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エッジ・オブ・小市民【7】

2020年1月1日に死んだ小さな赤ちゃんと、この社会

文=堀田功(ほった・こう)

シングルマザーの貧困とスティグマ

 奇しくも彼女が逮捕されたのと同日、浜崎あゆみが昨年末に出産し、シングルマザーになっていたことを公表。その出産からわずか1ヶ月後の大晦日にはカウントダウンライブを開催していたことも、大きな話題となった。出産とその直後のライブ開催について、浜崎あゆみはInstagramで次のような投稿をしている。「24時間態勢でサポートをして下さる病院の先生方、助産師さん達も居て下さいました」、「女性が産後すぐに動けるという事の証明では決してありません」。そして、「肉体的にも精神的にも難しい産褥期を身をもって実感している今、誰よりも側で支えてくれる家族と友人達に感謝の気持ちと共に、日本中の妊婦さん達、お母さん達が休まる時間を十分に持てますようにと心から願っています」と、メッセージは締めくくられている。

 残念ながら、逮捕された足立区のシングルマザーには、休まる時間はまったくなかったし、支えてくれる家族も友人もいなかった。行政や福祉に頼ることも知らなかったし、「お金がない」から病院に受診することすらできないと思っていた。これらの環境と彼女の無知は罪なのだろうか。産んだばかりの小さな小さな赤ちゃんを置いて、産褥期どころか出産翌日の彼女がパチンコ屋とキャバクラでいくばくかの自分と赤ちゃんのための生活費を稼ごうとしたことが罪だというならば、それを救えなかった社会に罪はないのだろうか。そういう思いが拭えない。社会が悪いなどと言い出すことで、罪と責任が薄まってしまうことがわかっていても。そして、例によって父親の姿はそこにない。彼女を妊娠させた男はどこにいるのか。ふざんけんなクソ野郎死ねという思いが湧き上がるのを抑えきれない。

 どうすれば、彼女と赤ちゃんを救うことができたのか。まず、女性を妊娠・出産させて逃げるようなクズ男に対してなんらかのかたちで責任を取らせ、適宜、行政が間に入るなどの措置をして母子の生活の支援につなげる制度づくりは必要だと思う。また、彼女のような人たちに市民が福祉や行政のサービスを受けさせるため、自主的な申請を必要とする現状の“申請主義”ではなく、福祉・行政側から積極的な働きかけをするべきなのか。これはプライバシーの保護や個人や家庭の自由への強制的な介入といった問題からいって限界があるだろう。そもそも今回のケースのように妊娠しても医療機関を受診おらず、周りの誰にも相談していない状況であれば、行政・福祉がそれを捕捉するのは難しい。生活に困窮した人のための相談機関は数多く存在するので、その窓口を周知するため、目につきやすい場所にポスターなどの掲示を増やすこともひとつの手段だ。義務教育の段階から、行政のサービスや福祉へのアクセス方法や手続きについて教える必要もあるかもしれない。

 制度やシステム、教育が変わるためには時間がかかるだろう。仮に変わったとしても、あらゆる人に漏れなくリーチできるようなチャネルの実現はまず不可能だ。そして、周知が行き届いたとしても、彼女のような人が適切な機関に相談し、救いを求めるかどうかはまた違う話になってくる。私たちの生きる社会では、“社会的弱者”という烙印を押されることを恥とするスティグマが存在している。それが、また行政や福祉のサービスを利用することのハードルを高くしている。母子世帯の平均年収は一般世帯の半分以下で、貧困に苦しむシングルマザーは非常に多い。それなのに、彼女たちへの風当たりは強い。

「無計画に子供を作るな」

「なぜ子の父親と別れたのか」

「逃げるような男を選ぶのが問題」

「そもそも避妊しないのが悪い」

「生活力がないのになぜ堕ろさなかったのか」

「もう少し稼げる仕事はなかったのか」

「育てられないなら子供を産む資格はない」

 まるでシングルマザーであることが、責められるべき“罪”のようだ。そうした風潮のなかで今回の事件は起きた。なぜ彼女は誰にも自分の妊娠を相談することができなかったのか。その理由のひとつには、シングルマザーであること自体を責め、蔑むような世間の“空気”を敏感に感じ取っていたということもあるはずだ。

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