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揺らぐニセモノとホンモノの境界線【1】

GUCCIが偽ブランド品をサンプリング! “ブート・クチュール”の複雑化する最尖端

DO NOT DOによる硬貨を模したペンダントやリング。いずれも参考商品。問い合わせ先:http://do-not-do.com(写真:小濱晴美)

 通貨偽造罪はともかく、「例えばブランドのロゴを商標権者の許可なく使って商品を販売すれば、日本法では商標権侵害となる」と弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤康二弁護士は話す。

「商標は、商標となるロゴやマークなどと、その用途となる商品やサービスである指定商品・指定役務がセットで登録されています。例えば、あるブランドが『衣料品にこのロゴを使用する』と登録した場合、別の事業者が衣料品やこれに類する商品に勝手に同じロゴを使用することは商標権侵害に。この場合、権利者は当該侵害行為を行う者に、商標の使用差止めや損害賠償を求めることができます。また、こうした商標権侵害が組織的・営利的に行われるなど悪質なケースであれば、民事とは別に刑事事件として立件されることも。仮に刑事事件で起訴されて有罪となれば、その行為類型にもよりますが、もっとも重い場合は10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金刑、またはその併科となる可能性があります(法人が併せて処罰される場合の罰金額は、最大3億円とされています)。このような商標権侵害については、販売行為だけでなく、販売目的で所持・譲渡する場合も取り扱いは同様」(梅澤氏)

 また、ロゴを改変した場合には、著作権侵害に当たる可能性もあるという。

「個人的な趣味の範囲内で著作物であるロゴにアレンジを加える程度であれば、これが権利侵害となるかは別として、ことさら責任追及を受ける可能性は高くないかもしれません。しかし、企業側はブランド価値の維持のために、ロゴやマークの権利にある程度のコストをかけているのが通常。そのため、『単なるオマージュだから』と気軽にタダ乗りして販売利益を得ることを是認すると、企業はそうしたコストをかけることに躊躇し、登録を前提とする商標制度自体が崩壊するかもしれません。そのため、“オマージュ”という理由は権利侵害を正当化する理由にはなり得ないでしょう。なお、インターネットが発達した現代では、グレーゾーンと思える事象も。例えばブート・クチュールを着た姿をSNSに投稿することなどがあり得ます。こうした行為が商標の使用、そのほか商標権侵害行為となるかは慎重な判断を要すると思われます。他方で、ブート・クチュールを着た投稿で“オシャレな人”として知名度を得た上で、別の営利行為につなげるケースも考えられるので、これを規制の対象外と言い切るのもどうかと思います」(同)

Tsuwoopのインスタグラムに上げられていたビリー・アイリッシュの写真。

 なお、日本では18年7月、アメリカで買い付けたグッチやシャネルなどの古着のブート品59点を、販売目的で所持していた古着店の店主ら2人が逮捕されている。警視庁によると、約3年前から古着店においてブート品の販売が目立つようになったという。とはいえ、ブランド側はパクられるばかりでなく、パクることもある。

「もともと、ファッション業界は引用に対して寛容でした。アートや建築からの引用は一般的な商法ですし、近年は“文化の盗用”という言葉で批判されることも多くなっていますが、少数部族の民族衣装を取り入れることも多かった。また、業界内では“抜く”という隠語で、優れたブランドの洋服のパターン(設計図)をそのままパクるということも公然と行われていました。18年に日本のブランドのザ・リラクスが、同社が販売するモッズコートをZARAが模倣して販売したとしてザラ・ジャパンを提訴し、ザラが敗訴することがありましたが、この事例は“抜く”という行為が違法であることを認めた画期的な判決だったと思います」(同氏)

 ただ、ファッションにおいて偽物、ブート、オマージュ、サンプリング……といった分類の境界線はやはり見えづらいところがある。また、ここまで見てきたように、オリジナルがブート(的表現)をさらにサンプリングしたりする複雑な状況にもなっている。その上、個人レベルの創作物もSNSで簡単に発信できる今、新たなグレーゾーンが生じ、問題は一層ややこしくなっているため、この先、ブート・クチュールの定義と意義がまた変化していくのかもしれない。(月刊サイゾー6月号『令和時代の(新)タブー』より

(写真:1枚目、5枚目/小濱晴美)

(スタイリング:画像1枚目のキャップ、5枚目のジュエリー/小山田孝司)

最終更新:2019/07/28 10:00
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