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『さすらい温泉 遠藤憲一』つげ義春も通った北温泉旅館 天狗の鼻に弄ばれる山口紗弥加がエロすぎた!

■天狗姿で夜這いする健さん

 ここで我らが健さんが一肌脱ぐ。毎度恒例、唯一持参した古ぼけた小さなトランクから、なぜか出てくる、その時に必要な「こんなものまで持ってきてたの?」的な衣装が今回も登場。

 深夜、艶口が目を覚ますと布団の上に覆いかぶさっていたのは、いかつい真っ赤な天狗。

 しかもよく見ると天狗の顔はお面でなく、艶口を射抜くように伸びた鼻とぼうぼうの眉毛以外は、健さんの地肌。肌を真っ赤に塗っているのだ。普通にとても怖い。黒光りならぬ赤光りする肌の男が暗い部屋で自分にまたがり、無言で見つめてくるのだ。『水曜日のダウンタウン』(TBS系)でやりそうなドッキリだが、実際は死ぬほど怖いはず。

 ここで、男根のごとく伸びた鼻で艶口の輪郭を焦らすように撫で始めるエロ天狗。さらにその鼻は艶口の桃のごとき2つの膨らみをなぞり、そしてその下の秘境へと這い降りる。

 顎を突き上げ、身悶えしながら吐息を漏らす艶口。そして、散々喘いだあとに「……健さん?」と、ようやく気づく。得体の知れないUMA相手に、あんなに感じていたのが逆に凄い。この時、健さんの本当の「鼻」は固くなっていたのだろうか?

 さらに健さん天狗は「鼻を触って」と真顔で指示。ウイスパーボイスで、とんちんかんなことを言う面白さ。

 しかも隠語ではなく、まんま鼻(作り物)を触ってという意味。上の鼻だが、それでもエロい。だが、それすら触れない艶口を天狗が説き伏せる。

「恐れずに」

「……これでいいの?」

「それでいい!!」

 ど、どれ??

 私の声はもちろん二人には届かない。

 ここで健さん天狗は、官能小説の一節のように今の状況を語れと艶口に指示。

「私はその屹立した天狗の鼻にそっと触れた。逞しく猛々しい天狗に鼻に指を這わせる。今までの恐れは消え、愛おしさすら覚え始めていた……」

 この時「素晴らしい」と喜ぶ天狗の口元が緩み、中から白い歯がずらりと現れるのだが、ものすごく怖かった。

 薄暗い部屋の中で、そこにある何よりも明るく光る歯。艶口の肌より白い生々しい輝き。長く伸びた鼻なんかよりよっぽど怖い。

 絶頂に達したように深い呼吸をした艶口がゆっくり目を開けると、もはや天狗の姿はどこにもなかった。翌日、憑き物が取れたようにすっきりした顔で旅館を後にする艶口。

「今度はゆっくりサービスしてあげるから」と、いたずらに笑う姿は、今までと違っていた。

 

■第2話に感じた、つげ義春的世界

 今回は、前回のお人好しな「寅さん」的雰囲気ではなく、不安定な場所に迷い込んだ「つげ義春」的空気を強く感じた。

 そもそもこの北温泉旅館は、つげのお気に入りで、何度も足を運んだり作品にも登場させたりしている「ゆかりの地」。

 しかも映画『無能の人』(1991)にも登場していた「かんべちゃん」こと神戸浩が、今回謎のキャラで物語内を徘徊しており、これが余計に「つげ」感を増幅していた。

 最近では映画の『テルマエ・ロマエ』(2012)で上戸彩の実家として登場したりして観光客が増えたためか、脱衣所や通路が綺麗になったりして、一部の人からやや残念がられているが、それでも世間から取り残されたような存在感は健在。

 同じテレ東の深夜ドラマ『日本ボロ宿紀行』では味のあるB級宿泊施設を愛情を込めて「ボロ宿」と呼んでいるが、それに通じる愛され方をしている。

 このドラマを見ると温泉に入りたくなるのはもちろんなのだが、入ったかのようなリフレッシュ感も味わえる。

 平日深夜の30分で気軽に味わえる極小旅行として、これからの回も期待したい。
(文=柿田太郎)

最終更新:2019/01/30 19:30
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