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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.563

テレビ局の報道フロアは格差社会の縮図だった!? 視聴率に揺れるニュースの裏側『さよならテレビ』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

地方局の内情を赤裸々に映し出したドキュメンタリー映画『さよならテレビ』。テレビ業界が華やかだった時代は終わったのだろうか。

 地方のテレビ局が放映した1本のドキュメンタリー番組が波紋を呼んでいる。2018年9月に東海テレビで放映された『さよならテレビ』は、視聴率の低迷、スポンサーや政権への忖度、制作現場内での格差問題など、今のテレビ界の内情をあけすけに伝える内容だった。番組を録画したDVDがメディア関係者の間で密かに出回っていた『さよならテレビ』が、2020年1月2日(木)より劇場公開される。

 東海テレビはこれまでにも体罰問題で糾弾された戸塚ヨットスクールを密着取材した『平成ジレンマ』(11)、暴力団組員たちの日常を追うことで人権問題を浮かび上がらせた『ヤクザと憲法』(16)など、テレビ界の常識を破る異色のドキュメンタリー作品を制作することで、社会の闇に光を当ててきた。だが、『さよならテレビ』は社会の闇に光を当ててきたテレビ局自体の闇に迫っている。これまで以上に、テレビの常識から逸脱した作品だ。

 東海テレビの報道部で、本作を企画した土方宏史ディレクターたち取材クルーがカメラを回し始める。が、その途端にカメラに向かって怒声が飛ぶ。「カメラを回すのやめろ!」とデスクが声を荒げる。他の同僚たちも「気になって仕事にならない」と不満をこぼす。ふだんは事件被害者や遺族たちに向かってカメラやマイクを突き付けるテレビマンたちだが、自分にカメラを向けられると拒絶反応を起こしてしまう。自分たちが取材するのはいいが、取材されるのは嫌。そんなテレビマンたちの矛盾した姿勢を、『さよならテレビ』は序盤から暴露してしまう。

 報道部のデスクから取材拒否され、土方ディレクターは拒否反応の薄い取材記者たちを中心に追うことになる。東海テレビの看板ニュース番組『みんなのニュースOne』でキャスターを務める福島智之アナウンサー(37歳)、現場取材の長い澤村慎太郎記者(49歳)、そして新人の渡辺雅之記者(24歳)。この3人が『さよならテレビ』の主要キャラクターとなっていく。

 4月の番組改編期、『みんなのニュースOne』のメインキャスターを続ける福島アナの表情は固い。番組の視聴率は民放4位と低迷を続けている。ソフトな人柄で、手堅いコメントに定評のある福島アナだが、視聴率アップの打開案はなかなか見つからない。そんな中、澤村記者は「Z」と記された企画書を手に取材先へと向かう。「Z」とは「是非ネタ」、つまり営業部などが推すスポンサーがらみの案件だった。東海テレビに途中入社した澤村記者は、正社員ではなく契約社員。かつては地元の経済新聞でタイアップ記事をよく担当していたので、この手の案件には慣れていると苦笑する。公正さが求められるニュース番組だが、視聴率や営業部のしがらみが番組内容を大きく左右していることが分かる。

 電通で起きた過労死問題をきっかけに、東海テレビでも「働き方改革」に取り組むことになる。残業はするな、でも視聴率は上げろ。そんな矛盾した指示を、『みんなのニュースOne』を統括する齊藤潤一報道部長はスタッフに命じなくてはならない。この齊藤部長は、『平成ジレンマ』や冤罪の可能性の高い殺人事件を題材にした『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(13)など骨太な作品を手掛けてきた辣腕ディレクターだ。そんな齊藤部長が、局内では中間管理職として苦悩している姿も垣間見られる。

 報道部の人手不足を解消する策として、齊藤部長は派遣会社に即戦力となる人材を要請する。そうして派遣されてきたのが渡辺記者だった。他のローカル局での経験があるという渡辺記者は、よく言えば業界ズレしてないものの、仕事ぶりは器用ではない。案の定、人名を読み間違えるなどの初歩的なミスを連発してしまう。

 さらにカメラは、渡辺記者のアパートへと踏み込んでいく。先輩の澤村記者の部屋は本多勝一や鎌田慧といったジャーナリストたちの本が並んでいたが、渡辺記者の部屋には女性アイドルのポスターが張られ、アイドルを撮ったチェキ写真もいっぱい。アイドルの応援をしているとき、渡辺記者は心の安らぎを感じるそうだ。趣味は人それぞれだが、「もう少し勉強したほうがよいのでは……」と心配になる。そんな渡辺記者が、カメラを向ける土方ディレクターに極めて冷静な言葉を吐く。

「(派遣社員を教育するよりも)新入社員をいちから育てたほうが会社にとってはいいと思うんですよね」と語る渡辺記者。いつも笑顔を浮かべている渡辺記者だが、局内で自分の置かれている立場はしっかりと客観視している。土方ディレクターは返す言葉が見つからない。『さよならテレビ』は、地方のテレビ局の制作現場における格差問題をまざまざと見せつける。

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