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『べしゃり暮らし』が貫いた「アドリブ>台本」の価値観は是か非か――主人公の天才性は最後まで伝わらずじまい

貫かれる「アドリブ>台本」という価値観

 ドラマ『べしゃり暮らし』は「アドリブ>台本」という設定を頑なに貫き続けた。もちろん、すべての芸人に当てはまるものではなく、べしゃり暮らしの2人に限った設定なのだが。ここに、役者が演じる芸人ドラマのジレンマが集約されていた。アドリブが炸裂し、ドッとウケる劇中の漫才が実際はさほど面白くなく、どうしてもアドリブの素晴らしさが実感できなかったのだ。

 正直、間宮の芸人としての魅力、才能は最後まで伝わってこなかった。全8話の中でデジタルきんぎょやニップレスの成長は窺えたのに、間宮と渡辺からは確固たる成長が感じられずじまい。というか、そもそもそれは描かれていなかったように思う。間宮の天才性が伝わってきていないのに、そんな漫才師がアドリブでドンドン勝ち進んでいく様を見るのは、正直つらかった。

 また、アドリブを推奨したような形になっているのも現実離れしている。事実、8話では養成所の講師の本家爆笑王(山口祥行)から「会話はアドリブでも流れに沿って落とすべきところでしっかり落とせ」と注意されていたが、結局はネタ合わせできずにアドリブで漫才に臨み、べしゃり暮らしはウケをとった。完全燃焼した2人の充実の姿がこのドラマの大団円だ。元ハリガネロックのユウキロックは最終話の1週前の9月8日にこんなツイートを発信している。

「講師をしているので『べしゃり暮らし』を観ている。講師をしているので『アドリブ』を推奨するのは困る。来週最終回。1日100回くらい練習するシーンがありコンテストで優勝。間宮『やっぱり練習って大事だよなー』というまさかの一言でエンディングを望む。講師をしているので」

 というか、そもそも論として、べしゃり暮らしの漫才のどの箇所がアドリブなのかよくわからなかった。客席にいる土屋奈々(堀田真由)と子安蒼太(矢本悠馬)の「これってネタ?」「いや、アドリブだと思う」というやり取りが挟み込まれ、ようやく「あ、アドリブなのか」と察することができる程度。境目がわかりにくいし、これではすごさが実感できない。

キーパーソンであり続けた駿河太郎

 ドラマには、すべての役柄が必要な存在として描かれる作品と、あらすじを説明するためだけの役を配する作品の2通りあるが、『べしゃり暮らし』は完全に後者だ。矢本も堀田もストーリーに必要な役柄として存在していなかったと思う。

 では、間宮&渡辺のサポート役として誰が大きな存在感を示したかというと駿河だ。最終話では「藤川の何見てきてんねん!」と怒りを爆発させることで渡辺を諭し、会場へ送り出す優しさを見せた。同じ芸人の立場から湧き出る怒り、そして先輩としての度量を、駿河は見事に演じ切った。漫才シーンも、デジタルきんぎょの掛け合いは他コンビと比べて圧倒的に良かった。力のあるバイプレーヤーとして、今後より一層活躍するのでは? という期待感が駿河にはある。

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