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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.564

若者は退屈さから逃げるために戦場へ向かった! 新技術が生んだ新しい映画『彼らは生きていた』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

ピーター・ジャクソン監督の『彼らは生きていた』。最新のデジタル技術によって、100年前の資料フィルムが生々しいリアルな映像として甦った。

 テクノロジーの進化が、まったく新しい映画を生み出した。ファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(01~03)で知られるピーター・ジャクソン監督の『彼らは生きていた』(原題『They shall not grow old』)は、驚くほど革新的な作品となっている。第一次世界大戦を題材にしたものだが、スクリーンの中の世界に思わず引き込まれてしまいそうなほど、生々しい映像が溢れている。2020年は、まずこの映画から紹介したい。

 ピーター・ジャクソン監督にとっては『ホビット』三部作(12~14)以来の監督作となる『彼らは生きていた』は、ジャンル分けすれば「ドキュメンタリー映画」になるだろう。だが、従来のドキュメンタリー映画とは、大きく印象が異なる。

 時代は1914年。第一次世界大戦が勃発し、英国の若者たちは志願兵として、戦場へと向かった。イギリス帝国戦争博物館に所蔵されていた数千時間に及ぶ当時の資料映像から100時間分の映像を選び出し、劣化していたフィルムを修復。さらにモノクロ映像をカラー映像化し、当時のフィルムが1秒につき13~16フレームだったのを現在の24フレームに修正。最新のデジタル技術によって、倉庫に眠っていた古いフィルムが、まるでタイムマシンに乗って撮ってきたばかりのような鮮明な映像として甦った。

「みんなが行くのに、自分だけ腰抜けと思われたくなかった」。そんな理由から、若者たちは戦場へと向かった。18~35歳までと年齢制限はされていたが、年齢を誤魔化して志願する15~17歳の少年たちも少なくなかった。何のために戦うのかよく分からないまま、軍隊へと入った。若い彼らにとっての戦争は、退屈な日常生活から抜け出すための冒険だったのだ。

 ひ弱だった若者たちは6週間に及ぶ練兵所での特訓と共同生活によって鍛えられ、軍服が似合う姿へと成長を遂げていく。そして、いよいよドイツ軍が待ち構える欧州西部戦線へ。ここからモノクロ映像が鮮やかなカラー映像へと切り替わり、教科書に記載されていた歴史のひとコマが生身の人間たちの台本のないリアリティードラマへと変容していく。このあたり演出が、ピーター・ジャクソン監督は実にお見事だ。

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