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新型コロナワクチン開発が前進も「欧州で猛威を振るっているのは変異種」治療薬が効かない可能性も

文=鷲尾香一(わしお・こういち)
写真はイメージ(写真/「GettyImages」より)

 新型コロナウイルスワクチンの最終段階の臨床試験結果で「90%を超える予防効果」が認められたことで、日経平均株価が2万5000円を突破し 、29年ぶりの水準に上昇するなど、ポジティブなニュースが報じられている。だが、欧州で猛威を振るっている新型コロナウイルスがワクチンの効果が不明な突然変異種であることは、ほとんど報じられていない。

 米製薬大手「ファイザー」は9日、ドイツの「ビオンテック」と開発している新型コロナワクチンについて、最終段階となる臨床試験の結果、「90%を超える予防効果」が認められたことを外部の独立した委員会が発表した。

 臨床試験の対象となった4万3538人のうち、新型コロナウイルスの感染が確認されたのは94例だった。ファイザーは11月第3週以降にFDA(米食品医薬品局)に対し、緊急使用の許可を申請する方針だ。また、10日にはFDAが、米製薬大手「イーライリリー」の抗体薬について新型コロナ治療薬として緊急使用許可を出したことが明らかになった。

 こうした新型コロナワクチンや治療薬の開発に関するニュースは多くのメディアで取り上げられ、日経平均株価が急騰するなど、まさに“浮かれ気分”というような状態になった。

 しかし一方では、現在、感染拡大が爆発的に増加している欧州の新型コロナウイルスが突然変異種であることは、ほとんど報道されていない。

 10月29日にスイスのバーゼル大学、チューリッヒ工科大学、スペインのSeqCOVIDからなる研究チームが発表した報告書によると、新型コロナの突然変異種「20A.EU1ともうひとつの変異種20A.EU2が 、欧州における最近のほとんどの発症例の原因となっている」としている。ただし、この報告書は専門家による評価や検証である査読を終えたものではない。

 また、これまでにも新型コロナウイルスは多くの変異種が確認されているが、「20A.EU1」のように広く拡散したものはないとしている。

「20A.EU1」は、6月初めに最初に感染が確認されたスペイン北東部の農業従事者から拡大が始まった可能性が高いとみられており、その後、夏のバカンスでスペインを訪れた観光客によって、欧州全土に広まったとみられている。

 「20A.EU1」は10月までに欧州12カ国と香港、ニュージーランドでも確認されており、イギリスでは、新型コロナ感染の80%以上が「20A.EU1」によるもので、これは7月~8月の間に国外へ渡航した約250人と関連があるとみれている。また、香港での感染経路は感染源が1人に特定されており、ニュージーランドの感染源もヨーロッパからやってきた3人に絞られている。

 「20A.EU1」は、従来の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に比べて感染力が強い可能性があり、これだけ速く拡散した原因を特定するのは難しいとしている。また、新型コロナウイルスよりも致死性が高いことを示唆するデータは、いまのところ得られていないとしている。

 このように、欧州では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ではなく、その突然変異種の感染拡大が起きているのだが、ファイザーのワクチンやイーライリリーの治療薬は、果たしてこの「20A.EU1」に効果があるのだろうか。また、「20A.EU1」だけではなく、その他の突然変異種に対しての効果はあるのだろう。

「20A.EU1」に対して効果がないとなれば、ワクチンや治療薬の開発を喜ぶのは、“ぬか喜び”になりかねない。新型コロナについては、ウイルスの突然変異だけではなく、抗体が作りづらい、後遺症が残るなどの問題点も指摘されている。

 新型コロナをめぐっては、詳細な内容の伴わない“吉報”だけを取り上げるのではなく、あらゆる可能性についてきちんと報道するべきだ。

鷲尾香一(わしお・こういち)

鷲尾香一(わしお・こういち)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2020/11/13 10:59

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