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『ヒプノシスマイク』コミカライズに傷心のオタクはどう立ち直ればいいのか?~心理学の名著を読み解く~

文=石徹白未亜

『ヒプノシスマイク』コミカライズに傷心のオタクはどう立ち直ればいいのか?~心理学の名著を読み解く~の画像1
CDはコミックとバーター販売されてしまうようだ/『CD付き ヒプノシスマイク -Before The Battle- The Dirty Dawg(1)限定版講談社キャラクターズA) 』より

 今世の中の空気は「好きなものがある人が勝ち組」ムードがあり、日陰の身だったはずのオタクに追い風が吹いている。しかしそんな時代に乗ってイキれるはずのオタク趣味とて案外盤石ではない。推しが結婚、交際発覚、解散、活動休止、ヘビーなものではAV出演疑惑すらあったのも記憶に新しい。そして二次元だと「推しが死ぬ」すらジャンルによってはわりと頻繁だ。では、そのような事態で心に傷を負ったオタクは心をどう慰めればいいのだろうか。著者もラッププロジェクト『ヒプノシスマイク』(以下、ヒプマイ)のコミカライズの内容にひどく落ち込んでいるので、心理学権威の歴史的名著に救いを求めてみることにした。

 

イケてない脚本を書くのはバイトテロの5000億倍重罪だ

 ヒプマイで何があったか知らないという人は、前回の記事(コミカライズが物議の『ヒプノシスマイク』、同人イベントはお通夜か、はたまた大盛況だったのか?)に概要を書いているのでそちらを参考にしていただきたい。一言でいえば「一年以上絞った供給でファンを悶えさせてきた中で、いざ出てきた百瀬祐一郎氏によるコミカライズがかなりヤバい(ダメな方で)」だ。ちなみにこちらは、初稿提出時に担当編集氏より「殺意が強い」という理由で修正の要請があり一部をマイルドにリライトした経緯がある。サイゾーらしからぬ、ちょっといい話だ。

 前回原稿から1カ月強、今はTwitterで「ヒプマイ」と検索すると「降りる」と検索候補に出てくる始末だ。そこでは降りる人の断末魔、そして降りるやつはガタガタ言わず黙って降りろ、そしてさらに黙って降りろっていうやつは何様のつもりだ、と飛び交う世紀末世界の様相を示している。悲しいのは、これらの人たちも少なくとも半年くらい前までは皆、ヒプマイをただ楽しんでいただけだったのだ。

 降りる人のつぶやきを見ると、コミカライズだけでなく運営の体制など複合要因で心が折れた人もいるようだが、私の場合は揺るぎなく原因は100%コミカライズにあり、コミカライズ以外は今も好きだ。キャラクターデザインも声優も曲もいい。だからこそやるせなく、腹をえぐられ丹田に力の入らない日々が続いている。

 脚本がアレなとき、悲しみにくれたオタクはその脚本家がベテランであれば「老害」、女性であれば「寝て取った仕事だ」と傷ついた心を慰める。単なる誹謗中傷でありひどい話なのだが、クソ脚本で視聴者を傷つけた罪は重い。

 しかしおそらく百瀬氏は、ググるかぎり「そんな年でもない(おそらく若い)男性」と思われる。Amazonを見るとヒプマイ以前に百瀬氏は1シリーズの小説を2冊出しているのみで、キャリアが長いわけでもないように見える。よって「老害」ではないし「枕」も考えにくい。しかし傷つけられたオタクは決してあきらめない。今「コネなんじゃないか」という百瀬プリンス疑惑もネット上でささやかれているのだ。

 言うまでもないが確たる証拠もない臆測であり、ひどい話だ。しかし「期待された仕事をしないどころか、本人が一番ウケているのであろう笑えない冗談をかます」という点において、百瀬氏はバイトテロキッズ達を束にしても成し遂げられないインパクトをコミカライズの一発目ですでに成し遂げたのであり、このあたりの力量はさすがそのへんの民草には出せないプリンスの貫禄と言える。問題のコミカライズがCDとなぜかバーター販売されるのも「コミックスを単体で販売すると、売り上げが低迷してしまい若様が意気消沈なされるのではないか」という運営のじいやたちの忖度なのだろうかとゲスパーは尽きない(※臆測です)。

 

悲しみから立ち直るための名著『対象喪失 悲しむということ』

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『対象喪失 悲しむということ』(中公新書)

 以上、百瀬氏の悪口を述べてきたが、なにも百瀬氏に限らず、他人や他人が作ったものを愛し崇めるオタク活動は失望と隣り合わせという宿命を背負っている。それでは愛した対象に失望し、傷ついてしまったときにオタクは一体どうすればいいのか。ここで手に取ったのが、小此木(おこのぎ)啓吾氏による書籍『対象喪失 悲しむということ』(中公新書)だ。

 小此木氏は精神科医であり、また椎名林檎によって広く浸透した「モラトリアム」という言葉の産みの親でもある。1979年の本だが指摘される心の問題にまったく古さはない。本書ではさまざまな喪失の臨床例が出てくるが、何も死別だけでなく、離婚や失恋、仕事上の失敗、志望校に入学できなかったり、一方で進学校に入学できたが目標を失ったり、年老いて若さと活動力と健康を失ったり、などさまざまな人々の喪失が紹介されている。最後には自分自身をも失う一生は喪失の連続なのだ。

 本書では、喪失体験の対処として、そこから目をそらすことでもなく、日常生活で紛らわすのでもなく、効いてないぜ? と茶化すのでもなく、怒りに任せ誰かに八つ当たりするのでもなく、過去を必要以上に良くも悪くも脚色することでもなく、喪失に無自覚なまま無気力に日々を過ごすのでもなく、喪失体験をした自分と向き合い続け、消化し、落とし込むことが喪失体験を乗り越えるために必要だとある。その「悲しむ」という行為を怖い、重い、辛い、面倒くさいとないがしろにし続けた人たちが数年後、数十年後、心身に不調をきたすケースがいくつも紹介されている。

 よって、ヒプマイの百瀬氏の脚本にガックリした私がするべきことは、この喪失をちゃんと弔うことなのだ。

 以下が私のした弔いの試行錯誤と、あとから考えてみての考察になる。

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