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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.542

大川周明の被告席での奇行はすべて狂言だった? 4時間半の超弩級ドキュメンタリー『東京裁判』

東條英機ら28人のA級戦犯が裁かれた「東京裁判」。戦争責任を個人に負わせることの法的な適否については、今も疑問として残る。

 日本はなぜ太平洋戦争へと雪崩れ込み、そしてどのようにして敗戦を迎え、米国主導による戦後処理が進んだのか。アジアの歴史、欧米の情勢、日本の内情など、さまざまな視点からの洞察を必要とする問題だ。この難問に明快に答えてくれるのが、上映時間4時間37分の超弩級ドキュメンタリー映画『東京裁判』(83)である。『切腹』(62)や『上意討ち 拝領妻始末』(67)など、封建時代から続く日本社会独特の組織と個人との軋轢をテーマに劇映画を撮り続けてきた巨匠・小林正樹監督が、5年の歳月を費やして完成させた渾身作となっている。

 アジア太平洋戦争における日本の戦争責任を連合国軍側が裁いた「極東国際軍事裁判」、通称「東京裁判」は、1946年5月から48年11月まで東京・市ヶ谷の旧陸軍省参謀本部(現在の自衛隊市ヶ谷駐屯地)で行われた。裁判記録は米国の国防総省に機密資料として保管されていたが、73年になって解禁。170時間に及ぶ膨大な記録フィルムを入手した講談社が、創立70周年記念事業として東京裁判のドキュメンタリー映画を企画した。

 最初に白羽の矢が向けられたのは黒澤明監督だったが、「僕よりも適任者がいる」と推薦したのは、東京裁判の劇映画化の準備を進めていたものの、途方もない製作費になるために暗礁に乗り上げていた小林監督だった。ソ連と満州国との国境警備などの従軍体験を持つ小林監督は資料映像を的確にまとめ上げ、4時間37分の上映時間があっという間に感じられるという神業級の編集ぶりを見せる。83年の初公開時、国内外で大反響を呼んだ『東京裁判』が4Kデジタルリマスター化され、令和初の終戦記念日を控え、再び劇場公開されることになった。

 情報量の多い『東京裁判』ゆえに、時間を経て見直すことで新しい発見がいろいろとある。興行的には難しいと思われていた『東京裁判』の製作にGOサインを出した当時の講談社・野間惟道社長は、実は陸軍大将・阿南惟幾の五男だった。映画『日本のいちばん長い日』(15)などでも知られているように、太平洋戦争末期に陸軍大臣を務めた阿南大将は8月15日に割腹自決を遂げた。戦争責任を負って自決した父の魂を慰霊するための映画だったともいえるだろう。

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