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『べしゃり暮らし』が貫いた「アドリブ>台本」の価値観は是か非か――主人公の天才性は最後まで伝わらずじまい

とにかく原作を読んでほしい

 決勝のべしゃり暮らしの漫才は途中で回想シーンに切り替わり、別のコンビの漫才映像が順々に挟み込まれるという演出が施された。ライバルのネタの要素を自らの漫才に取り入れ(ねずみ花火が蕎麦屋「きそば上妻」を揶揄した要素さえ入れ込んだ)、そのネタが全8話分のストーリーとリンクする流れは原作にはなかったドラマオリジナルのものだ。これはこれで良かったと思う。

 持ち時間を4分もオーバーしてしまった間宮と渡辺は「あかんわ、絶対落ちたわ!」と爆笑する。勝ち負けで一喜一憂していた割に「俺たちの芸人人生はこれからだ」的な態度でいられるのにはモヤッとしたが、それより、まずは自分たちが満足できるネタをすることが大事と訴えたかったのかもしれない。内心は不服なのに、賞レース用のネタをおろすコンビは実際にいる。しかし、このドラマは「自分たちが面白いと思えてこそ」の価値観を提示した。この点は有意義だった。

 結局、このドラマは“芸人もの”というより“青春もの”として仕上がった印象がある。もしも、ドラマで初めて『べしゃり暮らし』に触れたという人は、一度でもいいから原作を読んでほしい。ドラマ『べしゃり暮らし』は、原作の粗いダイジェスト版のような様相を呈していた。

(文=寺西ジャジューカ)

最終更新:2019/09/18 18:00
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