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番組絡みの企画盤CD全盛期の90年代、”音楽デュオ”猿岩石はなぜ売れた?

 そして猿岩石は、97年の末にはクリスマスソング「Christmas」を出している。LUNA SEAの河村隆一が作曲したラブバラードである。

 とまあ、短い間に音楽面でも意外といろいろなアプローチをしているのだな……とは思うが、どちらかというと、セールスが少しずつ下がるにつれて迷走していってる、と言ったほうが正しいか。まあ、もともと音楽的な下地がない人たちが、最初は自分たちにフィットする歌が歌えたとはいえ、以降にそんなにたくさんの引き出しがあるわけがない。

 で、このCDのリリース・ラッシュは98年6月のシングル「初恋」まで続く。なんと1年半で9枚ものシングルを出したのだ。そりゃネタも尽きるだろう。

 そして最後のシングルは99年、次の10枚目「My Revolution」(渡辺美里のカバー)までだった。彼らの音楽での人気も、ここまでだったということか。

 この数年後の04年に猿岩石は解散し、有吉は長い低迷期に入ることとなる。しかし、再ブレーク後の彼の活躍は、言わずもがなだろう。

 かたや、相方の森脇は芸能界とは別の仕事を転々としながら、一昨年にタレントとして復帰していた。YouTubeには今の彼が作るチャンネルも開設されている。ただ、現在の活動ぶりは……どうなのだろう。

 と、音楽デュオとしての猿岩石をざっと回想してみたが、とにかく「人気があるうちに売ってしまおう」感のすごさにはあきれるばかりだ。なにせ、この短気間の彼らはCDだけでなく、『電波少年』関連の本やタレント本、それに写真集まで出しているのだから。

『電波少年』の系列からは猿岩石のほかにも、番組の内容に関連したCDがけっこう出ている。この後には『雷波少年』からヒットを飛ばしたサムシングエルスというバンドもいた(元から音楽活動をしていた人たちだが)。ただ、彼らも一時的な盛り上がり感が強く、やはりはやり廃りが反映されやすいテレビ界の影響をもろに受けている。

 もっとも、この90年代の終わり頃……つまりCDがよく売れていた時期までは、俳優やタレント、スポーツ選手など、そこそこ名の知れた人はよく歌手デビューしていて、テレビとか、それにラジオも、番組絡みの企画盤は非常に多かった。そのぐらい電波メディアの影響力が大きい時代だったわけだが、猿岩石はその中で傑出した成果を残したといえる。

 ただ、あだ名をつけるのがうまいとか、毒舌がすごいとか、その他もろもろ、有吉が今ほどのキレ者で、才能のある人だとは、当時なんとなく観ていただけの僕はまったく気づかなかった。もちろん、コンビ解散後の時期に彼が芸を磨いたのはあるのだろうけど……人生はわからないものだ。

 そして先が見えない気持ちを歌で唄っていた2人だが、今では芸人としての活動ぶりが、こんなにも違うというところにも、また人生を感じてしまった次第である。

●あおき・ゆう。
1966年、島根県生まれ。男。
94年、持ち込みをきっかけに音楽ジャーナリスト/ ライター業を開始。
洋邦のロック/ポップスを中心に執筆。
現在は雑誌『音楽と人』『テレビブロス』『コンフィデンス』『 ビートルズ・ストーリー』『昭和40年男』、
音楽情報サイト「リアルサウンド」「DI:GA online」等に寄稿。
阪神タイガース、ゲッターロボ、白バラコーヒー、ロミーナ、 出前一丁を愛し続ける。
妻子あり。
Twitterアカウントは、@you_aoki
 

最終更新:2019/01/25 14:00
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