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マスコミをマスゴミにした『共犯者たち』は誰!? 元NHK・堀潤氏が語る権力とメディアとの関係

NHK退職後、フリーランスのジャーナリストとして活躍する堀潤氏。『共犯者たち』のチェ・スンホ監督が来日した際はぜひ取材したいと語る。

 マスメディアには権力を監視する役割があると言われるが、果たして本当だろうか? 籾井勝人NHK前会長が「政府が右と言ったものを左と言うわけにはいかない」と発言したことは記憶に新しい。テレビ朝日の看板番組『報道ステーション』は自民党から圧力を受け、番組プロデューサーが異動になったと言われている。マスメディアは権力にとても弱い存在ではないのかと思わざるを得ない。現在公開中のドキュメンタリー映画『共犯者たち』を観ると、その思いがいっそう強まる。

 韓国ではドキュメンタリー作品として異例のヒット作となった『共犯者たち』は、韓国の公共放送局KBSと公営放送局MBCで当時の大統領イ・ミョンパクに対して批判的な報道をしたニュース番組のスタッフたちが現場を追われた事件を追ったもの。局の経営陣は権力者寄りの人物に一新され、局員たちはストライキを行なうことで抵抗するが、ストライキ参加者は容赦なく解雇される。しかし、権力寄りとなった局は、2014年に起きた「セウォル号事件」で“全員救助”という大誤報を流してしまう。MBCを解雇された元プロデューサーのチェ・ホンス監督は独立系メディア「ニュース打破」を立ち上げ、メディアを腐敗させた“共犯者”たちをカメラで追い詰めていく──。

 日本唯一の公共放送であるNHKに2001年から2013年まで勤め、現在は市民投稿型ニュースサイト「8bitNews」を主宰しているジャーナリスト・堀潤氏はこの映画を観て、どのように感じただろうか。12月15日、ドキュメンタリー映画監督の森達也氏と共に行なったポレポレ東中野でのトークショーを終えた堀潤氏にコメントを求めた。

ドキュメンタリー映画『共犯者たち』より。MBCを解雇されたチェ・スンホ監督(画像左)は、マスコミをマスゴミにした加害者たちを追い詰める。

■日本と韓国では“共犯者たち”は異なる!?

──『共犯者たち』は韓国のテレビ局で起きた事件を追ったドキュメンタリーですが、堀さんはどのような感想をお持ちでしょうか?

堀 僕がNHKを辞めたのは2013年で、韓国の公共放送であるKBSがストライキを行なったのは2014年。「権力からの圧力を跳ね返して、公共放送としての使命をまっとうしたい」という彼らの声を聞いて、居ても立ってもいられなくなり、韓国まで取材に行ったんです。ストライキ中の舎内で組合の委員長や現場のディレクターたちから「公共放送は権力者のものではなく、市民一人ひとりのものなんだ」という熱い話が聞けてうれしかったですね。そんなふうに点として見ていた事件を、チェ・スンホ監督が時系列で追った作品にまとめたことで線として理解することができましたし、市民運動へと広がって面となっていく展開に引き込まれました。でも同時に日本の状況を省みると、不甲斐なさと寂しさも感じます。日本では事件や人物を興味本位で消費していくだけ。例えば、安田純平さんについてもマスメディアは自己責任論について論じるだけで、シリアの今の情勢を伝えようとか、安田さんを拉致した集団は何者だったのかということは検証しようとしない。視聴者が飽きてしまえば、それで終わり。『共犯者たち』と同じような事件が日本で起きた場合、そのことに異議を唱えない視聴者一人ひとりが“共犯者”ということになるんじゃないかとも思いましたね。

──『共犯者たち』では、韓国の権力者におもねるテレビ局の経営陣をマスコミをマスゴミに変えた“共犯者たち”と糾弾しているわけですが、堀さんは日本の状況に置き換えて観ていたわけですね。

堀 そうですね。権利とは与えられるものではなく、勝ち取るものなんだなということを改めて感じました。その意識がないと、ある意味で隷属関係と変わらないんじゃないかと。日本って、やっぱり“お上の文化”なんでしょうね。クビ切り民主主義なんて言います。何か問題が起きれば、責任者のクビを切って、それで一件落着。企業が問題を起こせば社長が変わり、政府が問題を起こせば政権が変わって、一件落着。問題の本質は変わらないままなので、問題が繰り返し起きてしまうんです。フランスではマクロン政権の燃料税引き上げに対して市民は暴動で抵抗していますが、日本人である僕らは秩序を維持することに価値をいちばん感じているのかもしれません。体制を維持するためなら、個人の権利さえも差し出してしまう文化が封建時代から根づいているように感じます。終戦の際も“国体護持”が最優先されたわけです。原発事故から7年が経つのに、今もまだ被災民は10万人以上いる。そのことを伝えるメディアもすっかり減りました。五輪や万博を誘致して浮かれるよりも前に、私たちの税金を使う先はあるはずなのに、おかしいですよ。福島で起きたことをもう忘れたんじゃなくて、もともと他人の幸せには興味がないんでしょう。そんなことを考えると虚しくなるんですが、そうじゃないものを探し出すことが僕の取材のモチベーションになっているんです。

政府の傀儡となったテレビ局の上層部に退陣を迫る局員たち。彼らの反撃は、やがて「ろうそく革命」と結びつくことに。

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