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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.508

貧困層がサバイブできるのはもはや裏社会のみ!? 犯罪映画『ギャングース』が描く格差社会の実情

貧困層の若者たちを主人公にした犯罪サスペンス『ギャングース』。サイケ(高杉真宙)たちは犯罪者専門のタタキ(強盗)として生きる。

 今の日本は真っぷたつに分断されている。年収300万円は貧しいと考える上界、年収300万円なんて夢の生活だと感じる下界とに分かれている。上界の人々には、下界は存在しないに等しい。だが、下界で暮らす人間はどんなにがんばっても、安定した収入を得ることはできず、健康で文化的な生活を送り、家族を養うなんて夢のまた夢の物語だ。『SRサイタマノラッパー』(09)でブレイクした入江悠監督の最新作『ギャングース』は、下界のさらに下界の最下層でもがき苦しむ若者たちを主人公にしている。

 サイケ(高杉真宙)、カズキ(加藤諒)、タケオ(渡辺大知)の3人は、まっとうに働きたくても、働くことができない。身分証がなく、身元保証人もおらず、携帯電話もないので派遣業務に登録することも叶わない。そもそも、彼らには家族も家もない。子どもの頃からネグレクトやDVに遭い、普通の10代が中学や高校に通っている間は、少年院で過ごしてきた。少年院を出ても、どこにも彼らの居場所はない。

 こんな最下層生活から何とか脱出したいとサイケたち少年院の同窓生3人組が思いついたのは、資材窃盗団や振り込め詐欺グループのアガリを奪うことだった。何も正義の味方を気取っているわけではない。犯罪者たちをターゲットにすれば、警察に通報される心配がないからだった。

裏社会の情報に詳しい“道具屋”の高田くん(林遣都)。情報料はしっかり取られるので、サイケたちの手元にほとんどお金は残らない。

 道具屋の高田くん(林遣都)から裏社会の情報をもらい、サイケが作戦を考え、少年院で工具の使い方を学んだカズキ、車の運転が得意なタケオがそれぞれの才能を活かすことで、防犯システムをかいくぐり、犯罪グループが集めた裏金をいただく。目標額はひとり当たり1,000万円。それだけあれば、裏社会から足を洗い、表の世界でまっとうな仕事に就くことができるはず。サイケたちはそんな夢を思い描きながら、犯罪者専門のタタキ(強盗)稼業に精を出す。

 本作の原作は、漫画誌「モーニング」(講談社)で2013年~17年に連載された『ギャングース』。それまでの不良少年漫画とは異なり、貧困層の少年たちの育った家庭環境や彼らの生業となる犯罪の手口がとても微細に描写されているのが特徴だった。『最貧困女子』(幻冬舎新書)や『老人喰い』(ちくま新書)などのルポルタージュで知られる鈴木大介氏が11年に出版した『家のない少年たち』(太田出版)を『ギャングース』のベースにしていることが大きい。

『家のない少年たち』を読むと、裏社会でサバイブするサイケたちは、現実世界に実在する生身の人間であることが分かる。裏ツールを専門に扱う道具屋の高田くんも『家のない少年たち』に登場する。人気コミックの実写化とは気軽には呼べない、生々しい息づかい、骨が軋むような痛みが、映画版『ギャングース』の端々からも感じられる。

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