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【特別寄稿】元木昌彦が語る週刊誌と安倍政権

安倍首相の辞任を週刊誌から読み解く…まもなく誕生する“安倍院政”の舞台裏

安倍晋三首相

「安倍夫妻は“辞任離婚”する」

 安倍首相突然辞任の裏に隠された“策謀”を明らかにする前に、興味深い安倍と妻・昭恵との関係を示すエピソードを紹介しよう。

 安倍首相にストレスを与え続けたという意味では、この人の右に出る者はいないだろう。妻の昭恵である。

「女性セブン」(9/17日号)によれば、8月28日、突然、官邸に呼び出された昭恵は、「何の用事かしら」と訝しがりながら向かったという。

「そこで血相を変えた総理と対面することになった。総理から辞任することと、想定以上に深刻な病状を伝えられ、さすがの昭恵さんも絶句したそうです」(官邸関係者)

 その後、首相公邸のテレビで安倍の辞任表明会見を見ていたというのである。

 辞任直前まで、妻に何もいっていなかったとすれば、「仮面夫婦」といわれ続けてきた安倍夫妻を象徴する“事件”であろう。

 たしかに、17日と24日に慶應病院に行く際にも、昭恵は同行していなかったようだ。

 安倍は8月に入ってから、早めに自宅へ引き上げていたといわれる。自宅の3階には母親の洋子、2階に安倍夫妻が住んでいるそうだ。

 昭恵には話さなくても、マザコンの安倍は、洋子には辞任の意向を伝えていたはずだ。持病の悪化も、もしかするとがんかもしれないということも。

 もし、昭恵には何もいわなかったとすれば、これまでさんざんお前のおかげで苦労させられてきたと、安倍がブチ切れて、「辞任離婚」が現実のものになるかもしれない。

 まあそうなっても、昭恵のことだから、居酒屋UZUの女将として、面白おかしく生きて行くと思うのだが。

 さて、安倍首相の「突然の辞任劇」は綿密に仕組まれたものだったと、私は思っている。情報の流し方、その後の辞任までの流れを追うと、そうとしか考えられない。

 8月4日発売の「FLASH」(8/18・25日号)が、「安倍総理が、7月6日に首相執務室で吐血した」と報じた。事実だとすれば大スクープである。だが週刊誌は合併号のため動けなかった。その間に甘利明など自民党議員から、「数日でもいいから強制的に休ませなければならない」との発言が出始める。

 そして8月17日、突然、安倍首相が主治医のいる慶應病院に8時間近く“入院”してしまったのである。

「週刊文春」は2日後に発売された9/3日号で、「この日、安倍首相は顆粒球吸着除去療法(GCAP)を行ったようです。これは潰瘍性大腸炎がステロイドでは抑えられないほどひどい炎症を起こしているときに行うもの。GCAPの治療は、太い針を刺すので痛みも伴うし、頭痛などの副作用もある。治療後は身体がしんどく、一~二日は休む必要がある」(慶應大学病院の関係者)と報じた。

「週刊新潮」も、7月6日に、「執務室で“クラクラする”と呟き、食べたものを吐いてしまった。その吐瀉物の中に鮮血が混じっていたんです」と報じ、自民党の閣僚経験者が、「総理は今回、がんの検査も受けました」と語っている。

