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オッサンが読んで感動してちゃダメだ。いま人生を燃やしたい人だけが読むべき本。外山恒一『全共闘以後』

『全共闘以後』(イースト・プレス)

「一度お会いしたいのですが、ご都合はいかがでしょうか?」

 新著『全共闘以後』(イースト・プレス)の出版を控えた外山恒一から、丁寧な連絡をもらったのは9月中旬のことであった。

 2007年。東京都知事選に立候補し政府転覆を呼びかける過激という言葉でもまだ足りない激烈な政見放送で、一躍名を知らしめた男。前世紀には当たり前にいた、銃や爆弾で武装して、社会の安寧秩序を混乱させる陰謀を企む組織が消滅しつつある中で、暴力革命を呼びかける男。そして、今や多くは侮蔑の意味で使われる「ファシスト」を自称する男。

 でも、検索すればネットのあちこちで見つかる動画の中での奇矯な振る舞いとは裏腹に、普段の外山は物静かで控えめな人物だ。時折、開かれるトークライブなどで政見放送のような外山が見られると期待した人は、拍子抜けするだろう。何しろ、たいてい外山は「今日は、みなさんお越し頂いて……」と、嘘のない感謝の言葉から話を始める。その口から出る言葉は、よくある学者や批評家のそれとは違う。外山の経験則に基づいた、リアリティのある言葉。そこに、最初は拍子抜けした人も引き込まれていくのである。

 とにかく実践こそが、外山を凡百な学者や批評家と違う存在として光らせている。昨年上梓した『良いテロリストのための教科書』(青林堂)において、外山は、実践をさらに深化させた。そこに、記されたのは希望を失い絶望へと追いやられがちな現代においての、ひとつの可能性。状況が、どうしようもないと思うなら、自らの望む状況を生み出せばいいということ……。

「各自でどういう社会を望むのかを考えなくてはいけません。それを、選挙以外の方法で実現するにはどうすればいいのか。まずは、テロに限らず思いつく限りやってみればいい。選挙以外の方法で自分たちの意志を政治とか社会状況に直接反映させる手は、なんかないものかを試行錯誤すべきなんです。狭い意味でのテロは選択肢の一つでしかない」

 これは、昨年、筆者がインタビューした時の外山の言葉。テロを選択肢ということは、ともすれば、国家権力によって獄に繋がれ、処刑されることもある。市民社会からは、悪魔のごとく忌み嫌われることもあるだろう。そのことも含めて、外山はテロリズムをも肯定している。

「自分がそれに手を染めるかどうかはともかく、人がいっぱい死ぬであろう混乱状況を、招くような方向へ誘導しようとしているんです。それに巻き込まれてボクが殺される可能性だってあるわけですよ。そういうのは、仕方ない。甘んじて受け入れるしかないです」

 それが、達観なのか覚悟なのか。いずれにしても、ふと世の中のありように疑問をもった時、誰もが一度は外山に惹かれる。その理由は単純だ。どこよりも、幅は広く、固定した何かに囚われてはいない人たちが集まっているのではあるまいか。とりわけ2011年以降、何かの政治主張を掲げるデモは、目につくようになった。でもどうだろう。そんなものに参加しようと思っても、あるいは参加しても、自分の抱えるもやもやしたものを吹き飛ばすことができる人はわずかだ。国会前は、その好例。警察の設置した柵に守られながら、虚空に向かって政権批判だとか、「戦争法」に「共謀罪」に「MeToo」などなど、ブームに乗っかった主張を叫ぶだけ。どこにも、世の中が動く可能性などない。

 一時期流行った、SEALDsではダメ。はたまた、在特会をはじめとする行動する保守でも、ノリが違う(これらは、思想よりも音楽や食べ物の好みの相違に近い)。

 もうひとつ、小賢しく「議員の選挙を手伝って、影響力をだね……」などと訳知り顔で語るヤツら。選挙に行けば世の中が変わるなんて浮かれている連中は、ゴミ箱に捨てたい。

 そうした人々が集まる軸は、アナーキズムであり、その発展系であるファシズムよりほかはない。アナーキズムがどうやって、ファシズムにつながるのか。その理論は語れば長いし、批判も反論もあるだろう。そんな机上の議論は別として、外山のもとに人が集っているという現実は確かにある。それも「俺も昔は……」の棺桶に片足を突っ込んだ者たちではない。

 筆者も、それに気づいたのはつい最近。去る7月、早稲田大学で学生主催による外山と文芸評論家のすが(糸へんに圭)秀実の対談が催された時のこと。どうせ小さな教室で、30人くらい集まって……と、時間ギリギリに行ってみたら驚いた。大講義室は備え付けの300席余りが埋め尽くされ、立ち見も出る超満員となっていた。それも「なんで、こんなところに来てるの?」と聞きたくなるような若い男女ばかりで。

 そこに来ていた若い男女と朝まで語り合う中で、若い世代が外山にどのような魅力を感じているかはわかった。外山の言葉を一言一句、書き写して、実践しようとする信者などいない。そうではなく、自分の活動している分野……政治に限らず、音楽・映画・オタクなどなどあらゆる表現活動に至るまで、現状に満足しない者が、その回答のきっかけとして。はたまた、共に回答へと到達できる仲間を求めて、やってきているのである。

 そうなのだ、鋭敏な感覚を持つ者はとっくに気づいていたのだ。政治活動にありがちな「○○反対」を掲げることの実態は、お上に許しを請うのと同じこと。体制内に収斂された表現活動は、社会現象を作り出すこともなく消費物で終わってしまうことを。

 もし、それに気づいたとしても、一歩踏み出すのは難しい。周囲の顔色をうかがう。最近では、Twitterなどで晒されたりなど、ネットで炎上しないかとか、気になってしまう周囲というものは、星の数ほどある。

 でも、そんなことなど気にせずに、やってきた人はいるのだ。

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