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『麒麟がくる』光秀、信長を差し置いて架空キャラが活躍しすぎ!? 大河ドラマ“史実”と“フィクション”のバランス問題を考える

信長の正室・帰蝶のキャラも創作に近い?

『麒麟がくる』光秀、信長を差し置いて架空キャラが活躍しすぎ!? 大河ドラマ史実とフィクションのバランス問題を考えるの画像2
川口春奈氏が演じて大人気の帰蝶も、その実態は謎が多く…(Getty Imagesより)

 若い視聴者は知らないかもしれませんが、90年代以前、主人公自体が架空という大河ドラマが何件もありました。80年代に何件かあった後、93年の東山紀之さん主演の『琉球の風』(歴代大河で唯一の半年クールの作品!)までしばらくはなくなり、93年以降は皆無となりました。当時、中学生くらいだった筆者も『琉球~』はなんでか、見ていませんでしたね。要するに当時のヒガシの美しさをもってしても、架空主人公は不評だったのでしょう。(沖縄県では視聴率が82%に達した回もあったそうですが)

 その後は、ときどき『おんな城主直虎』の龍雲丸(柳楽優弥さん)、『真田丸』のきり(長澤まさみさん)など、架空の人気キャラが生まれては消える状態となりました。

 しかし、今年は架空キャラがドラマの軸になっている点で、確かに新しい。史実のキャラだけでは、うまくドラマが回らないところに、ピタッと架空キャラがハマれば受け入れられるはずなのです。

「実在しているか、どうか」にこだわるのも本来はナンセンスなのです。史実の信長の正室・帰蝶なんて生没年も本名も、信長との関係もよくわからないから、キャラとして造形する際、99%創作にならざるをえません。これは明治くらいまでの日本史上の女性の大半に言えてしまうことなんですけれどもね。だけど帰蝶は人気で、お駒ちゃんは不人気となると、それは実在・非実在が問題というより、キャラ自体の魅力の問題なのでしょう。筆者はお駒ちゃん嫌いじゃないですけども。

 最近の創作物にはおなじみの“コンプライアンス問題”があって、ジェンダーバランスみたいなのがいわれるじゃないですか。あと身分ですね。麒麟名物3点セット(東庵先生、お駒ちゃん、伊呂波太夫)が推されている背景には、「庶民の目線も大事!」という上層部からの注文もあったりして……なんて想像してしまいます。実際は庶民の記録は、ほとんどないのですけれど……。

 それよりなにより、残りが12週分しかない事実にこそ、最近の筆者はヒヤヒヤさせられます。1回の放送(45分弱)で1年は進めていかないと、もはや「本能寺の変」に間に合わないという残り時間の短さ。史実のキャラ同士をもっと絡めあってほしい。ナマモノしあってほしい。そう視聴者が願っていても致し方ありませんわな。

 最終回の冒頭で「●年後」なんてテロップが出たら一番ガッカリですから、そうならないことを祈ります……。

堀江宏樹(作家/歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。原案監修をつとめるマンガ『La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~』が無料公開中(KADOKAWA)。ほかの著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)など。最新刊は『隠されていた不都合な世界史』(三笠書房)。

Twitter:@horiehiroki

ほりえひろき

最終更新:2023/02/21 12:04
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