 持病悪化、退陣表明が近いという雰囲気作りができつつある中で、大叔父・佐藤栄作の記録を塗り替えた24日に再び、慶應病院へ検査に行くのである。

 そして28日に、まとまったコロナ対応策と病状について説明する会見を開くと、安倍自らがいい出した。

 先の文春、新潮はともに、「後継は菅『コロナ暫定政権』」(文春)、「『菅・二階』8.20極秘会談の中身」(新潮)と、安倍退陣、菅新政権誕生との見方を打ち出した。

 後継にと考えていた岸田文雄総務会長は、党内外での評判がよくない。だが、“天敵”である石破茂には絶対総理の座は渡さない。

 安倍は二階俊博幹事長と会った。そこで計られたのは、総裁選は行わない、党員・党友票は無視するという石破外しである。

 だが、新聞、テレビは慎重だった。当日の朝になっても継続か退陣かを計りかね、私が知る限りではスポニチだけが「続投」と打った。

 午後2時ごろにNHKが「安倍辞任」の速報を打つ。午後5時から始まった会見で、安倍首相は、持病が再発し重責を担えない、辞任すると淡々と語った。

 だが、疲れた表情の安倍の胸の中に、ぎらぎらと燃え滾る野心を感じ取ったメディアはどれだけいただろう。

 安倍が言ったように、内閣改造がひかえている、10月には来夏の東京五輪の中止が濃厚だ。そうなればその前に解散・総選挙をやらなければ、自民党は大敗する。

 後継には菅を据えるためには、自分の求心力が残っているうちにやらねばならない。まさに、三度目の総理に就くためには、このタイミングしかなかったのである。

 そんな穿った見方をしたわけではあるまいが、29日の産経新聞「産経抄」はこう書いている。

「まあ、書かずもがなだが、まだ65歳。健康さえ回復すれば、郷里の大先輩、桂太郎の如く3度目もある」

 安倍は三度目を狙っている。そのための布石の始めが「菅総理」誕生なのである。

 菅は総裁選への出馬会見で、「安倍の政策を引き継ぐ」としかいわなかった。

「自民党の元政調会長で古くから安倍氏と親しい亀井静香氏(83)は、そんな菅氏を『国家観がなく、歴史観もない。秋田県から出稼ぎで東京に出てきた庶民派だ』と評する」(REUTERS 2020年9月4日/12:04)

 菅は、総理になったらこうするという自分のビジョンを語らないのではなく、語れないのだ。

 それが安倍の狙いである。思惑通り、辞任後、安部内閣の支持率は大幅に上がった。「アベ、カンバック!」といわんばかりである。

 9月3日に発売された文春(9/10日号)、新潮(同)は、二階が根回しし、「オレがキングメーカーだ」と吠えている様を活写している。

「安倍晋三首相(65)が電撃辞任をした八月二十八日の夜。二階俊博幹事長(81)は、港区赤坂の一角で、十人近い番記者たちと、酒肴を前に語らっていた。

『総理は辞任会見で、後継について自分が言うべきではないと仰っていましたね』

 記者がこう問うと、二階氏も饒舌に返す。

『もう辞めていく奴に言われたってな。総理が言えば、いわれた方がダメになる』

 話題が、麻生太郎副総理(79)が総裁選不出馬を決めたことに及ぶと、

『そりゃあ賢いな。こういうときは新車じゃないとダメなんだよ。(麻生氏が)中古車ってわけじゃないが、一度やっているんだから』」

 一時、「石破さんは期待の星だ」とほめそやしていた二階だったが、この日はこう切って捨てたという。

「向こうは清水の舞台から飛び降りたような気分で(二階のところへ=筆者注)来たのかもしれんがな。二、三日前から急に近づいてきたって、全然ダメだ」

 オレがキングメーカーだ、オレが菅を総理にしてやったんだと内外に触れ回っている。古狸などといわれるが、自分から力を誇示するのでは、お里が知れる。この程度の政治屋に振り回される永田町が情けない。

 だが、二階の暴走を許さないと、細田派、麻生派、竹下派が会見した。「オレたちが菅を総理にしたんだ、忘れるな」という前代未聞のパフォーマンスだった。ここにも安倍の影が見え隠れすると思うのは、穿ち過ぎだろうか。

 ここへきて、9月29日衆議院解散、10月25日投開票という怪LINEが出回っていると、新潮が報じている。菅も時期を見て解散を考えると発言し始めた。五輪中止の前にやりたいというのだろう。

