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スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会【9】

クリーンな芸人も思わず「フ○ック!」と叫ぶ トランプ大統領が怒らせたコメディアン

クリーンな芸人も思わず「フ○ック!」と叫ぶ  トランプ大統領が怒らせたコメディアンの画像1
ジム・ファフィガン(写真/Brad Barket 「Getty Images」より)

 現在アメリカではコロナウィルスの影響で多くの州でコメディクラブが閉鎖され、未だに再開の目処が立っていない。一部の州では試験的に週末に営業を再開したが、密を避けるため劇場の観客上限を従来の50%に制限するなどの対策を取っている。コロナ以前と比べると、なんとも寂しいのが現状だ。
 その一方で好調なのがNetflixやAmazon Primeなどの動画配信サービス。これらを利用してリビングにいながらスタンダップコメディを享受する人が増加した。

 そんな中で、ここ数年アメリカのスタンダップコメディ界で顕著なのが、“クリーン・コメディ”の台頭だ。極端に差別に敏感な”woke culture”(ウォークカルチャー)の中で、炎上を避け、攻めすぎない笑いを目指すのがひとつの潮流となっている。伝統的に規制の厳しいテレビだけでなく、本来は「大人の娯楽の場」でもあるコメディクラブにおいてもその流れは顕著で、当たり障りのない”あるある”ジョークや人間観察に根ざしたネタが急激に増した印象だ。

 その旗手とも言えるのがジム・ガフィガン。デビュー当初から一貫して“クリーン・コメディ”を体現してきた。具体的には、露骨な下半身ネタや”フ○ック”などの汚い言葉は用いないだけでなく、多くのコメディアンが扱う政治的なジョークもほとんど言わないスタイル。それでもこれまで5回グラミー賞にノミネートされるなど確かな実績を残し、世界中でツアーも成功させてきた。2019年には来日公演も果たし、チケットが即日完売となったことは記憶に新しい。
 そんな彼の最新作が先日Amazon Primeから発表された。タイトルは”Pale Tourist”(邦題は『世界は驚きに満ちている』)

”白い旅人“というタイトルの通り、典型的なアメリカ白人男性の彼が世界ツアーを行なう中で体験したエピソードを面白おかしく語っていくという構成で、カナダ公演ではご当地ネタ満載で観客の心をつかみ、満員の劇場を温かい笑いに包み込んだ。
 本作は「アメリカ人から見たカナダ」という切り口で、ジム自身から見たカナダのおかしさを笑いに変えていくのだが、結果的にアメリカという国をジョークにするという落とし所に帰着している。

 例えば「カナダの代表的な食べ物といえばプーティン(フライドポテトにチーズとグレイビーソースを豪快にかけたもの)だよね。よくあんなにも体に悪そうな物を集合させたよね。あ、でも君たちは医療保険があるからいいのか」と、一向に国民皆保険の進まぬアメリカを皮肉り、「対してアメリカはダンキンドーナッツの店舗が多すぎるんだ。ワンブロックごとにあるもんだから、車の”止まれ“のサインかと思っちゃったよ」とまくし立て、会場はどっと湧いた。
 こうした柔らかな笑いを安定して提供し続けるジムだが、そのパフォーマンスを見ると、声色、マイクの使い方、表情、上下(かみしも)の切り方、立ち姿などにスタンダップコメディアンとしての細かな技術が凝縮されている。ベテランコメディアンとして培った豊かな経験と才能を垣間見ることができる。

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