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コロナ禍で強まるアジア系アメリカ人の迫害…トランプの対中プロパガンダで分断加速

コロナ禍で強まるアジア系アメリカ人への迫害

 コロナウイルス感染者約2900万人、感染死者数が52万人を超えるなど深刻な状況にある米国では、感染が拡大しだしたのを契機に日系人に限らず、アジア系アメリカ人全体に対する差別が強まっている。

 今年1月28日、サンフランシスコ近郊のアンザ・ビスタを散歩中のタイ系アメリカ人のヴィチャー・ラタナパクディーさん(84歳)が走り寄ってきた19歳の男性に地面に叩きつけられ、2日後死亡した。同31日、カリフォルニア州オークランドの中華街では、91歳のアジア系米国人男性が後ろから近寄ったきた28歳の男性にいきなり後ろから押され地面に転倒した。

 これら一連の襲撃は防犯カメラなどに一部始終が録画されており、米CNNなどにより全米に放映された。これで、アジア系米国人が置かれた深刻な状況が他の人種の人たちにも知られるところとなり、大きな反響を呼んだ。
Family of Thai immigrant, 84, says fatal attack ‘was driven by hate’」(CNN 2021年2月16日より )

 アジア系アメリカ人に対する迫害や差別は西海岸だけでなく、東部のニューヨーク市でも増えている。

 2月25日午後6時すぎには、ニューヨーク市のマンハッタンにある中華街近くで36歳のアジア系男性が、道を歩いていたところ、後ろから突然倒され背中を刺された。同26日付の米紙ニューヨークタイムズ電子版によると、ニューヨーク市警に報告されたアジア系アメリカ人の被害者を対象とした憎悪犯罪の数は、前年のわずか3件から2020年には28件に跳ね上がった。このうち18件で犯人が逮捕されたが、これら事件は現在も係争中だという。

 2児の母親としてニューヨーク市のマンハッタン地区に住む筆者の妹は、道路を歩いていると、車に乗った白人の若者から「スティンキー・チャイニーズ(臭い中国人)」との罵声を浴びせられた。

 先の記事によれば、ニューヨーク市でアジア系アメリカ人は人口の16%を占める。世界中から人種や文化が異なる人たちが集まり、リベラルな風潮とコスモポリタンのイメージがあるニューヨークでさえ、このありさまだ。当地に15年以上暮らす妹にとっても初めての経験だったという。

 その要因の一つに、トランプ前大統領が中国の武漢で最初に新型コロナウイルスが見つかり感染者が出たことを理由に反中発言を繰り返し、同ウィルスを「チャイナ・ウイルス」や「武漢ウイルス」と連呼して、白人層のアジア人に対する憎悪を煽ったことも挙げられる。

 こうした状況を懸念したバイデン大統領は就任から6日後の1月26日、大統領覚書「米国におけるアジア・太平洋諸島系アメリカ人に対する人種差別、排外主義、および不寛容を非難し、これに対処するための覚書」を公表した。

 同覚書の中でバイデン氏は「連邦政府は、COVID-19パンデミック(コロナウイルス感染拡大)の起源の地理的位置への言及を含む政治指導者の言動がこの種の外国人嫌悪感情を助長する役割を果たしてきたことを認識しなければならない。このような発言は、根拠のない恐怖を煽り、アジア・太平洋諸国系米国人(AAPI)に対する汚名を広め、AAPIの人々に対するいじめ、嫌がらせ、憎悪犯罪の増加を助長した」とし、米連邦政府管轄下の諸省庁内で新型コロナウィイルスを「中国ウイルス」、あるいは「武漢ウイルス」と呼ぶことを固く禁じた。覚書にある「政治指導者」が、トランプ氏と取り巻きの前政府高官を指していることは間違いないようだ。

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