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築地も”密漁アワビ”だらけだった? 食品業界のタブー「密漁ビジネス」を暴く『サカナとヤクザ』

サカナとヤクザ』(小学館)

 アワビもウナギもカニも、日本人が口にする高級魚の大多数が、実は暴力団による密漁品であり、巨大な資金源になっている――。

 そんな衝撃の実態を突き止めるべく、密漁する暴力団や関係者に取材を続けた渾身のルポが『サカナとヤクザ』(小学館)だ。著書の鈴木智彦氏は『ヤクザと原発 福島第一潜入記』『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(ともに文藝春秋)などの著書を持つ、その道のプロ。知り合いの暴力団関係者に仲介してもらい、現場の人間に直接話を聞くという、一般人には到底不可能な突っ込んだ取材を敢行している。

 鈴木氏が最初に追ったのは、岩手・宮城にまたがる、三陸アワビの密漁団。津波が街を破壊し、無人で真っ暗な港が増えた隙に、ヤクザは高価なアワビを根こそぎ奪い取っていった。ある暴力団組長によれば、「あれだけ簡単に儲かる仕事は他にない。海で金を拾っているようなもの」だと。

 では、その密漁アワビはどこへ行くのか? 鈴木氏が卸先としてにらんだ場所が、移転問題で大揺れした「築地市場」だった。世界最大級の魚市場で、密漁アワビは売られているのではないか――。その真実を知るべく、築地でも3本の指に入る大手の仲卸にバイトで雇ってもらい、働きながら探っていく。

 ところ変わって、北海道の函館市には、大小10~15程度の密漁グループが存在する。全国的に有名な観光スポットである駅前の朝市でも、横流しされた“ヨコモノ”は堂々と売られている。「密漁品を扱ったことのない店なんてないよ」と地元暴力団組長は語り、鈴木氏が夏場に市場を回ってみると、店先から「カニはどうだい?」「獲れたてだよ、密漁だけど」と笑い声が聞こえてきたという。また、“密漁の街”と呼ばれていた根室には北方領土の問題もあり、相当複雑な背景が透けて見える。

 日本人が大好きなウナギ。これも、かなり闇に包まれている。2014年、ニホンウナギがIUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧IB類に指定され、日本で大量消費されていることが大問題になった。それなのに、牛丼チェーン店までもが提供できているのはなぜか? 考えてみれば、おかしな話だ。

 養殖するにしても、ウナギの稚魚が激減している。では、どうやって手に入れるのかというと、大量に確保するための台湾・香港ルートがある。鈴木氏が深掘りしようとすると、専門誌の記者からは「台湾・香港ルートに深く切り込むと東京湾に浮かびますよ」と忠告があったという。

 本書には、密漁にまつわるかなり具体的な地名や、ある程度個人を特定できそうな記述があるなど、関係業界を震撼させる、漁業に関するタブーが詰め込まれている。一般的な漁師は年収は右肩下がりで落ち込んでいるのに、ヤクザはなぜ大儲けできるのか? 

 おそらく、お偉いさんや、食品関係の大手企業などにとっては、できるだけ触れてほしくない中身ばかりだろう。けれど、この機会に、私たちが食べる“サカナ”の出所を今一度、考えてみてはいかがだろうか?

(文=上浦未来)

 

●すずき・ともひこ

1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。雑誌・広告カメラマンを経て、ヤクザ専門誌「実話時代」(三和出版)編集部に入社。「実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。週刊誌、実話誌などに広く暴力団関連記事を寄稿する。主な著書に『ヤクザと原発 福島第一潜入記』『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(ともに文藝春秋)など。

 

最終更新:2018/11/23 14:00
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