スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会【14】

『サタデー・ナイト・ライブ』トランプ敗北をいじりまくりで、米国が歓喜の渦に!デイブ・シャペルするどい一言「分断を癒すとき」

文=Saku Yanagawa(サク・ヤナガワ)

『サタデー・ナイト・ライブ』トランプ敗北をいじりまくりで、米国が歓喜の渦に!デイブ・シャペルするどい一言「分断を癒すとき」の画像1
デイブ・シャペル(GettyImagesより)

 11月7日、土曜日、大統領選でのバイデン当選確実というニュースが飛び込んできた。

 そしてその日の夜、NBCのテレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のホストを務めたのはスタンダップコメディ界で今最も大きな影響力を持つデイブ・シャペルだった。これまでも黒人という立場から作品を通して人種や、ひいては人権の問題に声を上げ続けてきた。

 今年6月ミネアポリスでジョージ・フロイド事件が起きると、ロックダウン中であるにも関わらず、オハイオ州でゲリラ公演『8:46』(ジョージ・フロイドが警官に首を押さえつけられていた時間)を行ない、その様子をYouTubeにアップして大きな話題をさらった。(#7参照

 その活動は近年スタンダップコメディアンとしての枠組みを超越し、オピニオン・リーダーとしての意味合いも併せ持つ。

 選挙結果がようやくアメリカ中に発表されたこの日、私の住むシカゴを含む多くの州で街はお祭り騒ぎとなった。道路は“祝砲”のクラクションを鳴らす車で溢れ返り、街全体が狂乱にも似た異様な雰囲気に包まれた。バイデンの旗を掲げる人々も見られたが、”Bye Don”、つまり「あばよ、ドナルド・トランプ」と、“バイデン”をもじった皮肉のペナントを掲げる者も多く、バイデンの当選そのものよりトランプの落選への祝宴という機運の方が強いように感じられた。

 デイブ・シャペルを大きな歓声で迎えたこの晩のニューヨークの観客も、どことなくいつもより浮かれた心持ちであることがテレビ越しにも伝わってきた。

 そんな浮ついた観客に向かってデイブは言う。

「トランプは去ったぞ!」

 会場は割れんばかりの大きな拍手を送る。するとそのままデイブは、得意の際どいジョークに持ち込む。

「トランプはコロナウィルスを中国のウィルスって意味で、”カンフー”と”インフルエンザ”をかけて、 “カンフル”って呼びやがった。なんてレイシストなやつなんだ。でもちょっと面白いよな。奴の立場で言うべきじゃないんだろうけど、俺に言わせてくれりゃよかったのに」

「でもそしたら奴がコロナになっちまったんだ。面白いのは、フレディ・マーキュリーがエイズになったときと同じで、誰ひとりとして”なんで感染したんだろうね“とは言わなかったな」

 オーディエンスは大きな笑い声をあげるが、それでもデイブは止めない。

「奴が病院に運ばれるときの映像を見たか? ヘリコプターで運ばれてたぞ。相当いい医療保険があるに違いない」
 立て続けのジョークに対し、観客は大きな笑い声で応える。するとデイブはいつものようにタバコを少しくわえ、たっぷりと間を取ってこう言った。

「今日は記念すべき、そして喜ばしい日だ。4年前(の大統領選のとき)は最悪の気分だったのに。でも忘れちゃいけないのは今、お前たちがこうして拍手しているこのときだって半分のアメリカ人は最悪の気分なんだ」

 これには先ほどまで大きな歓声を送っていた観客も一瞬静まり返った。

 実は4年前の大統領選の結果が発表され、トランプの当選が決まった直後の『サタデー・ナイト・ライブ』でも、ホストとして舞台の中心にいたのはデイブ・シャペルだった。

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