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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.611

“ご近所トラブル”にはどう対処すればいいのか? 篠原ゆき子の初主演映画『ミセス・ノイズィ』

ご近所トラブルにはどう対処すればいいのか? 篠原ゆき子の初主演映画『ミセス・ノイズィ』の画像1
『相棒』(テレビ朝日系)に新レギュラーとして出演中の篠原ゆき子が主演した『ミセス・ノイズィ』

 ご近所トラブルを題材にした映画に、クリント・イーストウッド主演・監督作『グラン・トリノ』(08)がある。話の通じないならず者たちに、イーストウッド演じるガンコじじいが立ち向かうヒーローものだった。映画としての完成度は非常に高い作品だったが、現実のご近所トラブルにはイーストウッドのようなヒーローが現れることはありえない。では、現実のトラブルには、どう対処すればいいのか。天野千尋監督のオリジナル脚本作『ミセス・ノイズィ』は、そうした身近な難問を扱った社会派ドラマとなっている。

 主人公は、小説家の真紀(篠原ゆき子)。処女作は文芸賞を受賞して話題となったが、その後はずっとスランプ状態が続いている。結婚、出産した真紀は、家事や育児に追われ、執筆に集中できないことがスランプの原因だと考えていた。マンションへの引っ越しをきっかけに心機一転、新作小説をいっきに書き上げようとする真希。ところが、早朝からベランダで布団をバンバン激しく叩くお隣りの生活音が気になって、執筆がどうにも進まない。「音を控えて欲しい」とベランダ越しに真紀は、隣人である主婦・美和子(大高洋子)に頼むが、素っ気ない対応をされてしまう。

 布団を叩く音がしない時間帯に真紀が仕事に集中していたところ、娘の菜子(新津ちせ)がどこにもいないことに気づく。夜になり、菜子は美和子の部屋で遊んでいたことが分かる。「他人の子どもを勝手に連れ出すなんて非常識」と真紀が美和子を責めると、「小さな子どもを放っておくほうが非常識」と言い返されてしまう。

 真紀と美和子の確執は次第に大きくなっていき、美和子はベランダでラジカセを大音量で流すようになる。真紀は反撃とばかりに、美和子と大人しそうな美和子の夫・茂夫(宮崎太一)をモデルにした毒舌小説の連載を始める。やがて、2人がベランダで繰り広げるバトルは、近隣だけでなくネットやマスコミでも注目を集める大騒ぎになっていく。

 本作のモチーフとなっているのは、2000年代にワイドショーや雑誌で話題となった「騒音おばさん事件」だ。裁判にまで発展したこの事件は、海外では「Mrs.Noizy」として報道された。テレビでは騒音おばさんの奇行ぶりばかりがクローズアップされたが、ネット上では「騒音おばさんは加害者ではなく、被害者だった」という説も流れている。

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