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【wezzy】

ジャニー喜多川氏の少年たちへの性虐待を認めた東京高裁判決は、永久に黙殺されるのか

 7月9日にジャニーズ事務所の代表取締役であるジャニー喜多川氏が亡くなり、事務所からの知らせを受けてテレビ、新聞、ネットニュースはいっせいにその死を報じた。ジャニー喜多川氏の生前の功績を振り返る特集を組むメディアも多い。

 ジャニー喜多川氏が新人発掘やプロデュースにおいて類い稀な才能をもち、多くの人気グループを世に送り出したのは紛れもない事実である。日本芸能界のショービジネスを発展させた功労者であり、男性アイドル文化を築いた。

 その功績を振り返り、称える企画は当然あってしかるべきだ。しかし同時に、故人の負の側面を報じることは憚られるのが日本文化なのだろうか。それともジャニーズ事務所との関係を考えたメディア側が配慮しているか……。

「ニューヨーク・タイムズ」「BBCニュース」の報道
 海外メディアでは、ジャニー氏の訃報を伝える記事で裁判についてはっきり記している。2019年9月9日付ネットニュース版「ニューヨーク・タイムズ」に掲載されたジャニー氏の訃報を伝える記事にはこのように書かれている。

<2002年、東京地方裁判所は、所属する若いタレントたちへのセクシャルハラスメントを報じた週刊誌が名誉棄損であるとの喜多川の主張を支持したが、その後、裁判所は判決の一部を覆した>(編集部訳、以下同)

 同じ日のネットニュース版「BBCニュース」でも同様だった。

<彼のキャリアは論争と無縁ではなかった。1999年、日本の雑誌「週刊文春」が事務所の少年たちに対して性的虐待を加えている記事を何度も掲載したのだ。喜多川はすべての告発を否定。そして、雑誌を相手どった名誉毀損の裁判を起こし勝利した。しかし、その後、裁判所は判決の一部を覆した。彼はどの告発に関しても罪に問われることはなかった>

「週刊文春」が報じたジャニー氏のセクハラとは
 ジャニー氏の性的虐待疑惑については、タレントたちが暴露本で告発してきた。

 元フォーリーブスの北公次による『光GENJIへ』(データハウス)、元ジャニーズの中谷良『ジャニーズの逆襲』(データハウス)、平本淳也『ジャニーズのすべて 少年愛の館』(鹿砦社)、豊川誕『ひとりぼっちの旅立ち』(鹿砦社)、そして、2005年には光GENJIの候補メンバーだった木山将吾による『Smapへ――そして、すべてのジャニーズタレントへ』(鹿砦社)と、何冊も暴露本が出版されている。

 

 だがすべては“公然の秘密”のままだった。しかし、「週刊文春」は1999年から2000年にかけ、10回以上におよぶ追及記事を掲載した。

 記事によれば、「合宿所」と呼ばれているジャニー氏の自宅や、コンサート先のホテルにジュニアのメンバーが宿泊する際、夜中になるとジャニー氏が夜這いをしかけてきて、そのまま肉体関係を強要するのだという。

 ジャニー氏はほとんど同じ手口で何人ものジュニアのメンバーに関係を迫った。「週刊文春」の追及記事では、複数の少年が同様の被害を語っている。

 ジャニー氏は翌朝になると必ず数万円単位のお小遣いを渡すというが、少年たちが肉体関係に応じたのは、そんなはした金のためではない。

 ジャニー氏の要求を断れば、事務所内での自分の立ち位置が悪くなったり、グループとしてデビューさせてもらえないかもしれないという恐怖があるからだ。実際、記事ではジャニー氏との関係を拒絶したことによって口をきいてもらえなくなった例も記されている。

 ジャニーズ事務所のタレントとして成功したければ、どんな理不尽なハラスメントであろうとも、歯を食いしばって耐えるしかない。「週刊文春」は、ジャニー氏のハラスメント自体はもちろん、こうした権力構造そのものを、記事のなかで何度も繰り返し批判していた。

東京高裁はジャニー氏のセクハラを事実と認定
 これに対しジャニーズ事務所とジャニー氏は、キャンペーン記事によって名誉を毀損されたとして東京地裁に民事訴訟を起こした。

 一審ではジャニーズ側の勝訴となったのだが、二審ではセクハラ行為の部分は事実であると認定して損害賠償額が減額された。

 「週刊文春」によれば、控訴審判決のなかで東京高裁は<喜多川が少年らに対しセクハラ行為をしたとの各証言はこれを信用することができ、喜多川が少年達が逆らえばステージの立ち位置が悪くなったり、デビューできなくなるという抗拒不能な状態にあるのに乗じ、セクハラ行為をしているとの本件記事は、その重要な部分について真実であることの証明があった>と結論づけたという。

 この後、ジャニーズ側は上告したが棄却された。結果的に、名誉毀損自体は認められたが、それは「合宿所のなかで少年らに飲酒や喫煙をさせている」といった記述に対するものであり、ジャニー氏のセクシャルハラスメント自体は事実と認定されたのである。

 

 しかし、「週刊文春」記事やこの裁判について、日本国内の主要メディアは黙殺した。マスメディアは総出で少年への性虐待を見ないようにし、ジャニー氏の行為は糾弾されることも罰されることもなかった。こうした日本メディアの「圧力に屈する」「権力に忖度する」といった構図がジャニーズタブーをつくりだし、結果的に、少年たちの心に一生残るような傷を残す非道な行為がまかり通る環境を生み出してしまった。

 これもジャニーズ事務所への忖度が必要ない海外メディアは別であり、2000年1月30日付「ニューヨーク・タイムズ」では、ジャニー氏の性的虐待のみならず、強大な力をもつジャニーズ事務所に屈服してジャニー氏に関するネガティブな報道ができない日本のメディア状況も含めて報道された。

メディアの「ジャニーズタブー」が悲劇を生んだ
 先に紹介した「BBCニュース」のジャニー氏訃報記事では、やはりこんな記述がある。

<彼の事務所は業界を支配していたため、ジャニー喜多川には誰も触れることができず、あえて強大な事務所を脅かそうとする日本の主要メディアはいなかった>

 もちろん、亡くなってすぐに故人に対する批判を行うのは不謹慎であるという感情論も理解できなくはない。

 しかし、たとえば、今年3月に亡くなった萩原健一の訃報を伝える際には、俳優・ミュージシャンとしての功績のみならず、大麻取締法違反、飲酒運転、出演料をめぐる恐喝未遂容疑といった、過去の逮捕歴も同時に報道するメディアが多かった。

 であれば、ジャニー氏の訃報を伝える際、男性アイドルの市場を盛り上げた功績だけでなく、その裏で確かに起きていた性虐待に言及するのもメディアとして当然の責務なのではないだろうか。

最終更新:2019/07/14 07:15
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