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『さすらい温泉』故・佐々木すみ江の最期の仕事に……『花男』『ふぞろい』にも負けない仕事ぶりが光る

テレビ東京系『さすらい温泉 遠藤憲一』番組公式サイトより

 遠藤憲一が役者を引退する決意で温泉宿の仲居になり、そこで出会った人々のために一肌脱ぐ。そんなパラレルワールドを見せてくれるドキュメンタリー風の人情温泉ドラマ『さすらい温泉 遠藤憲一』(テレビ東京系)。まさに、この記事の執筆中に、第5話のマドンナである佐々木すみ江さんの訃報が届いた。

 亡くなったから言うわけではなく、凛とした芯の通った演技でドラマ全体を引っ張っていただけにとても驚いた。佐々木すみ江の活躍を中心に、第5話を振り返ります。

(前回までのレビューはこちらから)

■一人で銀行から金を下ろせない遠藤憲一

 今回も遠藤のリアルな人となりを同級生や事務所スタッフから聞き出すインタビューから番組はスタート。

 今回は遠藤は一人では銀行からお金を下ろせないことが暴露される。

 そうなってくると、バスの予約なども一人ではできなそうな気がするので、どうやって毎回各地の温泉に移動しているのか考えてしまう。

 そんな遠藤がやってきたのは、群馬と新潟の県境にある法師温泉。温泉界ではレジェンドと言ってもいいほどの温泉だ。

 ちなみに番組内でも軽く触れていたが、かの田中角栄は法師温泉のすぐ横の三国峠をダイナマイトで吹っ飛ばし、その土砂で日本海を埋め立て佐渡島まで歩いて行けるようにすると新人時代の選挙演説で語っていた。実現していたら法師温泉のお湯も途絶えていたかもしれないので、実行されなくて何より。

■死を覚悟した旅行者役を熱演した佐々木

 この温泉で出会った宿泊客が佐々木すみ江演じる笠木澄恵。

 戦争に行ったまま戻らない、かつての許嫁との想い出を振り返りに、一人で来ているという。

 健さん(遠藤は派遣仲居のときは中井田健一と名乗っている)がその許嫁に似ているらしく、健さんに出会った瞬間の驚き→喜び→恥じらいと変わる佐々木演じる笠木の表情の変化が素晴らしい。しばらく無言なのに、画がじつに持つ。ここから一気に笠木の存在感に引き込まれる。

 その許嫁と、かつて笠木が泊まった宿が今回の舞台である法師温泉・長寿館で、その滞在の直後、召集令状が届き、そのまま彼は戻ってこなかったという。

 今は結婚し、孫までいて幸せだと語る笠木だが、祝言すら挙げられぬまま引きちぎられるような形で想い出もろとも戦争に奪われてしまった、かつての許嫁の存在は今でも大きいようだ。

 笠木が死を目前に控えたステージ4の末期の膵臓がんであることを知った健さんは、悩みながらも笠木の願い通り、もう一泊、笠木のケアをすることに。

 そして今回も、あのなんでも出てくる四次元トランクを開く時が。

 出てきたのは想い出の写真に写る許嫁と同じ軍服。

 それを着て枕元に立つ健さんが笠木に語りかける。驚きながらも、それを許嫁の「加瀬清次(清さん)」として受け入れる笠木。

「久しぶり」

「お久しぶりです」

「よくまたここにきてくれたね」

「ずいぶん時間が経っちゃいましたけど……」

 夢だと思っていたのかもしれないが、逢えぬはずの人に逢える喜びは、ひとしおだろう。

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