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『麒麟がくる』“染谷将太版信長”が大盤振る舞い! しかし、そのしわ寄せ先は……織田信長マネー政策の変遷

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)が、ますます盛り上がりを見せている。ドラマをより深く楽しむため、歴史エッセイストの堀江宏樹氏が劇中では描ききれない歴史の裏側を紐解く──。前回はコチラ

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『麒麟がくる』公式ページより

『麒麟がくる』第二十七回「宗久の約束」、読者の方はどうご覧になったでしょうか。映画みたいに長回しのカットが多く、演者の方は大変だったでしょうが、視聴者には見応えのある回でしたよね!

 今回のテーマのひとつが、「平和を実現するために行う戦争なら、許されるのか?」というものでした。

「そうするしかない」「やむを得ない」という明智光秀(長谷川博己さん)ら武士たちに対し、「あってはならない」「やめて」という“それ以外”の身分の人々の声と切なる願いが対立していましたね。

 いつも明智を盲目的に敬愛していたお駒ちゃん(門脇麦さん)すら、彼に意見するシーンもあり、こちらも見どころでした。

 また、色街界隈に出かけ、このままでは本当にあやしげなお店で働かされてしまいそうな少女を、自分の一座にスカウトしていた伊呂波太夫(尾野真千子さん)の姿も印象に残りました。あの時代、芸を売ることと、色を売ることの領域はどうやっても重なりがちです。しかし、できる範囲で孤独な少女(たち)に手を差し伸べ続ける伊呂波太夫は素敵な女性だな、と感じました。かつてはお駒ちゃんも伊呂波太夫に手を差し伸べられたひとりだったのです。本作『麒麟~』は、夫を支える「良妻賢母」以外の人生を歩んだ女性の生き様についても、きちんと描けているように感じます。

 とはいえ、時は戦国。殿方がドラマの花形なのは宿命ですね。

 今回の見どころとしては、織田信長(染谷将太さん)が、足利義昭(滝藤賢一さん)と美濃にて対面したシーンが挙げられるかと。1千貫文もの大量の金を将軍の上洛費用(そしてそれによって起きる戦の費用)として用意した信長に対し、義昭は「これだけあれば多くの貧しい民が飢えなくて済む」などと口走って、呆れられてしまいます。このシーン、義昭に同意する三淵藤英(谷原章介さん)の満面の笑顔が妙に怖かったですが(笑)、のちに争うこととなる信長と義昭の不協和音は、すでにこの頃から鳴り響いていたという演出ですね。

 ちなみに公式サイトでは今回も一貫文=15万円のレートですが、現在のネット通販のお米を基準に考え、やはり一貫=約6~8万円として考えてみたほうがよろしいかもしれません。それでも6000万~8000万円という巨額です。そんなお金を右から左に出せてしまう(義昭の歓心を買うための演出にせよ)信長の資金源は、いったい何だったのでしょうか? 

 信長の祖父・織田信定は、津島港の利権を手中に治めていた人物。そこでの貿易によって織田家は資金を急速にたくわえることができていました。しかし、それだけではありません。信長が発案、命名したともいわれる岐阜の町。岐阜は「美濃攻略」以降、信長が「楽市楽座」の実験を一番最初に始めた場所という説もあります。それまで特定の商人しか市場での商売が許されなかった当時、誰もが自由に商売できるようにしたのが「楽市楽座」の制度です。

 ほかにも「毎年の米の取れ高によって支払う年貢以外の税金を百姓たちから思いつきで取ったりしない」、「民衆が関所を通過するときの税金をゼロにする」などの信長のマネー政策は、現代から見ても斬新です。とくに有力な収入源だった関所税を廃した戦国大名は、信長だけともいわれます。

 現代でも手取りの額を上げない限り、不況は脱せないなどと言われていますが、それと同じことに信長は注目していたのです。信長は庶民からは絞り取らない主義でした。しかし、そうすることで領内の商工業は活発化し、それらは信長の資金源となったのです。そして幾重もの資金源に守られている信長は破格の強さを見せたのでした。

 資金といえば、豊富な資金を持つ大商人は、公家や武士ではなくとも政治を左右する強さを見せるようになります。ドラマにも出てきた堺の会合衆(えごうしゅう)こと、大商人にして自治都市・堺のリーダーのひとり、今井宗久(陣内孝則さん)のようなケースですね。

 今回は、三好家を己の商売の“守護者”としてきた今井が、織田信長に乗り換える選択をしました。今井の乗り換えで三好一族は資金源を失い、弱体化。そんな三好軍を、織田家と浅井家の連合軍は比較的短期間で打ち破り、京都市内での戦闘は行われませんでした。

 そして今井宗久との約束通り、鎧兜を付けずに京都の街に織田勢がまるで騎馬パレードのように入っていくところが今回は描かれましたね。しかし、次回以降、ドラマでも描かれることでしょうが、京都の貪欲な金食い虫……つまり、信長のような田舎出の金持ちの新参者を待ち構えていた正親町天皇(坂東玉三郎さん)はじめ、朝廷の面々を相手にするようになると、さすがの信長も金に困るようになっていくわけです。

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