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コンビニ新商品「Tuesday Morning Reviews」#7

コンビニが“謎パン”を乱発中! セブンにはNYでヒット中の「バブカ」が新登場…そのお味は?

「コンビニの新商品はいつ並ぶのか?――それは火曜の朝である」

 1年間に5,000品超の新商品が並んでいる日本のコンビニエンスストア。「バスチー」のように大ヒットするものがある一方で悲しいかな、日の目を浴びずに消えていくものが山ほどあるのもまた現実だ。本コラムでは、火曜朝に発売されるコンビニ新商品を独断と偏見でチェックし、そのポテンシャルを予測。また、ひっそりと消えていくコンビニ新商品を記録しておくのが「Tuesday Morning Reviews」である。

 なおこのレビューは、流通アナリスト・渡辺広明氏と主夫リーマン・テキパキオ氏の私見たっぷりな辛口対談によってお届けします。

◇ ◇ ◇

テキパキオ(以下パキオ):1斤が1,000円くらいする高級食パンが流行っているらしいじゃないですか?

渡辺広明(以下渡辺):あ~、「乃が美(のがみ)」とか「銀座に志かわ」とか名前は聞いたことがあるよ。うちはそこまで買える余裕がなく食べたことはありませんが……。

パキオ:同じく。僕もセブン-イレブンの「金の食パン 厚切り4枚入り」(税込み297円)までしか食べていません。ただ最近Twitterで見かけた高級食パン屋さんの名前が斜め上すぎてちょっと興味を持ったんですよ。「題名のないパン屋」とか「明日が楽しみすぎて」とか「考えた人すごいわ」とかおよそパン屋とは思えないじゃないですか?

渡辺:大喜利みたいだね! それでもマーケティング的に見れば、高級食パンと意表をついたネーミングのギャップをうまく利用していると思います。

パキオ:僕もそう思いました。で、その波がコンビニにも来たんじゃないのかと思ったのが、16日にセブンが発売した新商品「バブカ!!(チョコレート入り)」(税込み149円)です。

渡辺:面白い視点だね! 確かにものすごく「バブカ!!」って訴えられている気はするけど、そもそもバブカって何なの?

パキオ:僕も知らなかったので調べたところ、数年前からニューヨークでヒットしているバターとチョコレートが入ったパンだそうです。なんでもユダヤ系のパンだとか。

渡辺:(「バブカ!!」を食べながら)デニッシュとパンの中間くらいで軽い食感。チョコも甘さ控えめでおいしいですね。僕らの世代で言うとチョコマーブルパンっぽいかな。

パキオ:ほのかにシナモンの香りもします。インターネット上では「本場のバブカと違う」なんて意見もありましたけど、本場知らなくてもフツーにおいしかった。ただ写真で見比べる限りでは、本場のバブカはもっとチョコがマーブルな感じでした。

渡辺:ニューヨークでヒットしたものが、国内のパン専門店に流れて、そこからコンビニのPBにまでやってきたというケース。メニュー開発としては王道だと僕は思います。

パキオ:果たしてバブカがどこまで認知度を上げるかはまだわかりませんが、開発担当者がヒット祈願の意味を込めて「バブカ!!」になったのではないかと勝手に推測しました。それにちょっと前にもセブンは「チーズ! チーズ! チーズ!」という振り切った名前のホットドッグを出していましたから。

渡辺:そうなんだ。セブンにしては思い切った名前だね。もしかしたら高級食パン屋さんの名前だけじゃなく、今後は面白いパンの名前が増えてくるかもしれないからメモしておきましょう。

