“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士が映画『暁に祈れ』にガックリ「それより俺のYouTubeを見ろ!」

今年4月、アマチュア格闘技大会「THE OUTSIDER実験リーグ」に出場したときの瓜田(撮影=江森康之)

“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士(39)が森羅万象を批評する不定期連載。今回のテーマは、覚せい剤中毒になりタイの刑務所に投獄された後、ムエタイでのし上がることに成功したイギリス人ボクサーの自伝を映画化した『暁に祈れ』だ。自身もタイでの逮捕経験や覚せい剤での服役経験のほか、格闘技で更生した経験も持つ瓜田は、境遇が丸かぶりとも言えるこの映画を見て、何を思うのか? タイでの苦い思い出話も交えつつ感想を語ってもらった。

『暁に祈れ』は、世界的ベストセラーとなったビリー・ムーアの自伝小説を原作にした映画だ。イギリス人ボクサーのビリーは、タイで麻薬中毒になり、逮捕されてしまう。収監されたチェンマイの刑務所は、殺人、レイプ、汚職が横行する地獄のような場所だった。死と背中合わせの毎日を過ごすビリーだったが、所内でムエタイに出会うことによって、生きる希望を見出していく――。

 かつて刑務所として使われていた場所をロケ地に選び、服役経験のある素人を囚人役として起用するなどリアリティーにこだわったこの作品は、カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門で上映され、大きな反響を呼んだという。

 そうした前評判を聞いていた瓜田は、「これは絶対に見ておきたい! 主人公の境遇が、俺と近い気がするから」と言って意気揚々と映画館へ入っていったが、果たして満足できたのだろうか? 以下は、上映終了後のインタビューである。

 * * *

――いかがでしたか?

瓜田純士(以下、純士) うーん、あんまりかな……。目新しいことや予想外の展開が何もなかった感じ。ビリーの行動も想定内でした。ムショで体を鍛えて試合を迎えて……ってのも、俺でも当然そうするだろうと思ったし、シャブで捕まったのも自分に近いし、おまけにビリーのムエタイパンツまで俺の試合着に似てた(笑)。境遇が近いから共感できるかと思いきや、そうじゃなく、そりゃそうだろうよ、と思うことばかりで刺激不足でした。ビリーよりも、「ムショで3人殺した」と言ってた脇役の囚人に興味が湧いた。いっそのこと、あいつを主役にしたほうがよかったんじゃないでしょうか(笑)。

――格闘技の練習シーンで燃えませんでしたか?

純士 いや、そんなに。まったくの素人は騙せても、ちょっと格闘技をかじってる奴だったら、映画の中のビリーはそんなに過酷な練習をしてないことがわかるんで。

――ストーリー展開はいかがでしたか?

純士 どん底からのサクセスストーリーのつもりなんだろうけど、きっかけはただのブーシャ(覚せい剤)だろ(笑)。ムショの中でまで薬物を求めてるし、いちいち短気を起こすし、世話になったレディーボーイに嫉妬をするし……。金払いも悪いんだから、リンチされて当然だろ。おまけにラストで「ビリーは今も薬物と戦っている」って、まだやめてないのかよ! っていう(笑)。奴はすべてが未熟で中途半端なんですよ。

――実話ベースだから、そこらへんは正直に描いたのかも。

純士 ドキュメントとして見れば面白かったけど、せいぜい『世界まる見え!テレビ特捜部』(日本テレビ系)あたりで見るもんでしょう。1時間でよかったかな。2時間の映画にするほどのもんじゃない。この程度の話で簡単に映画になっちゃったら、ますます本人が調子に乗りますよ。俺はデビュー作の『ドブネズミのバラード』が売れたことで調子に乗って、全然更生しなかったですから(笑)。10年経ってようやく更生しましたけどね。

――一緒に映画をご覧になった奥様の感想はいかがでしょう?

瓜田麗子(以下、麗子) ウチは大満足でした! 主人公と純士の境遇が近いんで、感情移入しやすかった。ビリーが格闘技を頑張ってる姿を見てウルウルきました。純士は今ケガをして格闘技のジムに通えてへんから、映画を見て練習したいと思ったやろ? そう考えると余計に泣けてきた。短髪で色白やし、アウェイで頑張って這い上がっていく姿も純士とかぶって、グッときたわ。

純士 俺に惚れてるから感動しただけだろ(笑)。ただ、俺もいろいろと思い出しました。そもそも俺が本格的に筋トレや格闘技を始めた動機のひとつは、海外で捕まったときを想定してのことなんですよ。黄色人種でガリガリの体だと、海外のムショで裸になったときにナメられる。そうならないよう、体を嫌え始めた。だから、ビリーがムエタイに目覚めた心理は理解できました。ただ、ビリーと俺は似てるようで、実は決定的な違いがあるんですよ。その違いに萎えました。

――その違いとは?

純士 まず、金払い。俺は10年ほど前にタイでパクられたんですが、留置所の売店でタバコを買うとき、自分の分だけじゃなく、店員の分も買い与えていたんですよ。それが礼儀だし、チップ代わりだと思ってた。ところがビリーは金も払わずタバコを何度も店員にねだったりして、セコかったじゃないですか。

麗子 それはお金がなかったからや。

純士 まあ、それもそうか。俺は入国時にパクられたから、金を持ってたもんな。ただ、ビリーは結局、赤落ち(懲役・禁固の判決が確定)して、ムショに行くじゃないですか。ムショに入った人間は、2つのタイプに大別されます。悪魔に魂を売ってひたすら堕ちていくタイプと、聖書を読みながら更生を図るタイプ。実は前者のほうが、ラクなんですよ。映画の序盤から中盤にかけてのビリーはまさに前者で、誘惑に負けて、ラクなほうラクなほうに逃げてばかりいたじゃないですか。それが男として嫌だった。ダセえなこいつ、と。

――瓜田さんは、そうじゃなかったんですか?

純士 かつてはビリータイプだったんですが、今は昔の自分が大嫌いになって、すっかり性格が変わってしまってるんです。だから、ムエタイに目覚めるまでの自堕落なビリーを好きになれず、作品にもノレなかった。最初からすべての誘惑を断ち切って、ブレずにひたすらリングを目指す話だったら、今の俺でもノレたんでしょうけど。

麗子 あの人(映画の中の囚人)たちって、いろんな理由があって、底辺の底辺の底辺におるんでしょう。上流階級、中流階級、いろんな人がおると思うけど、どこの階級で生きるかは、やっぱ自分次第やなと強く思ったわ。最底辺から中流や上流にいくことも、生き方次第では可能やと思った。逆に、上流の人でも下の下のふるまいをしてたら最底辺に転落する。結局そういうことやねんな。

純士 下獄してからビリーはしばらく、動物のように生きちゃってた。「薬物が欲しい」「タバコが欲しい」なんて言わず、誇り高く生きてたら、同じ境遇でもワンランク上の扱いになってたはずなのに。

麗子 ちょっとした今の快楽だけを追ってると、あとで「あれ? 知らんうちに最悪なことになってしまってる。え、なんで?」という結果になりかねないから、やっぱ酒や麻薬はやらんほうがええな。一度しかない人生やのに、そんな風に時間を過ごすのはもったいない。

純士 ちょっと可哀想なのは、ビリーって単細胞なんだよね。もっと賢かったら、俺のようになれたのに。ヘヘヘ。

酒とタバコをやめて格闘技に没頭したことで、瓜田は更生に成功した(撮影=江森康之)
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