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エッジ・オブ・小市民【5】

その“夢”は現実に何をもたらすのか——嘘と混乱の東京オリンピック

絶対に“人”には金を使わないという強い意志

 そんなこんなで予算はどんどん増額されていく一方、「人にだけは絶対に金は使わん」という決意が見えてくるほど、何もかもがボランティア頼りになってしまったわけだが、ボランティアについても問題だらけである。先日は都内の中学・高校にボランティア人数が割り当てられて、半強制的に参加要請があったことが判明したが、これはもうボランティア(志願)ではなく、“動員”だ。「ボランティアのユニフォームが絶望的にダサい」とか「シャイニングブルー・トウキョウってなんだよ」なんて笑っていた頃が懐かしい。医療スタッフや通訳、運転、メディア対応といった専門的なスキルが必要なスタッフもすべて無報酬、宿泊や交通費は自己負担のボランティアでかき集めるとのことだが、その作業条件の厳しさから“ブラック・ボランティア”などと揶揄もされているが、それも当然だろう。

 この他、雨が降ってしまったら大腸菌ウヨウヨの海上競技会場、選手村のダンボールベッド、会期中の渋滞解消のために首都高値上げ&通販自粛呼びかけ、観客の自撮り投稿禁止などなど、まだまだいくらでも挙げようと思えば挙げられる気もするが、とにかくこれほどまでに問題が噴出して止まらないイベントってあるのだろうか。もう国威の発揚どころか、逆に日本のダメなところの見本市、その衰退っぷりを大々的に発信しているような状況だ。誰かどうにかしてくれと思うが、いったい誰が責任者なのか、それがわからない。いかにも日本らしい話であるし、そこが一番怖いポイントでもある。

 冒頭で紹介した『FYRE』の主催者ビリー・マクファーランドは最終的に集団訴訟を起こされ、有罪が確定して6年の禁固刑が確定した。東京オリンピックはもちろん『FYRE』のような詐欺事案とはまったく異なるし、仮に大失敗に終わるようなことになっても誰かが刑事罰を問われるようなことはないはずだ(あ、竹田元会長は除く)。しかし、多くの人が「これ、このままで大丈夫なのか?」という危惧を抱いたまま、うまく対処できずに開催に向けて突き進んでいる状況は『FYRE』と共通しているといえるだろう。

 責任の所在もよくわからないまま、混乱を撒き散らしつつ、開催へのタイムリミットは近づいている。来年、私たちはこの祭典のなかにどのような光景を目にするのだろう。そして、祭りが終わったあと、残るものは。

最終更新:2023/03/23 19:06
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