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炎上した『あいちトリエンナーレ表現の不自由展』の裏側で、参加作家が対応する「コールセンター」が見た希望

撮影/蓮沼昌宏

 今年開催された国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』に出店された『表現の不自由展・その後』(以下、不自由展)は、国民的な議論を呼んだ。

 各地の美術館で展示拒否の憂き目にあった作品を集めたこの展示。中でも、「昭和天皇の肖像写真を燃やした」映像を使った大浦信行の『遠近を抱えて part2』や、従軍慰安婦をモチーフにした『平和の少女像』に対しては、日本への「ヘイト作品」として非難の声が上がった。

 では、この騒動に巻き込まれる形となった他の参加アーティストは、どんな目線で、現場を見ていたのだろうか。

 今回のあいちトリエンナーレに参加作家としてクレジットされていた演出家の高山明氏は、これまで、宗教施設、モニュメント、難民収容施設跡地などをめぐりアジアと東京との知られざる関係を可視化する『東京ヘテロトピア』、そして、シリアを始めとする各地から逃れてきた難民たちを「教授」にした講義をマクドナルドで開催する『マクドナルド放送大学』など、普通は劇場で行われる既存の演劇の枠組みを逸脱する作品を生み出してきた人物。

 いったい、彼はどのような視線から、この騒動を見ていたのか。そして『不自由展』の一時閉鎖を受けて彼が開設した、アーティストが電話応対をするコールセンター『Jアートコールセンター』には、いったいどんな声が寄せられたのだろうか。

大村知事も政治利用をしている

──高山さんは、今回のあいちトリエンナーレにアーティストとして参加しただけでなく、『不自由展』をめぐる騒動を受け、アーティストが開設するコールセンター『Jアートコールセンター』を開設しました。まず、発端となった『不自由展』についてはどのように考えられていたのでしょうか?

高山:不自由展に関しては、あの枠組み自体が「検閲」をしているように感じました。今回、たとえば、東京都現代美術館から撤去を要請された会田誠さんの『檄』は、芸術監督の津田大介さんから展示してほしいと要望していたにも関わらず、『不自由展』実行委員会からの反対によって断られている。また、『不自由展』には美術館による検閲の対象とされがちなエログロも含まれていません。その意味で「政治的なプロパガンダ」が目指されているように感じたことも事実です。

 実際に『不自由展』も目にしましたが、これをやっても社会の分断はより深まるだけだし、断絶を煽るだけなのではないか。作品を見た後に自分の考えが変わったり、対話の可能性が広がることもないのではないか。『不自由展』に対しては、そんな疑問を持ちましたね。そしたら案の定炎上した。あれじゃ炎上するに決まってます。

──高山さんとしては決して賛成できる展示ではなかった、と。しかしその一方で、展示再開に向けた活動を積極的に展開していましたよね。いったいなぜ、疑問を持った『不自由展』の再開を訴えたんでしょうか?

高山:『不自由展』をあいちトリエンナーレがピックアップすることの是非はともかく、一回オープンした以上、作品を守り切るのが展覧会でしょう。外からの圧力で閉じてしまうことは許されません。だから、僕もアーティスト有志による「ReFreedom_Aichi」の運動に参加し、展示再開に向けて動いたんです。

──高山さんにとって、『不自由展』の評価と、展示を閉鎖することとは全く別なんですね。

高山:はい。自分の価値観や好みによってあの展示に賛成できなくても、それを内容が問題だからといって閉鎖することは許されない。だから、展示を再開させたいと心から思いました。

──この問題はアートの問題から、官邸を含めた行政の問題へと広がり、国民的な議論を巻き起こしました。こうした動きについてはいかがでしょうか?

高山:「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と発言した菅義偉官房長官、座り込みのパフォーマンスをした河村たかし名古屋市長はもちろん、大村秀章愛知県知事だって政治利用をしていると思います。

──政治利用……。菅官房長官や河村市長はトリエンナーレに対して敵対的な立場でしたが、あくまでもトリエンナーレ側だった大村知事の「政治利用」とは?

高山:彼だって政治家であり、各国政府や世界に対して表現の自由をアピールする「あいち宣言(プロトコル)」も知事の名においてつくられようとしています。今回の動きは彼にとっての政治に直結するものであり、アーティストは自分たちの言動が政治利用されないように注意をしていました。また、「ReFreedom_Aichi」のアーティストは、津田さんとサポートし合ういい関係を築けましたが、「不自由展を閉じる」という判断を下したことで、批判的な考え方をするアーティストも多かったんです。

 そもそも、個々のアーティストの間でも、意見は異なっています。『不自由展』について「あの状況では閉鎖は仕方ない」という人もいるし「つっぱねてやるべき」という人もいる。アーティストごとに考えが異なるという意味では、現に「ReFreedom_Aichi」に加わった日本人作家の中でも、藤井光さんは展示再開に向けた圧力をかけるためにボイコットをしています。

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