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映画『ヤクザと家族 The Family』が描く「現代ヤクザの現実」…家族も差別される異常さを浮き彫りに

文=佐々木拓朗(ささき・たくろう)

一般的な社会生活を否定されたヤクザ

 だが、2000年代に入り各地で制定されていった暴力団排除条例は、そうした志向すらも打ち砕いている。ヤクザは、通帳も作れない、家も借りられない、ローンも組めない…一般的な社会生活を送ることを否定されたのだ。それは、本人以外、例えば世帯を持っていれば妻や子ども。親が生きていれば、親にまで累が及ぶようになってしまったのだ。

 本人がどれだけ覚悟してヤクザをやっていたとしても、妻や子どもにまで権力や社会の矛先が向けられた時、耐えることのできる人間がどれだけいるだろうか。本人のように当局に逮捕されることがなくとも、SNSの普及により、ヤクザの家族というだけで、社会的リンチを受けて、実生活に支障をきたすケースも出てくることになった。

 ヤクザはあくまで任侠道を真髄としながらも、それを貫くために信仰するべきものは、最後は暴力でなければならない。その身体と命をかけた暴力がバックボーンにあるからこそ、理屈やカネでは通らない話を通したり、解決しない話を解決させることを可能にしてきたのだ。その暴力が、犯罪行為であり、反社会的であるとわかっていながらもだ。

 しかし、現在のヤクザを取り巻く境遇を考えれば、ひとたび暴力を行使したり、違法行為を行えば、自身の家族すら非難の対象とされてしまう。さらに、家族を持つ以前に犯した罪さえも、SNSなどで晒され、次第には事実と異なる情報までもが錯綜し、何の罪もない、何の落ち度もない家族が居場所を失ってしまうのだ。

 では、誰が悪いか? SNSに書き込む者か? ヤクザと家族を差別する者か? いや、なにより悪いのは、ヤクザ渡世を選んだ本人だろう。それが嫌ならば、ヤクザにならなければよかったのだ。そして、家族を持つべきではなかったのだ。それ以下でもそれ以上でもない。人のせいや法のせいにしても、すべては愚痴でしかないのだ。だが、事実として、さまざまな事情から、ヤクザという世界を生きるしか、他に道がなかった人間たちがいたことも事実だろう――。

面白うて やがて悲しき ヤクザかな

 『ヤクザと家族』が描いているのは、まさにこうした「現実(リアル)」だ。ヤクザになることを選んだ、綾野剛演じる男の刹那的な生き方と、それを取り巻く人々や社会。物語の舞台は1999年、主人公がヤクザ渡世に身を投じるところから始まり、2005年、ヤクザとして輝いている瞬間が投影されている。そして、現世を迎える。

 芭蕉の句に「面白うて やがて悲しき 鵜飼かな」というものがあるのだが、誰が言ったのかヤクザ業界には、この句を焼き直し「面白うて やがて悲しき ヤクザかな」という言葉がある。

 現在のヤクザを投影するならば、定番のヤクザ映画のような暴力オンリーな作品は、リアルからはかけ離れ過ぎている。実際、暴力の最上級といえる殺人を犯せば、まずその人間は再び社会の地を踏むことができない。たとえば、ヤクザ同士の抗争といえども、暴力の持つ社会的な重みが明らかに変わりつつある中、非現実的な暴力描写の乱発はリアリティがあるとはいえない。観る物も興醒めしてしまうだろう

 そんな中で『ヤクザと家族』は、最後の最後までリアリティを追求し、現代のヤクザの実像を描ききった。こんな作品はこれまで見たことがない。『ヤクザと家族』の「以前」か「以後」ということは、今後、ヤクザ映画が語られる際の一つの基準になるのではないだろうか。

 そして、儚くも苦しく、それでもヤクザと家族のために、もがき苦しむ主人公の姿に誰しもが涙するはずだ。

■映画『ヤクザと家族 The Family』
1月29日(金)より全国で公開

公式サイト→https://yakuzatokazoku.com/

佐々木拓朗(ささき・たくろう)

アウトロー取材経験ありの元編集者のフリーライター。自身の経験や独自の取材人脈を生かした情報発信を得意とする。

最終更新:2021/01/12 14:00
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