 だが、大敗か30議席程度の減か、どちらにしても勝ち戦にはならない。それに、叩き上げ党人派の菅には、暗い影がまとわりついている。

 新潮(9/10日号)が書いているように、「菅原一秀、河井克行両代議士ら側近たちに相次でスキャンダルが発覚し、『ポスト安倍』レースから一旦脱落した」菅である。

 側近の和泉洋人首相補佐官は部下との不倫が発覚し、小泉進次郎にも滝クリと結婚を発表してから、女性問題が噴出した。反菅派が週刊誌にリークしたに違いない。

 菅自身の醜聞も、つい最近、新潮に2度報じられている。1本目は「『菅VS.小池』暗闘の裏に『湘南美容』コロナ利権」(『週刊新潮』8/6号)である。

 菅の手下である和泉補佐官が、お台場にある機動隊のオリンピック用の宿舎を、コロナ中等症患者向けの臨時医療施設として活用するといい出したというのである。

 さらに和泉は、こういい放った。

「プレハブで医療行為にあたる運営主体は、菅官房長官の意向により、『湘南美容クリニック(SBCメディカルグループ)』に既に内定している」「『湘南美容』の創業者でグループ代表の相川佳之氏の内諾も取れている」というのである。

 なぜ美容整形にコロナの対応を任せるのか? 誰しもが抱く疑問である。

 最近、ここは保険適用の一般医療の分野に進出したいと、病院を買収したそうだ。だが、十分なエビデンスもないのに、高額な「がん免疫療法」を行っていると批判されているという。そんな怪しげなところを競争入札もせずに、“お友だち”というだけで指定するのは、安倍の加計学園問題と同じで、許されるはずはない。

 都側は当然ながら猛烈に反発した。「国立病院か、もっとましな医療法人にしてくれ」。当然である。だが和泉は、国立病院は独自の役割があるからダメ、他の医療法人は人員を出す余裕がない」と拒否したそうだ。質が悪いとはこういう人間のことをいうのである。

 2本目は「『アジアの金融センター』誘致で私利私欲『安倍政権』の悪い奴ら」(『週刊新潮』8/27日号)だ。

 新潮によれば、香港に国家安全維持法が施行され、これまで「アジアの金融センター」として確固たる地位を築いてきた香港から、「金融関連の人材や企業などが流出する動きが出始めているが、菅官房長官はこれを好機と捉えている。7月中旬以降、急遽、懐刀である和泉洋人補佐官に対して、『我が国への国際金融機能・人材の誘致策』について検討することを指示した」(政府関係者)というのである。

 世界の金融市場は1位がニューヨーク、2位がロンドンで、3位、4位を香港とシンガポールが争ってきた。

 その香港が中国の介入があからさまになり、金融市場としての地位が低下するかもしれないから、日本がそこに食い込もうというのである。だが、菅が日本で考えている金融市場は、東京ではなく、大阪か福岡だというのである。

 7月中旬と下旬に、法務省や金融庁などの幹部による打ち合わせが行われ、菅の意を受けた和泉が、「大坂を中心とする関西圏や福岡の特区に国際金融機能や人材を誘致するための課題を検討せよ」といい放ったというのだ。

 菅の意図はすぐわかる。大阪は日本維新の会への土産、福岡は麻生太郎の地元である。

 総裁選への布石と見るのは、やはり穿ち過ぎだろうか。

 菅は安倍以上に、メディアに圧力をかけることを再三やってきた。東京新聞の望月衣塑子記者への質問妨害、NHK『クローズアップ現代 』のキャスターだった国谷裕子への嫌がらせで、降板に追い込んだなど枚挙に暇がない。

 こうした、自分を批判する記者やメディアは恫喝するくせに、安倍と同じように、すり寄ってくるメディアやジャーナリストたちは可愛がるに違いない。

 田崎史郎、NHKの岩田明子、「月刊HANADA」などは、安倍が好きだったのだから、より、親密さを増すのではないか。

 これだけはいえる。菅政権は、安倍以上にメディアや取材者を選別し、付き従わない者は排除し、この国の報道の自由度はますます落ちていく。

 菅の後にいて、院政を敷こうと考えているに違いない安倍の野望を潰えさせるためには、次の総選挙で、自民党を大敗させることである。

 安倍の呪縛を解き放ち、本当の意味で国民と寄り添う政権を誕生させるチャンスは、次の総選挙しかない。

 菅には文春砲、新潮砲が舌なめずりするスキャンダルがあるに違いない。それがさく裂したとき、根無し草の哀しさ、あっという間に菅政権は瓦解するに違いない。(文中敬称略)

元木昌彦(編集者)

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"。

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最終更新:2020/09/06 18:02
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