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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.557

中東紛争を題材にした傑作バックステージもの 予期せぬ結末『テルアビブ・オン・ファイア』

文=長野辰次

 

検問所を舞台にしたコメディ映画『テルアビブ・オン・ファイア』。犬猿の仲のパレスチナ人とイスラエル兵が共同でドラマを執筆することに。

 笑ってはいけないシチュエーションほど、大きな笑いを生む。誰もが知っている笑いの鉄則だが、映画『テリアビブ・オン・ファイア』はそんな笑いの鉄則にぴったりハマった優れもののコメディだ。イスラエル・パレスチナ問題という超シリアスな題材をネタに、イスラエル人とパレスチナ人との間にある緊張関係を笑い飛ばすことに成功している。

 主な舞台となるのはイスラエルのテレビ局と検問所の2カ所。エルサレムで暮らしているパレスチナ人の青年サラーム(カイス・ナシェフ)はアラブ語の他にヘブライ語も話せることから、テレビドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』のヘブライ語指導をしている。言語指導とはいっても、実際はペーペーの雑用係だった。その日の収録を終え、自宅に帰るために検問所を通ろうとしたサラームは、検問所を仕切るイスラエル軍の司令官アッシ(ヤニブ・ビトン)に職業を問われ、つい見栄を張り、『テルアビブ・オン・ファイア』の脚本家だと答えてしまう。

 コワモテな司令官アッシは、サラームの答えに興味津々。『テルアビブ・オン・ファイア』はイスラエル全土で人気となっており、アッシの妻や母も夢中になっていた。サラームが持っていた脚本を取り上げたアッシは「ドラマの結末を教えろ」「イスラエル軍のイメージがよくない。もっと紳士に描け」と次々と無茶ぶりをする。検問所を通してもらうため、「わかった」と安請け合いするサラームだった。

 劇中劇として描かれるテレビドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』は、パレスチナ系のヒロインであるラヘル(ルブナ・アザバル)がフランス系ユダヤ人だと偽り、イスラエル軍の将軍イェフダにスパイとして近づくサスペンス。アッシから言われていたアイデアのいくつかをサラームは自分の意見として提案したところ、プロデューサーたちは「なかなかいいんじゃないか」と採用されることに。折から脚本家がプロデューサーや主演女優と揉めていたことから急遽降板。サラームは脚本家に昇格することに。それまで厄介でしかなかった検問所が、サラームにとっては脚本のアイデアをもらうための大切な場所となる。

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