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クロサカタツヤ×山口真一──新進気鋭の研究者が語る情報社会で私たちが大切にすべきこと

文=クロサカタツヤ

通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

クロサカタツヤ×山口真一──新進気鋭の研究者が語る情報社会で私たちが大切にすべきことの画像1
放送コンテンツのインターネット同時配信等に係る著作権処理の円滑化の推進について/(出典)2020年2月28日文化庁著作権課より

──気がついてみたら、YouTubeでアーティストが新曲を丸ごと公開していたり、便利なサービスが無償で使えたり、最新のニュースが読み放題だったり、ネット絡みのサービスはことごとく無料で使える。それで本当に儲かっているのだから、いやさ不思議。そんな情報社会のビジネスモデルの分析をしたのが山口真一先生だ。ネット炎上に関しても専門家で、時折テレビにも登場する新進気鋭の研究者。そんな山口先生に、afterコロナ、withコロナを迎えるこの先の情報社会で、私たちが何を大切にすべきなのかを聞いてみた。(「月刊サイゾー」9月号より転載)

クロサカ 今月のゲストは7月に『なぜ、それは儲かるのか:〈フリー+ソーシャル+価格差別〉×〈データ〉が最強な理由』(草思社)という書籍を上梓されたばかりの山口真一さんです。ネット炎上の研究などでテレビに出演されることも多い山口先生ですが、情報経済からネットカルチャーまで幅広く研究されていらっしゃいます。

山口 ネットの言論やその社会的な対処と、情報経済といったビジネス面という2つを主に研究していて、今回の書籍はそのうちのビジネスについてのものです。ただ、この2つは相反するものではなく相互に重なっていて、『なぜ、それは儲かるのか』の第6章でもソーシャルを活かしたマーケティングの話をしています。

クロサカ 山口さんは私と10歳ほど離れているので、ネットに関する原体験が違うはずです。私は慶應大学のSFC出身なので、キャンパスで一晩中UNIXを触っていたような学生で、牧歌的だったネット黎明期を体験してきました。山口さんの場合、SNSがすでに当たり前のものになっていて、学生の頃にはiPhoneが登場して、スマートフォンが普及していくのを目の当たりにされている。当然、フリーミアムのようなビジネスモデルもすでにありましたが、それを研究しようと思ったきっかけはなんでしょう。

山口 きっかけは師匠の田中辰雄先生【編註:慶應義塾大学経済学部教授、国際大学GLOCOM主幹研究員で山口先生の指導教員。情報社会における通信、ゲーム、コンテンツといった情報産業、情報経済に関する現象についてさまざまな研究を手がけている】の存在です。学部生の頃、友達におもしろい先生がいると聞いて、たまたま田中先生のオープンゼミに行ったんです。そこで取りあげていたテーマが「海賊版の経済効果」で、Winnyで共有されたりYouTubeに不正にアップロードされた商業コンテンツを見ることには、実は販促効果があるかもしれない、という話しをされていた。今はその論争は決着がついて、海賊版は悪いということになっていますが、法律で禁止されているから駄目なことであっても、経済的にはプラスかもしれないという発想が新鮮でした。その後、アーティストが自らMVをYouTubeで公開するようになったり、ゲーム会社がプレイ動画の公開を認めるようになったりと、企業や権利者がある部分を無料で提供する戦略が広まってきましたが、学問としてはあまり分析されていないと思い、大学院の頃に研究を始めました。

クロサカ 私は世代的には田中先生に近いですが、山口さんの本を読んで内容がすんなり理解できて、とても読みやすいと思いました。同時に、私には書けないとも思いました。というのも、今のネットに対しては、特にカルチャー面について悲観的に考えていることもあって、ここまで冷静になれないんですね。

山口 確かに、今のネットの言論空間に対しては、有識者の中でも絶望している方が多いですが、私自身は希望的観測を抱いているほうです。悲観されている方の中には、規制やむなしと考える方もいますが、私はそうは思っていません。長い歴史を考えれば人類はいろいろな課題を解決してきて、今の豊かな社会があるのだから、ネットの問題も解決するだろう。例えば、オープンなところを活かしつつも、さまざまな対策を取ることでもっと豊かな言論空間になるんじゃないかと思っています。

クロサカ 拝読していてもうひとつ思ったのが、山口さんがおっしゃっているのは「テクノロジーは人間の解釈次第だし、ビジネスについても正解はひとつじゃなく、やり方次第だ」ということなんだと。つまり、これから新しい時代に、新しいビジネスに取り組まなければならない人にとっての福音になるんじゃないかと思ったんです。山口さん自身は、この本を誰に読んでもらいたいと考えていますか。

山口 情報社会になって、インターネットとかIoTとか人工知能によって、ビジネスが大きく変革していますが、それはまさに馬車から自動車になったような技術的な側面だけでなく、価値観の変化もあります。その2つが絡み合って、大きく変革している。一方で、今までの古い法則に基づいてビジネスをやってきた人たちというのは、その変革がどれほど画期的なものなのか、あるいはそれにどう対応すればいいのか、理解が追いつかないと思うんですよね。破壊的な変化に対しては、経験則だけで対応するのは難しいし、実際に転換できずに滅んでいく産業があるわけです。そうした中で、「何か新しいことをやれ」と言われて苦しんでいる人がいると思うんですよね。その人たちに、やり方次第だよ、と言ってあげたい。

クロサカ 価値観の変化というのは、非常に気になるところです。コロナによって今まさにいろんな価値観の変化が目の前で起きています。


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