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『富豪刑事』タッキー社長との舞台裏…伊藤智彦監督と振り返る2020年のアニメ業界

『富豪刑事』で会った滝沢秀明さんの意外な印象

ーーコロナの中で製作された監督作『富豪刑事』ですが、主題歌がジャニーズのグループSixTONES『NAVIGATOR』で驚きました。そもそも伊藤さんの作風とジャニーズって相性はよさそうではないので(笑)。

伊藤:そこは滝沢秀明社長(注:ジャニーズアイランド社長)と会って、いろいろと話しました。出来上がった曲の評判は押し並べて良いですね。

ーー直接会われた印象はどうでしたか。

伊藤:滝沢さんはタレントオーラなくなっていましたよ。満員電車で見かけてもみんなわからないと思います。部屋に入った時に最初、髪色も戻していますし、スーツですし、滝沢さんかどうかわからなかった。完全にビジネスマン、プロデューサーとして席に立っている感じでした。

 お会いした際「滝沢さんの考えるかっこいいってなんでしょう」と質問すると「男の人にもかっこいいと思ってもらえることが条件だと思ってます」と返ってきたので、「わかります」とカウボーイビバップの主題歌の『Tank!』の話なんかをしました。

ーー実際、出来上がった『NAVIGATOR』の出だしは都会的なクールさがありました。

伊藤:『富豪刑事』の主人公たちは刑事だからといって、正しいことばかりするわけじゃない。若干不道徳な感じも混ざっているという説明もしました。LDH的なもの、K-POP的なもの、古典的なものなどデモを数曲いただいて、その中で良かった一つで話を詰めさせてもらったのがあの曲です。

ーー筒井康隆さんが原作ですが、内容的にはオリジナルでしたね。苦労されたと聞きましたが。

伊藤:筒井先生は第1話にも出演してもらいましたし、どんどんやってほしいという方だったんですが、とりまく環境に翻弄され続けた一年でした。まあ、勉強料を払ったとむりやり納得してますが(苦笑)。

ーー今回主人公の神戸大助の声を担当した俳優、ダンサーの大貫勇輔さんは声がよかったですね。声優さんじゃない声で、作品によい違和感を与えていました。

伊藤:演じるキャラがみんなと仲良くしないのだから、あれくらいがいい。壁を持ってるというか。声優さんでと考えていた時期もあったんですけど、キャラの年齢よりずいぶん高い人たちの名前を挙げたら全員から「ないですよ」って言われたので、最終的に大貫さんになりました。

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