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『フリースタイルダンジョン』レビュー

『フリースタイルダンジョン』”サディスト”呂布カルマの本性が全開に! 

『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)

 2月11日放送『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)は神回だった。

 冒頭、「番組史上発の出来事が!」という煽りがあったが、それはなんのことだったか? バトルを振り返っていきたい。今回のチャレンジャーはUMB福島予選2連覇中のAtmoshi phere(あともしふぃあ)と、埼玉県蕨のラッパー・KOOPA喰吐(くーぱ)だ。

“オーバーキル”呂布カルマの恐るべき死体蹴り

 チャレンジャー・Atmoshiphereの前に召喚されたモンスターはID(あいでぃー)。気合十分で現れたIDを見て、Atmoshiphereはあっさりと「チェンジで」。膝から崩れ落ちるID。カッコよく登場したのに、そこからのチェンジは笑うしかない。

「メチャクチャやる気で来たのになあ……!」(ID)

 ちなみに、IDがチェンジされるのは今回が2度目。単純に、難敵を避けたいチャレンジャーたちの気持ちの表れだろう。

 続いて召喚されるモンスターは……なんと呂布カルマ(りょふ・かるま)! 1発目で負けたくないから相手を変えたら、もっとやべえのが来たというドツボの展開。どこがチャンスカードなのだろう。チェンジからの呂布はチャレンジャーにとって絶望である。地獄すぎる展開に会場はメチャクチャ盛り上がっている。Atmoshiphereを見ると、首をもたげ「マジかよー」という表情をしている。

 戦前、煽りVTRでAtmoshiphereは呂布についてこうコメントした。

「嫌いっす。フフフ。やってることも俺は全然理解できないし、何がカッコいいのかわかんなくなっちゃってる典型なのかって思ってます」

 そんな発言を、呂布が聞き逃すはずがない。いきなりカマした。

呂布「フリースタイルダンジョン史上 史上最低なCHANGEカードの使い方 穴を避けた後には マグマが転がってたってわけだ」

 穴を避けた後にマグマ、こんな言い回しは聞いたことがない。ものすごいボキャブラリーである。

 直後、ちょっとしたアクシデントが起こった。1本目は16小節のはずが、どちらかのミスで8小節になってしまったのだ。ここから呂布がとった対応がクールだった。

「この後16 このままかます 止めるなDJ このまま行く 俺たち柔軟にやってる

十何小節やって頭ぶっ飛んだとこで 吐く言葉がちょうどいい

超ド級の言葉 お前の心臓 嫌いな奴ってのは こんぐらい強ぇぞ」

 この神対応で一気に会場をつかんだか、判定は呂布のクリティカル(審査員満場一致)! しかし、ここで勝者が温情を見せた。

「これ、でも1本目、(Atmoshiphere)がかわいそうだったと思うんすよ。16小節×2を1本目8小節ずつしかやってないんで。クリティカルは1本(に換算)でいいんで、もう1本やらせてあげてほしいです」(呂布)

 8→8→16→16で進んだ1本目はAtmoshiphereにかわいそうということで、呂布が判定に物申したという形だ。

 珍しく優しさを見せる呂布に惚れ惚れしていたら、モンスタールームのR-指定(あーるしてい)が苦笑いをしている。

「うわぁ~、追い打ち!(笑)」(R-指定)

 秒で呂布の真意を見抜いたR-指定。よく考えると、一度クリティカルを食らったAtmoshiphereのメンタルは、もういっぱいいっぱいである。チャンスを与えられても、2本目に勝利の目があるとは思えない。「じゃ、先攻で」と仕切り直すAtmoshiphereは、もう呂布と目を合わせようとしない。残念ながら、すでに心が折れたように見えた。

 というわけで、Atmoshiphereが先攻だ。実力者だけにラップはうまいが、今はそれのみが先行しているように感じる。ワイプに映るR-指定は、Atmoshiphereのターンで露骨に渋い表情になっている。「うわぁ~、それじゃ勝てない……」とラスボスの顔に書いてある。

Atmoshiphere「さっきもらったチャンス その分も同じ 俺も 熱量で返していきたいと思ってるぜ」

呂布「もう1回 お前チャンスもらったと思ってたら 甘い甘い お前はもう1回 ここで恥かく 俺のサディスト 全開のライム」

 チャンスをあげたふりをしてもう1回潰すつもりの呂布。「かわいそうだから~」と言ってた人のやることじゃない。今夜は呂布の死体蹴り回。地獄の“追い呂布”だ。

 思うに、呂布にケンカを売りにくるAtmoshiphereのスタイルは悪くなかった。でも、「嫌い」と言ったなら覚悟してほしいというのが呂布の出方。「嫌いな奴ってのはこんぐらい強ぇぞ」を嫌というほど味合わわせてみせた。

 ちなみに、このバトルで呂布が着ていたのは、ダイヤの柄が横に入ったオレンジ色のニット。なんか、『ドラえもん』のジャイアンみたいに見えるのだ。ファッションも、やってることも、呂布はまさにジャイアンだった。

 判定は、2度目のクリティカルで呂布の勝ち! クリティカルでKOした相手を叩き起こし、もう一度KOするオーバーキル。呂布カルマは異名を「鋼鉄の心臓」から「オーバーキル」に変えたほうがいい。要するに、これが番組史上初の出来事だったのだ。一度のバトルで2度クリティカルを食らってしまった史上初のチャレンジャー。

 恐るべきは呂布である。Atmoshiphereの「嫌い」発言も、8小節で進んでしまったアクシデントも、起こったことすべてをエンタテインメントに転化した。1本目、Atmoshiphereに「お前 結局メディアに飼われて ルールの中でやってるHIPHOP」と言われ、呂布はこう返している。

「お前もメディアに出てるぜ 一緒 ここで跳ねたら 同じ狢だぜ どうする?」

「映像に残ったからには お前も腹をくくらなきゃ シャレになんねぇぞ」

 Atmoshiphereにとって、このバトルは最悪のマイナスプロモーションになってしまった。容赦ない呂布の恐ろしさを再認識した。

 呂布がいる時点で、3代目モンスターは難攻不落だと思う。今回のAtmoshiphereだって、IDを敬遠したら次の呂布に場外ホームランを打たれる憂き目に遭った。しかも、その後にはR-指定が控えているのだ。ちょっと、無理ゲーじゃないだろうか。

 バトル後、R-指定がナイスコメントを発した。

「呂布さん、そんなことするから嫌われるんすよ(笑)」

 言われた呂布が思わず笑みをこぼす。2人、イチャイチャしすぎである。

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