巨匠・土山しげる氏の遺作 トラック野郎が東北を巡る『流浪のグルメIII 東北めし』

『流浪のグルメIII 東北めし』(双葉社)

 料理マンガの人気が続いている。『孤独のグルメ』(扶桑社)、『深夜食堂』(小学館)等のヒットを皮切りに、その後も『いつかティファニーで朝食を』(新潮社)、『ラーメン大好き小泉さん』(竹書房)、『忘却のサチコ』(小学館)など、数多くがドラマ化され、現在では一雑誌の中に2~3作は料理・ご飯ものが連載されているほど。いまや料理マンガは雑誌に欠かせないコンテンツだといえるだろう。

 そんな料理マンガブームの中、他の作家とは一線を画して、男臭さあふれる料理マンガを豪快に描き続けてきたのが土山しげる氏だ。暴走族の頭だった主人公がラーメン修行の旅をする『喧嘩ラーメン』(日本文芸社)をはじめ、『食キング』『喰いしん坊!』(ともに日本文芸社)、『野武士のグルメ』(幻冬舎)など、異端のヒット作を連発してきた料理マンガ界の巨匠だ。作品は未読でも、特徴のある絵柄を目にしたことのある人も多いのではないだろうか。

 そんな土山氏の作品、『流浪のグルメIII 東北めし』(双葉社)が新たに上梓された。伝説の食先案内人・ハンター錠二こと、長距離トラック運転手の獅子戸錠二が、東北の旨いものを食べ尽くす食ルポルタージュマンガの第三巻だ。宮城、岩手と北上して、今回の舞台は青森。八戸のせんべい汁、五戸の桜鍋、青森県民のソウルフード・グラタンフライパンなど、昔ながらの郷土料理からB級グルメまでをガツガツととにかく食べまくる。料理の絵は大きなコマで緻密に描かれており、どれも旨そうで思わず唾が溢れてくる。紹介される店は飾らない大衆食堂が多く、しみじみと旅情にあふれ、ハンター錠二と一緒に東北を巡っているような気分に誘われる。ちなみにハンター錠二は『喰いしん坊!』、『大食い甲子園』(日本文芸社)に登場する名物キャラクターの一人である。

 破天荒で荒唐無稽なストーリーが魅力の土山しげる作品だが、今作は荒々しさも控えめに、正面からまっとうに郷土料理のレポートをしている。とはいえ、氏の代名詞である男臭さや大食いは健在で、「これくらいは… 朝メシ前 いや 朝メシ後だ」「す、すげえ ごはん7杯目だっ!」などと格好良いのか格好良くないのかよくわからない台詞を吐き、「アフアフッ」「モフッ」「モニュ」「ズゾッ」「ズチュルル」とオノマトペを乱舞させて7杯メシを食べる。荒唐無稽なストーリーに加え、この過剰さと特にツッコミの入らない男ギャグが土山ワールドの“味力”なのではないだろうか。

 残念なことに土山氏は今年5月に68歳で他界され、連載中だった5作とともに今作が遺作となってしまった。謹んでご冥福をお祈りします。
(文=平野遼)

最終更新:2018/09/12 19:30
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