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安倍政権の“守護神”が牛耳る検察、ウグイス嬢買収疑惑の河井夫妻の逮捕はできるか?

文=神山純之助(かみやま・じゅんのすけ)

 河井克行前法相と妻である河井案里氏に、公職選挙法違反疑惑がかかっている。広島地検は3月3日、案里氏が初当選した2019年7月の参議院選挙広島地区にて、ウグイス嬢に法定上限金額の2倍の報酬を支払ったとして、案里氏の公設第二秘書の立道浩容疑者、克行氏の政策秘書の高谷真介容疑者、事務長を務めた脇雄吾容疑者の3人を逮捕した。

 この事件では、逮捕された秘書らの公判の行方が注目されており、河井夫妻の逮捕まであるかどうかも耳目を集めるところだ。また、まだ世間で表沙汰になる前から、克行氏の秘書が法定外の金額を払ったとされる内容のLINEのスクリーンショットが出回っていたこともあり、マスコミ関係者の間では「誰かしらの逮捕が秒読みだろう」と噂に。さらに、夫妻の逮捕に関しては、「国会議員2人の逮捕」という前代未聞の事態となるため、法曹関係者の間でも事件の詳細をめぐって、盛り上がりを見せていた。

 そして、19年10月に「週刊文春」(文藝春秋)が踏み込んで報じたことで、克行氏は法相を辞任。その時点で克行氏は「報道の件は、私も妻も知らないところだが、説明責任は果たしていきたい」という旨の殊勝なコメントをしたが、事件への関与は否定していた。

「買収疑惑が問題となった昨年の参議院選挙では、安倍首相や菅官房長官も案里氏を全面的に応援していました。内閣の官房費から1億5000万円あまりのカネが、河井氏陣営に選挙資金として動いたといわれています。実際は買収に使われたかどうかはわかりませんが、そこまでテコ入れをしただけあって、安倍首相は自身に任命責任があるということを認めました。しかし、肝心の本人たちが体調不良を理由に登院せずに雲隠れし始めていた」(地元紙記者)

 また、別の週刊誌記者はこう語る。

「某週刊誌の編集部が、どうしても雲隠れしている河井夫妻への直撃取材をしたいとのことだったので、夫妻がいつも使っている六本木のハイアットリージェンシーで張り込みをしたが、まったく出入りがない。そこで政治家から情報収集したところ、国会議事堂と地下連絡通路でつながっている、ザ・キャピトルホテル東急に雲隠れをしていることがわかりました。しかし、地下鉄の駅の構内ということもあって直撃はできない。その状況を知ってか知らずか案里氏は強気で、菅官房長官に『事態が収束に向かったら、しっかりと国会に出席する』と伝えたそうです。相当肝が据わっていないと言えないことですよ。それだけ、国会議員という立場に自信があったのだと思いますが、身の潔白については言葉を濁したようです。国会の期間中は不逮捕特権がありますからね」

 そして既報の通りだが、3月28日の土曜日の未明。永田町関係者から筆者のもとに「河井案里の情報です。自殺かどうかは“?”ですが、向精神薬を多量摂取して救急車で三田の済生会病院に搬送されました」と、転送LINEが届いた。

 実際にはマスコミに漏れることを恐れて、克行氏が何らかの交通手段を使って病院へと搬送したもので、自殺ではなかったようだが……前出・地元紙の記者はこう解説する。

「28日、河井夫妻が参院選公示前に票の取りまとめを頼むために、県議や市議にカネを渡していた可能性があり、広島地検が捜査に着手した模様と――と、中国新聞をはじめ複数の新聞が報じました。地検は公選法買収で河井夫妻の立件を視野に慎重に捜査していたようなのですが、その可能性が高くなったのでしょう。案里氏はそれに過大なストレスを感じたのではないでしょうか」

 そこからの動きは早かった。案里氏から現金を受領した県議や市議が広島で会見を開くという運びになったのだが、最終的には頓挫することに。

「複数のメディアが先走って河井夫妻についての記者会見を開く予定だった4人の議員に『あて取材』をしてしまったんです。それにより、事前に情報が漏れていることに彼らは神経質になり、会見は中止になってしまいました」(前出・地元記者)

 その後、自民党系会派に所属する広島県議のスタッフに対し、参院選公示の約3カ月前に、現金数十万円を手渡していたことを認める発言を、某県議がした。それからも、広島地検の取り調べを受けた議員の何人かが、現金の授受を大まかに認めるなどして、今に至る。

 では今後、河井夫妻の逮捕はあり得るのだろうか? 永田町に詳しい事情通はこう語る。

「検察首脳が今回の人事で、どこまで官邸にケンカ売るつもりなのかが焦点となります。もし本気なら、逮捕できる要件はそろっていますしね」

 今回の人事とは、安倍政権が東京高検検事長の黒川弘務氏の定年延長を決定し、今夏の検事総長就任が、ほぼ内定したこと。これは、これまで聖域とされていた検察人事に、内閣が介入をしたことにほかならない。同氏は続ける。

「ただ、連座制の適用、逮捕の前に辞職で、終了ではないでしょうか? 検察も河井夫妻の辞職で『責任を取った』ということにして、逮捕はしないでしょうね。おそらく最高裁まで争うと思いますが、判決が出る頃には誰も覚えていませんよ」

 その一方で、今回の件で仮に秘書が有罪になった場合はどうなるだろうか? 別の関係者もこう語ってくれた。

「百日裁判で連座制の適用による失職は濃厚ですよね。検察としては、それで“ちゃんちゃん”ということなのでしょう」

 この一件は選挙絡みの事件のため「訴訟の判決は、事件を受理した日から、100日以内に出すように努めなければならない」という規定に従って、いわゆる“百日裁判”が実施されることになる。

 そして、秘書が有罪になれば河井氏の当選は無効となる。さらに、向こう5年間は立候補ができなくなり、違反を犯した選挙区からの立候補を永久に禁止されることになる。これを公選法における連座制という。

 さて、4月20日。案里氏の公設第二秘書、立道被告の第一回公判が開催され、各メディアは立道被告が起訴内容を認める方向だと前々日に報道したが、ふたを開けてみたら認否を留保した。これにより河井夫妻の憂鬱が、まだまだ続くことは間違いなさそうだ。

神山純之助(かみやま・じゅんのすけ)

40代前半。政治・経済関係の取材を中心に活動中。

最終更新:2020/04/25 22:00

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