パキオ:さて、もうひとつがファミマの「たい焼きみたいなデニッシュ(つぶあん)」(税込み138円)ですが、完全に出オチみたいなパンです。

渡辺:袋から出すと、たい焼きに見えるか見えないかギリギリのレベル。でも、尻尾までしっかりつぶあんを入れた努力は評価してあげたいね。

パキオ:はい。甘めのつぶあんデニッシュで、みんなが安心して食べられる味ですけど、なんでたい焼きの形にしたのか謎。

渡辺:コンビニでは夏が近づいて暑くなるとどうしても菓子パンなどのベーカリーの売れ行きが落ちるんですよ。だいたい年間平均より10%は下がります。で、下がるのがわかっているからあえて手に取りたくなるような新商品を投入しているんです。ちなみにベーカリーの中で、夏でも売れ行きが下がらないのはスパイシー系のカレーパンとしっとり系の蒸しパンです。正直あとは厳しい。

パキオ:へぇ~。そういえば僕が買い物に行った店舗でも新商品の「たい焼きみたいなデニッシュ」よりも圧倒的にカレーパンが並べてあって、不思議だな~と思っていたんです。

渡辺:パキオさんが行ったお店の発注担当者はパンのことをよくわかってる人だ。ところで、製造元はチェックした?

パキオ:「バブカ!!」はセブン系の専用工場のスウィングベーカリー。ファミマの「たい焼きみたいなデニッシュ」は山崎製パンでした。

渡辺:今のコンビニのパン売り場はほとんどプライベートブランド(PB)ばかりになってしまっているからね。僕が北海道でバイヤーをしてた20年前は、地元に根付いた地場のパンが半分以上もあったんだよ。でもコンビニ各社が全国PBで売り始めるようになってからは、地元メーカーのパンが地元のスーパーでしか買えなくなってしまった。北海道の雄だった日糧パンは山崎製パンの傘下に入ってしまったし……。

パキオ:やっぱりパンもPBのほうが粗利が高いんですか?

渡辺:そう。そしてPBのパンは各社とも街のパン屋さんをマネているからあまりおもしろくないなと思ってます。

パキオ:そう言われると確かにスーパーの菓子パン売り場のほうが見た目もにぎやかで楽しいかも。

渡辺:PBは諸刃の剣なんですよ。

【今日のまとめ】

・バブカはニューヨークからやってきた最新トレンドの菓子パン

・夏はコンビニで菓子パンの売れ行きが下がる

・コンビニのパン売り場はPBが増えすぎて、面白さが減っている

渡辺広明(流通ジャーナリスト)

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浜松市出身。2児の父。マーケティングアナリスト、日本唯一の流通アナリスト、コンビニ評論家、流通ジャーナリスト、約730品の商品開発に携わるマーケター、元コンビニバイヤー、元コンビニ店長、現コンビニアルバイター、「浜松市やらまいか大使」(観光大使)など、さまざまな顔を持つ。フジテレビ『Live Newsα』レギュラーコメンテーター『ホンマでっか⁉TV』レギュラー評論家として活躍する他、スポーツ紙「東京スポーツ」に連載を持ち、ニュース・ワイドショー・新聞・週刊誌・ラジオなどのコメント・講演会・アドバイザリー・顧問業などでも幅広く活動中。趣味は「ドラゴンズ熱烈応援」「時折フルマラソン」「発展途上国の教育支援(ガーナ・ラオス)」。著書に『コンビニが日本から消えたなら』(KKベストセラーズ)

わたなべひろあき

テキパキオ(ライター)

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都内に住む30代サラリーマン。小学生のとき、母親の手伝いで料理に目覚め、兄の夜食を作るようになる。大学時代にはカジュアルイタリアンの厨房でアルバイト。就職後は自炊することがなかったが、3年前にアーティストとして働く妻と結婚して家事全般を担当。猛スピードで掃除洗濯をこなす様子から妻に「テキパキオ」と名付けられる。PB食品の食べ比べがスーパーの売り場徘徊が趣味。蛇口とシンクを磨くのが好きで、行きつけの飲み屋の閉店作業に加わりがち。

Twitter:@@tekipakio

てきぱきお

最終更新:2020/06/22 12:00
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