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『この恋あたためますか』はなぜ伸びない? 火10枠ヒット作『恋つづ』『逃げ恥』との相違点

この恋あたためますか』公式サイトより

 森七菜主演のドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)の第4話が11月10日に放送されるも、視聴率は前回の8.4%から微減の8.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。そろそろ物語も中盤に差し掛かったここにきて、視聴者からは「なんだか退屈」「ありきたりな展開で飽きてきた」といった意見が噴出している。

 主役の樹木を演じる森七菜は、大物監督たちから絶賛される注目の女優であり、世間からは「地味で垢抜けない」との意見がある一方で「あざと可愛い」「ナチュラルな演技がすごい」などと高評価の声も多い。主人公の相手役でツンデレなイケメン社長・浅羽を演じる中村倫也は、細かな仕草や表情など豊かな表現が見事だし、浅羽の元カノで樹木のライバルの里保(石橋静河)も樹木に想いを寄せる新谷(仲野太賀)も、その切ない心情が演技によく現れていて、共感できる。

 役者が粒ぞろいなのに、なぜかのめり込めない。早くも飽きられ視聴率も低迷する一方。一体その理由は何だろうか?

 第4話では里保と浅羽が以前恋人同士だったと知った樹木が、ショックを受けて仕事も手に付かず、悶々とする様子が描かれた。本来ならば視聴者もヒロインの切ない恋心に悲しむ、そんなシーンなのだが、なぜだか一向に心が動かされない。もちろんさまざまな楽しみ方があるが、ドラマや映画などの物語の大きな醍醐味は、主人公に感情移入し、同調し、ともに悲しみ喜び、心動かされるところにある。つまり視聴者が主人公に同調できていないのではないだろうか。そして、その原因として考えられるのが、ヒロイン像の魅力のなさにあると思えるのだ。

『恋つづ』『逃げ恥』のヒロインと比べてみると……

 では恋愛ドラマにおいて、どんなヒロインならば魅力なのか? ヒット作が続く同じTBS系の火曜夜10時枠のなかから『恋はつづくよどこまでも』(20年)のヒロイン・七瀬と、少し前になるが社会現象まで引き起こした『逃げるは恥だが役に立つ』(16年)のみくりを例に考えてみたい。

 『恋つづ』の七瀬はドジで失敗ばかりするが、仕事への熱意が人一倍あって、愛嬌もあり憎めないキャラだった。少女漫画によく出てくる、分かりやすい王道タイプのヒロインだ。ダメダメだったヒロインが真っ直ぐに必死に食らいつき成長する姿に共感が集まる。『恋つづ』もドラマが始まったばかりの頃は、視聴者から「華がない」「周りに迷惑かけるドジさにイライラする」などと批判する声も数々上がっていたのだが、回を重ねるごとに好感度が上がり、視聴率もうなぎ昇りだった。いつの間にか七瀬になりきって相手役の佐藤健にドキドキきゅんきゅんした視聴者も多かったことだろう。

 一方で『逃げ恥』のみくりは、高学歴で仕事も家事も真面目にこなす優秀なタイプ。余計なことを言って小賢しいとウザがられることがコンプレックスだったが、真面目に頑張る姿、自分の意見をしっかり言えるところ、ユーモアセンスもある、そんな尊敬も共感もでき、視聴者から愛されるキャラであった。心の声が多く描かれる演出もあって、第一話からすんなり感情移入ができ、相手役の星野源とのもどかしい展開に“むずキュン”と言う言葉が生まれたほどだった。

 対して、『恋あた』の樹木のヒロイン像の問題点をあげてみると、

・スイーツへの情熱があるはずだけど、その詳細が描かれずに、どれほどの才能があるのかもよく分からない

・仕事で徹夜するシーンはあったが、人一倍努力している感じでもない

・ただ元気なだけ?

・個性がない

・恋心が視聴者に伝わっていない

・強く一途に想う恋心も描かれず、健気さも感じられない

 どちらかといえば、みくりよりも七瀬寄りのヒロイン像として描きたいのであろうことは感じるが、七瀬ほどの愛されキャラでも真っ直ぐな健気さもなく、みくりのような個性も尊敬ポイントもない。これでは、よほど森のファンではない限り、視聴者が心動かされずに、飽きてしまうのは無理もない。

 先の2つのヒットドラマはともに原作があり、原作で丁寧に作り込まれた人物像をドラマで忠実に再現し、役者の演技によってさらに魅力が深まっていた。対して、『恋あた』はオリジナル脚本だ。もちろんオリジナル脚本でも魅力ある主人公のドラマが多くある。ただ、やはりこのドラマに関しては、脚本の粗さが視聴率低迷の原因となっているのでは、と感じてしまう。視聴者はヒロインを通じて、相手役に恋をするのだ。だからこそヒロインの心情が丁寧に描かれた『恋つづ』のように、もう少し丁寧に魅力的なヒロインを描いてほしいと思う。

■番組情報
火曜ドラマ『この恋あたためますか』
TBS系/毎週火曜日22時~
出演:森七菜、中村倫也、仲野太賀、石橋静河、佐野ひなこ、利重剛、市川実日子、山本耕史 ほか
脚本:神森万里江、青塚美穂
演出:岡本伸吾、坪井敏雄大内舞子
プロデュース:中井芳彦、黎 景怡
音楽:木村秀彬
主題歌:SEKAI NO OWARI 「silent」
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/koiata_tbs/

早乙女りこ(ライター)

東京生まれ神奈川育ちのフリーライター。映画・ドラマはジャンル問わず幅広く鑑賞しており、物語の展開を予想したり、役者の演技を複数作品で見比べたりすることが趣味。

さおとめりこ

最終更新:2020/11/16 19:56
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